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数列の極限の計算と方針〜その1〜

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数列の極限はとにかくこれを作れ!

さて、前回は数列の極限というなんとも腑に落ちないことを飲み込んでもらったのですが、もちろん単純なものだけではありません。

今回は実際に色々な数列の極限を考えながらどうすれば極限を求めることができるのかを調べます。

基本になる形は前回も出てきたこの極限

 

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n}=0\)

 

これを作るというのが全ての目標です。これを作るためなら不自然でも変形を行います

例えばこの後すぐ出てくるであろう

 

分子の有理化

 

は根本にある考え方は常に

 

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n}=0\)

 

を作るというところにあります。他にも極限をとるための色々な「うまい」方法があるので先人達に感謝しながら

 

やり方を感じる

 

ことを意識してみてください。とにかく「なんでそんな変形をしたいのか」が重要です。必ずやらなければダメな理由があります。

ここからの解説ではその具体的な方法をじっくりみていくことにします。

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極限の計算上の性質と注意

計算を始める前に、極限においての計算でやっていいことを確認しておきます。これまでの話でも実は何の断りもなくやってしまっていたのですが、それは数列の和や積分の時にも出てきたような、

 

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}(a_{n}+b_{n})=\lim_{n\to\infty}a_{n}+\lim_{n\to\infty}b_{n}\)

 

と「足し算を単純に分けていいのか」ということです。具体的には、例えば

 

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{1}{2n}+\frac{1}{n}=\lim_{n\to\infty}\frac{1}{2n}+\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n}\)

 

としてよいのかという問題です。もしこれができないならを何とかひとつにして全体で極限を取らなくてはなりません。

ですがご安心ください。極限も積分などと同じように

 

和・差・積・商すべてにおいて「極限の操作をしてからその後計算をする」ことをしてもよい

 

ことは証明できます。ここでは詳しく書きませんがつまりは

 

普通に計算できる

 

と思えばいいと思います。数式でちゃんと書くと次のように説明できます。

 

 

Focus

数列 \(a_{n}\ ,\ b_{n}\) が \(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_{n}=\alpha\ ,\ \lim_{n\to\infty}b_{n}=\beta\)収束するとすると、

 

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}(a_{n}\pm b_{n})=\lim_{n\to\infty}a_{n}\pm\lim_{n\to\infty}b_{n}=\alpha\pm\beta\)

 

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_{n}b_{n}=\lim_{n\to\infty}a_{n}\lim_{n\to\infty}b_{n}=\alpha\beta\)

 

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{a_{n}}{b_{n}}=\frac{\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_{n}}{\displaystyle\lim_{n\to\infty}b_{n}}=\frac{\alpha}{\beta}\)

 

としてよい。ちなみに定数倍 \(k\) はもちろん

 

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}k a_{n}=k\lim_{n\to\infty}a_{n}=k\alpha\)

 

と外に出せる。

 

ここで一つ注意を。

 

「収束するとき」

 

と書いてあるのは「不定形」ではこうはいかないからです。もし不定形が出てくる形になったら次以降の問題で見ていくように必ず変形をしていかなくてはなりません。それだけは忘れないように。

 

分数式の極限を考える

最初はここからいきましょう。

 

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{3n+1}{n}\)

 

これはこのままでは \(\frac{\infty}{\infty}\) の不定形ですね。不定形では計算が不能なのでどうにか変形していきます。

もちろん変形の方針は先ほど出てきた

 

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n}=0\)

 

これです。これを作るためであればたとえ今まで数学をやってきた中で「これはおかしいだろう」と感じる変形でもしていかなくてはなりません。

 

今回の場合は \(\frac{1}{n}\) を作るために分子分母を \(n\) で割ります

 

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{3n+1}{n}=\lim_{n\to\infty}\frac{\frac{3n}{n}+\frac{1}{n}}{\frac{n}{n}}=\lim_{n\to\infty}\left(3+\frac{1}{n}\right)\)

 

普通に考えるとかなり不自然ですが極限の計算ではこれが普通になります。こうすれば極限をとった時に不定形ではなくなります。

実際に極限を考えてみると

 

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(3+\frac{1}{n}\right)=3+0=3\)

 

となります。不定形ではなくきちんと極限の計算ができましたよね。

このように

 

変形をする=不定形を避ける

 

なのですがその一つの方法として

 

分子と分母を割る

 

という操作ができることがわかりました。ただ単に「割る」と書いたのは例えば

 

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{3n^2+1}{n^2+1}\)

 

のような場合は単純に \(n\) で割っただけだと

 

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{3n+\frac{1}{n}}{n+\frac{1}{n}}\)

 

となりこれで極限をとっても

 

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{3n+\frac{1}{n}}{n+\frac{1}{n}}=\frac{\infty +0}{\infty +0}=\frac{\infty}{\infty}\)

 

で結局不定形になります。ですからこのような場合は \(n^2\) で割ることにより不定形を防ぐことができて

 

