グラフの平行移動とは
そもそも平行移動とは何かと言うと、
グラフの形を変えずに違う場所に移動すること
です。違う場所に移動するというのは色々な方向があります。上下左右はもちろん、斜め方向にだって移動できます。ですが、基本的に「左右」にこれだけ、「上下」にこれだけ移動する、と言ってしまえば斜めに移動する場合も表現できるので
\(x\) 軸方向に〇〇、\(y\) 軸方向に〇〇だけ平行移動する
これを決まり文句として使うことにします。左右方向を \(x\) の正負で、上下方向を \(y\) の正負で表現します。例えば「 \(x\) 軸方向に -2 , \(y\) 軸方向に 3 だけ平行移動」と言われたら、グラフ全体を左に 2 目盛り、上に 3 目盛りだけ動かすということになります。
さて、ここでグラフの平行移動とは結局何をしているのでしょうか。見た目的には移動しているといえばいいのですが、数学は数式にして初めて意味を持ちます。平行移動という概念を数式を用いて表現したい・・のです。
そもそもグラフとは関数の式を満たす「点」の集まりです。点の平行移動ができれば関数自体の平行移動もできそうですね。点はある平行移動を施すとどうなるのかを考えましょう。
これは下の図のように考えればすぐにわかるでしょう。
点 \((2,1)\) を \(x\) 軸方向に 3 , \(y\) 軸方向に 2 だけ平行移動すると点 \((5,3)\) になる。すなわち元の点にそれぞれ平行移動した値を足せば良い。
左、下に動いた場合も同様です。そのマイナスの数値を元の点に足せば平行移動した後の点になってくれるわけです。
すなわち一般的に点 \((a,b)\) を \(x\) 軸方向に \(p\) , \(y\) 軸方向に \(q\) だけ平行移動した点は
$$(a+p , b+q)$$
です。
では関数ではどうでしょうか。
その前に2次関数の一番単純なバージョンをおさらいしますよ。
それは \(y=ax^2\) の形でした。これは放物線であり、原点を通る。かつ \(a>0\) の時は下に凸、 \(a<0\) の時は上に凸という形状になるのでした。
こんなのです。
ではグラフを平行移動してみます。このときに大事なのは平行移動した後の関数がどうなるかです。それがわからないと平行移動しても数式でかけないので意味がないんですね。
まず上の図のような状況を考えます。関数Fは \(y=ax^2\) です(目盛りはあまり気にしないでください笑)。
それを \(x\) 軸方向に \(p\) , \(y\) 軸方向に \(q\) だけ平行移動したものを関数Gとしましょう。今やりたいことはGの関数の式を導くことです。グラフは点の集まりですから、ある任意の一点だけを平行移動してその関係がわかれば、それがすなわち欲しい関数(グラフ)になるはずです。
そこでG上に点 \(P(x,y)\) をとります。よって、この \(x\) と \(y\) の関係式が今求めたいGの関数になります。ここ大事です。覚えておいてください。
では先ほどの点の平行移動を思い出します。今回Fを平行移動してGにしたいのですが、先にGの点を決めたので、逆にGをどれだけ平行移動したらFになるかを考えます。
簡単ですね?点Pを平行移動した点をQとして、その座標は \(Q(x-p,y-q)\) となります。これを一度 \(Q(A,B)\) とおきます。もちろんQはF上の点なので \(y=ax^2\) に代入したら成り立つはずなので、 \(B=aA^2\) という関係式が求められます。ではこれを元に戻してみましょう。すると
$$y-q=a(x-p)^2$$
となります。先ほど話した通り、欲しいのは\(x\)と\(y\)の関係式でしたから、これがGの関数になるのです。
Fを \(x\) 軸方向に \(p\) , \(y\) 軸方向に \(q\) だけ平行移動したってことは点は右と上に移動してるのに関数は \(y-q=a(x-p)^2\) ってなんか変な感じですよね。そうなんです、直感と少しずれるのです。ですがこれが正しい結果になります。
例えばこんな感じです。 \(y=2x^2\) のグラフを \(x\) 軸方向に \(2\) , \(y\) 軸方向に\(1\) だけ平行移動したものはどんな式になるかを考えると、その関数は
$$y-1=2(x-2)^2$$
です。グラフはこんな感じ
ということは逆に \(y-1=2(x-2)^2\) を書きなさいもしくは -1 を移項した式 \(y=2(x-2)^2+1\) を書きなさいと言われてもかけそうなのがわかりますでしょうか?
この平行移動がわかっていれば、
「ああ、 \(y=2x^2\) のグラフを \(x\) 軸方向に \(2\) , \(y\) 軸方向に \(1\) だけ平行移動したものでしょ?だから形が変わらないで点だけずらせばいいんだ。」
ってなりますよね?じゃあどこの点を基準にしましょうか・・と考えたときに、下に凸だったら一番下、上に凸だったら一番上の点だけみてやれば良さそうだし楽なわけです。そこを頂点と呼びます。すなわち \(y-1=2(x-2)^2\) の式だと頂点は \((2,1)\) です。この頂点をとってあとはそこが一番下になるように \(y=2x^2\) のグラフを書けば \(y=2(x-2)^2+1\) の完成です。
あれ?ってことは今まで考えてた \(y=ax^2+bx+c\) のグラフってなんで2次関数なんだ?
と思う人がいたら鋭いですね。形が全然違うように見えますよね。ですが \(y=2(x-2)^2+1\) を展開してみると
$$y=2x^2-8x+9$$
となるわけで実は平行移動したものは \(y=ax^2+bx+c\) の形になるんです。
じゃあ \(y=ax^2+bx+c\) は頑張れば \(y-q=a(x-p)^2\) の形にできるってことですよね?さらにこれができればグラフが書けることが今までの話でわかりました。
この変形を平方完成といいます。
というわけで長くなりましたがここまでとします。次回は平方完成をできるようにします。これができればグラフを書けるようになるので次に進めますね。
正直言ってこの話をしっかりやらなくても平方完成ができれば機械的にグラフは書けます。しかしこの平行移動の概念はグラフのイメージ作りにもってこいの内容です。グラフの移動は数式上でどのようになるのかを知っておけば他のすべての関数で応用が利きます。回りくどくて難しいかもしれませんが頑張って理解してみてください!
ではまた。
コメント
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