約数の総和とその求め方
ある自然数の約数を求めた後、その和を考えることにします。「なんで?」というツッコミは無しでお願いします(笑)。理由は”高校数学の整数の分野では結構問題に出てくるので覚えておくと便利だから”という説明をしておきましょう。整数を考える上で約数は結構大事なのでここで習うといってもいいかもしれません。
前置きはさておき、実際にまずは簡単な数字でその意味を掴んでいきましょう。
例えば12という自然数は次の約数を持ちます。
$$1,2,3,4,6,12$$
これの和は何も考えることなく
$$1+2+3+4+6+12$$
をすればいいので答えは
$$28$$
です。簡単ですね。
では3780の約数の総和を求めなさいと言われてやりたい人がいるでしょうか。足し算や割り算が好きな人がいればやってくれるかもしれませんが大概の人は嫌だと思います。なので
「実際に約数を計算しなくても和を出せる」
方法があるとかなり便利なわけです。そんなことできるのでしょうか。できるんです。
まず何をするかというと約数の和を求めたい自然数を素因数分解します。素因数分解がよくわからなければ別の記事を見てください。
簡単にいうとある「自然数を素数の積で書きあらわす」というだけです。なので例えば12は
$$12=2\times 2\times 3=2^2\times 3$$
と素因数分解できます。
さて、ここで約数についてもう一度考えていきましょう。約数とは自然数をある数で割った時にあまりが出ない、そんな割る数のことです。それはつまり、
その自然数の中に含まれている(素因数分解した時に出てくる)数の積になる
はずです。なぜなら、「割ってあまりが出ない」=「割る時に使った数字は今考えている自然数に含まれている」とならなければいけないからです。
12を例にとると12は2を含みます(”2を素因数に持つ”とも言います)ので2で割れますね。もちろん2と3をどちらも含みますからその積である6でも割りきれます。
このように自然数を素因数分解するとその自然数の約数の候補が見えてくるわけです。ではこのようにすると約数を何も考えずに導けるのではないでしょうか。例えば12の場合
$$(1+2+4)(1+3)=1+2+4+3+6+12$$
左辺が私が勝手に作った式です。これを単純に展開すると右辺にあるように12の約数が全て出てきているではありませんか。これはまさに私たちが欲しかったある自然数の約数の総和です。今回は12の約数の総和で、先ほど頑張って計算すると28と出ましたが、この式を使えば、左辺を計算するだけでいいので
$$(1+2+4)(1+3)=7\times 4=28$$
で簡単に求めることができました。これが約数の総和を簡単に出す方法です。
ではどうやって
$$(1+2+4)(1+3)$$
この式を導いたのでしょうか。実はこれは素因数分解したところから考えて立式しました。何を考えたかというと、「約数が全て出るように掛け算の組み合わせを作った」のです。
約数は先ほどもいった通り、素因数分解した素因数の組み合わせで表せます。12の場合出てくるのは2が2個と3が1個ですから、この組み合わせで作れる数字は約数になります。もちろん2、3自身も約数です。
ではこれを式で書いて出すためにはどうしたら良いかというと、掛け算を順々にできるもの、分配法則を使えばいいのです。2と3だけでは2、3自身と1を作れないので1を用意してあげて、
$$(1+2+2^2)(1+3)$$
と書いてあげれば、先ほどの例でやったように約数が全て出てきます。
$$(1+2+4)(1+3)=1+2+4+3+6+12$$
少し立式が難しいかもしれませんが、慣れればすぐです。右辺を見ることで約数が全て出てきて、話になっていることがわかるので、和を求めたければ左辺を計算すればいいことになります。
例をやってみましょう。せっかくなので3780の約数の総和を求めてみましょうか。まずはこれを素因数分解します。
$$3780=2^2\times 3^3\times 5\times 7$$
です。大変ですね。ここまできたらあとはそれぞれを順々に出てくるように書きます。こんな感じです。
$$(1+2+2^2)(1+3+3^2+3^3)(1+5)(1+7)$$
素因数で作れないものは必要ないので2のところであれば\(2^2=4\)まで、3であれば\(3^3=27\)までです。あとはこれを計算すれば約数の総和になるわけですから、
$$(1+2+2^2)(1+3+3^2+3^3)(1+5)(1+7)=(1+2+4)(1+3+9+27)(1+5)(1+7)=7\times 40\times 6\times 8=13440$$
で3780の約数の総和は13440になることがわかりました。一つ一つやると日が暮れそうですが、これでやると掛け算だけですので楽ですね。
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終わりに
今回はある自然数の約数の総和を求めることを考えていきました。問題で問われることがなんとなく多い印象なので覚えておくと良いです。あと、約数の個数を求める問題もある(別記事で解説しています)がその前置きにもなります。知っておけば一石二鳥かもしれません。
ではまた。
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