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不等式の証明 基本の考え方&結果の利用

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今回の問題はこちら

  1. \(|a|<1\ ,\ |b|<1\) ならば \(a+b<ab+1\) が成り立つことを証明せよ。
  2. \(|a|<1\ ,\ |b|<1\ ,\ |c|<1\) ならば \(a+b+c<abc+2\) が成り立つことを証明せよ。

 

不等式の証明の問題です。1番の問題は典型的な証明の問題ですので必ず押さえたいところです。2番に関してはうまく1番の結果を使えるかどうかがカギです。

では早速問題を解いていきましょう。

不等式の問題の一番の基本は証明したい大小関係を見極め「差」として考えることです。当たり前のことですが、問題文に与えられている証明したい不等式からスタートするのは言語道断です。この不等式を証明したいのにそこからスタートするということはありえません。スタートがゴールになってしまいますからね。

ですので「不等式」とは言うものの最初は「式」を変形していくことからスタートします。その第一歩が「差」です。

要するにある式を変形していった結果、必ず正負が決まる形になればどちらが大きいか小さいかが判断できます。

単純な例だと

$$5-2=3$$

で\(3\) は \(0\) より大きいので \(5\) と \(2\) の大小関係は計算結果である \(3\) から

$$5>2$$

であることが言えますよね。これと同じことを式でもやるのです。

今回は \((a+b)\) と \((ab+1)\) を比べてあげたいので、

$$(ab+1)-(a+b)$$

を計算します。もちろん逆でも大丈夫です。これを計算した結果がもし

$$(ab+1)-(a+b)=\cdots >0$$

となってくれれば、\((a+b)\) よりも \((ab+1)\) のほうが大きいことになり、

$$(ab+1)>(a+b)$$

が証明できます。ゴールは見えましたね。では計算をしていきます。

$$(ab+1)-(a+b)$$

を計算していきます。ですがどうまとめればいいでしょうか。

数学において式の正負が一番わかりやすいのは

の形です。例えば

$$(-2)\times 3$$

の計算結果の正負はどちらですかと聞かれたときにすぐに

$$(-)\times (+) = (-)$$

であると考えたはずです。これと同じように、掛け算の形にしてそれぞれの正負が分かれば、その式の正負も決まります

ですので、式の変形の方針もおのずと立つわけです。それは

因数分解

ですね。やってみましょう。

$$(ab+1)-(a+b)=ab+1-a-b=a(b-1)+1-b$$

まずは一つの文字に注目してそれでくくり、

$$=a(b-1)-(b-1)$$

因数分解できるように同じ因数(共通の形)を作り、

$$=(a-1)(b-1)$$

因数分解します。できましたでしょうか。

ここまでくれば後は条件を使うだけです。\(|a|<1\ ,\ |b|<1\) より

$$-1<a<1\ ,\ -1<b<1$$

なので、そこから \(1\) 引いたものは

$$-2<a-1<0\ ,\ -2<b-1<0$$

となり、それぞれの項がどちらも負になることが確認できます。

ということはその積は必ずですので

$$(ab+1)-(a+b)=(a-1)(b-1)>0$$

より

$$ab+1>a+b$$

より

$$a+b<ab+1$$

が証明出来ました。この証明のパターンは非常に大事ですので必ず押さえましょう。

次の問題はこの1番の計算結果を使う問題です。これはなかなか慣れないとわかりませんが、一度見て「こんな風に使うのか」ということを理解してもらえれば幸いです。

ですがもちろんヒントはあります。一つは、1番の問題と比べて形が非常に似ていること二つ目は条件がすべて同じことです。

とりあえずやってみましょう。このような結果を使う問題ではどちらか一方からスタートするのが得策です。

$$abc+2$$

からスタートしましょう。なぜかというと、頭の中に

$$abc=ab\times c$$

ができており、これの \(ab\) をひとかたまりとみれば1番の式の右辺と同じ形にできそうだからです。

やってみます。

$$abc+2=ab\times c+2=Ac+2$$

で \(A=ab\) であるが、条件より \(|ab|<1\) であることは簡単にわかりますので、1番の式から

$$A+c<Ac+1$$

が成り立ちます。よって両辺に1を足せば

$$A+c+1<Ac+2$$

ができ、変形していた式と同じものが出てきました。よって置き換えれば、

$$abc+2=ab\times c+2=Ac+2>A+c+1$$

となり、式としては、

$$abc+2>A+c+1$$

このような関係になりました。ここまでくればあと少し。\(A=ab\) でしたので戻すと、

$$abc+2>ab+c+1$$

で、1番の形がまた出てきましたね。

$$abc+2>ab+c+1=ab+1+c$$

で、1番の式より両辺 \(c\) を足せば

$$a+b+c<ab+1+c$$

なので、書き換えれば

$$abc+2>ab+c+1=ab+1+c>a+b+c$$

より

$$abc+2>a+b+c$$

が証明できました。大変でしたが2度1番の式を使えばたどり着ける問題でしたね。

いったん広告の時間です。

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まとめ

不等式の証明はまずは1番ができることが肝心です。差を使って不等式を証明することは基本ですのでやり方を含めて自力でできるようになっておくことをおススメします。2番の問題は少しトリッキーな問題ですが、不等式の証明などではよくある「結果を使う」ものになっていますので、じっくり考えて身に着けておくといいでしょう。

ではまた。

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