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{3n^2+1}{n^2+1}=\lim_{n\to\infty}\frac{3+\frac{1}{n^2}}{1+\frac{1}{n^2}}=\frac{3+0}{1+0}=3\)

 

と計算できます。このように割る数もその場で変えていかなくてはなりません。

よく参考書等には

 

 

Focus

分数式での極限では

 

分母の最高次の項で分母と分子を割る

 

ことで不定形を回避できる

 

 

なんて書いてあります。確かにその通りなのですが、なんでそうしなければならないかが重要です。もちろん理由は先ほどのように不定形を避けるためには割る数を工夫しなくてはならないからです。

自分でまずはやってみてなぜうまくいったのか・いかなかったのかを感じることが一番重要です

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ルートの入った極限を考える

お次はルートです。これも極限の計算問題にはよく出てきます。例えばこんな問題です。

 

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{1}{\sqrt{2n+3}-\sqrt{2n}}\)

 

もちろんこの問題はそのまま極限をとれば不定形が出てきます。どこかわかりますか。

 

そうです分母ですね。 \(\infty -\infty\) が出てきて計算不能です。

ですから私たちはこれをなんとかして避けなくてはなりません。さてどうするか。

 

この時にルートのある問題でよくやるのが有理化です。今回は分母の有理化です。

 

もちろんかけるのは \((\sqrt{2n+3}+\sqrt{2n})\) ですね。機械的には「後ろの符号をひっくり返したものをかける」だけです。

もちろん頭の中には \((x+y)(x-y)=x^2-y^2\) という式があります。これのおかげでルートが2乗されてルートがなくなるのでしたね。

実際にやってみましょう。

 

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{1}{\sqrt{2n+3}-\sqrt{2n}}=\lim_{n\to\infty}\frac{\sqrt{2n+3}+\sqrt{2n}}{(\sqrt{2n+3}-\sqrt{2n})(\sqrt{2n+3}+\sqrt{2n})}=\lim_{n\to\infty}\frac{\sqrt{2n+3}+\sqrt{2n}}{(\sqrt{2n+3})^2-(\sqrt{2n})^2}\)

よって

 

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{\sqrt{2n+3}+\sqrt{2n}}{2n+3-2n}=\lim_{n\to\infty}\frac{\sqrt{2n+3}+\sqrt{2n}}{3}\)

 

となりました。これは引き算が足し算になったので不定形から脱せています。極限をとると

 

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{\sqrt{2n+3}+\sqrt{2n}}{3}=\frac{\sqrt{2\cdot\infty +3}+\sqrt{2\cdot\infty}}{3}=\frac{\infty}{3}=\infty\) 

 

となり極限は正の無限大に発散するという結果が得られました。こんな風に不定形を避ける方法もあることをしっかりと押さえておいてください。

 

このルートが関わるものの中でちょっと変な変形で不定形を避ける場合もあります。その時によくあるのがこんな問題。

 

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}(\sqrt{n+1}-\sqrt{n})\)

 

これも\(\infty -\infty\) の不定形です。この場合は分子の有理化をします。

 

分子?という感じですが、つまりは有理化です。 \(\sqrt{n+1}-\sqrt{n}\) を \(\frac{\sqrt{n+1}-\sqrt{n}}{1}\) とみて有理化します。

「分母の有理化」ならやったことがありますね。先ほどの計算がそうです。ですが極限の計算では時には分子の有理化も必要になります。

 

やることは分子の有理化と同じです。分子にルートがなくなるように分母と分子に同じものをかけます。

かけるものは先ほどやった分母の有理化と同じ考え方でOK。今回は \((\sqrt{n+1}+\sqrt{n})\) ですね。

 

やってみると

 

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{(\sqrt{n+1}-\sqrt{n})}{1}=\lim_{n\to\infty}\frac{(\sqrt{n+1}-\sqrt{n})(\sqrt{n+1}+\sqrt{n})}{\sqrt{n+1}+\sqrt{n}}=\lim_{n\to\infty}\frac{n+1-n}{\sqrt{n+1}+\sqrt{n}}=\lim_{n\to\infty}\frac{1}{\sqrt{n+1}+\sqrt{n}}\)

 

よりこれで不定形ではなくなります。これが分子の有理化です。これで極限は

 

\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{1}{\sqrt{n+1}+\sqrt{n}}=\frac{1}{\infty}=0\)

 

ですね。このようにルートのついた場合は

 

分母・分子の有理化を行う

 

をしっかりと頭に入れてください。もちろん不定形になってしまうことを確認してから行なってください。

 

まとめ

極限の計算はある意味やることが決まっています。不定形を避けるためにどうするかを常に考えながら計算を練習することが不可欠です。今回は〜その1〜ということで基本的なものの解説を丁寧にやってきましたが〜その2〜では少し難しかったり、極限の性質を使って「上手く」極限を計算する手法を学んでみましょう。

 

ではまた。

 

 

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コメント

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