回転の式をもう少し拡張する
さて、前回はある点の周りで複素数を回転させることを考えました。その時の3点の関係は次のように掛けましたね。
もし複素数 \(\alpha\) の周りに複素数 \(\beta\) を角度 \(\theta\) だけ回転させた時、\(\gamma\) に一致したとすると3点の関係は
\(\gamma=(\beta -\alpha)\cdot (\cos\theta +\mathrm{i}\sin\theta)+\alpha\)
で表される。
これはもう少し拡張して次のように書くことができます。
複素数 \(\alpha\) の周りに複素数 \(\beta\) を角度 \(\theta\) 回転かつ \(r\) だけ定数倍すると、\(\gamma\) になるとき、\(\gamma\) は
\(\gamma=(\beta -\alpha)\cdot r(\cos\theta +\mathrm{i}\sin\theta)+\alpha\)
と表される。
変わったのは回転を表す \(\cos\theta +\mathrm{i}\sin\theta\) に \(r\) がくっついたところですね。ただそれだけです。
図に描くとこんな感じですね。
少し複雑ですがやってることは回転に追加して外側に伸ばすことをできるようにしただけです。\(r\) を \(1\) にすると今までやっていた回転のみと全く同じです。これが一般的な複素数の回転を表す式になります。
さて、実はこれをうまく使うと3つの複素数の関係性をある簡単な計算で明らかにすることができます。やってみましょう。
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3点が直線上にある状況をどう表すか
例えば次のように複素数が一直線に並んでいるような状況を考えましょう。
この時3つの複素数を表す式は「 \(\beta\) を \(\alpha\) を中心に \(\pm 180\) 度(\(\pm \pi\)) 回転させて、定数倍させれば \(\gamma\) になる」という状況と見れるので
\(\gamma=(\beta -\alpha)\cdot r(\cos\pm\pi +\mathrm{i}\sin\pm\pi)+\alpha\)
となりますね。先ほど確認した式の角度 \(\theta\) を180度(-180度)にしてあげればいいのです。もちろん \(r\) も決まるはずですが、時と場合によって違うので今回は \(r\) のままにしています。注意しておきたいのはこの式は複素数が何であれいつでも成り立つ式ということです。
これを少し変形してみます。まず \(\alpha\) を左辺に移項して
\(\gamma -\alpha=(\beta -\alpha)\cdot r(\cos\pm\pi +\mathrm{i}\sin\pm\pi)\)
もちろん複素数は全て違うものを考えないと回転を考えられないので \(\alpha\neq \beta\neq \gamma\) より \(\beta -\alpha\) で割ってもよく
\(\frac{\gamma -\alpha}{\beta -\alpha}=r(\cos\pm\pi +\mathrm{i}\sin\pm\pi)\)
ですね。三角関数の部分はもちろん
\(\frac{\gamma -\alpha}{\beta -\alpha}=r(\pm 1+\mathrm{i}\cdot 0)=\pm r\)
ですから左辺は必ず実数になりますね。\(r\) は定数倍の部分でした。つまりこの式からわかることは
もし3つの複素数が一直線上に並んでいたら
\(\frac{\gamma -\alpha}{\beta -\alpha}\)
を計算すると必ず実数になる
ということです。この逆ももちろん成り立ちます。先ほどの式を逆に追えば証明できますが結果だけ言うと
\(\frac{\gamma -\alpha}{\beta -\alpha}\)
が実数であれば3つの複素数 \(\alpha\ ,\ \beta\ ,\ \gamma\) は一直線上に位置する
です。つまりどういうことかというと、
複素数が3つ(\(\alpha\ ,\ \beta\ ,\ \gamma\))ある時、それらの位置関係は
\(\frac{\gamma -\alpha}{\beta -\alpha}\)
を計算すればわかる
ということです。もし上の式を計算して実数になるならば、その3点は図を描かずとも一直線上になることがわかるわけです。
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垂直の条件も導出してみる
同じようにすれば3点が垂直な位置関係になる場合も考えることができます。
3点が垂直の位置関係ということは角度 \(\theta\) が90度か-90度(\(\pm\frac{\pi}{2}\))の時(上の図は90度の時です)なので
\(\gamma=(\beta -\alpha)\cdot r(\cos\pm\frac{\pi}{2} +\mathrm{i}\sin\pm\frac{\pi}{2})+\alpha\)
とすればいいですね。先ほどと同じように
\(\frac{\gamma -\alpha}{\beta -\alpha}=r(\cos\pm\frac{\pi}{2}+\mathrm{i}\sin\pm\frac{\pi}{2})=r(0\pm\mathrm{i}\cdot 1)=\pm r\mathrm{i}\)
と変形すればこれはつまり
3つの複素数(\(\alpha\ ,\beta\ ,\ \gamma\) )が垂直の位置関係にある時
\(\frac{\gamma -\alpha}{\beta -\alpha}\)
が純虚数になる
と言えます。もちろん逆もしかりで
もし
\(\frac{\gamma -\alpha}{\beta -\alpha}\)
が純虚数なら 3つの複素数(\(\alpha\ ,\beta\ ,\ \gamma\) )は垂直な位置関係になる
とも言えます。式を変形するだけでこのような条件が出てきました。
回転という概念から3点の位置関係という概念が生み出せたことはとてもすごいことですが、このままでは使い道がよくわからないので少し例を見て便利さをみて見ましょう。
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3点の位置関係を計算で求める
さて、先ほど少し触れましたが
\(\frac{\gamma -\alpha}{\beta -\alpha}\)
を計算すると位置関係がわかるということを具体例で示していきましょう。
まず3つの複素数
\(5-\mathrm{i}\ ,\ 3+\mathrm{i}\ ,\ 2+2\mathrm{i}\)
を考えます。これらの位置関係は図示すればわかりますが計算だけで位置関係を正確に考えてみます。
やることはただ一つ
\(\frac{\gamma -\alpha}{\beta -\alpha}\)
を計算するだけです。3点がどこにあるのかは計算してきた後に考えるとして、まずは当てはめてみましょう。
計算する際は3つの複素数を適当に \(\alpha=5-\mathrm{i}\ ,\ \beta=3+\mathrm{i}\ ,\ \gamma=2+2\mathrm{i}\) と好きなようにおいておくと公式に当てはめやすいです。当てはめると
\(\frac{\gamma -\alpha}{\beta -\alpha}=\frac{(2+2\mathrm{i})-(5-\mathrm{i})}{(3+\mathrm{i})-(5-\mathrm{i})}\)
よって計算すると
\(\frac{(2+2\mathrm{i})-(5-\mathrm{i})}{(3+\mathrm{i})-(5-\mathrm{i})}=\frac{2+2\mathrm{i}-5+\mathrm{i}}{3+\mathrm{i}-5+\mathrm{i}}=\frac{-3+3\mathrm{i}}{-2+2\mathrm{i}}=\frac{-3(a+\mathrm{i})}{-2(1+\mathrm{i})}=\frac{3}{2}\)
なので実数になりましたね。ということは今までの話から
複素数 \(5-\mathrm{i}\ ,\ 3+\mathrm{i}\ ,\ 2+2\mathrm{i}\) は一直線上にある
ということが簡単にわかるわけです。位置関係を図で書くと
ですのでたしかに一直線上にあることがわかりますね。この式の使い道はこんなものではないですがそれは次の機会にしましょう。
まとめ
複素数の回転を応用していく段階に入りました。まずは元の式をしっかりと図も含めて理解することが重要です。式のどこが図のどこに対応しているのかを常に考えて理解を深めていってください。
ではまた。
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