複素数の性質はいろいろ
複素数には多くの性質があります。虚数を考えることによって数字の幅が広がったのもあり、特に複素共役との関係が頻出です。
ここではまず性質を挙げ、その後それぞれをサクッと証明したいと思います。
記号は
\(z=a+b\mathrm{i}\)
を使うだけですのでこれだけ覚えておいてください。ちなみに \(z\) は複素数を考えた時のただの表記で、その右辺はあらわに実数部分と虚数部分で書いた時の記法です。
なぜ \(z\) を使っているかというと単純に演算が楽だからです。もし \(z\) の2乗を考えた場合、\(z\) が何かわからない状態のときは \(z^2\) と書いた方が明らかに楽です。
\((a+b\mathrm{i})^2\)
と書くのは大変ですよね。見た目が複雑になるので一旦式変形を \(z\) で行い、もし絶対値などの情報が欲しくなったときに実数部分と虚数部分の入った表式を使えばいいのです。特に複素数がよくわからないときはzで済ませた方が圧倒的に楽ですね。
ここからは複素数の性質をどんどん挙げていきます。\(z\) の表式を使い、その性質が正しいことを式を使って計算します。
ここで \(\alpha=x+y\mathrm{i}\ ,\ \beta=p+q\mathrm{i}\) とします。
① \(z\) が実数 \(\leftrightarrow\) \(\overline{z}=z\)
② \(z\) が純虚数 \(\leftrightarrow\) \(\overline{z}=-z\)
③ \(\overline{\alpha +\beta}=\overline{\alpha}+\overline{\beta}\)
④ \(\overline{\alpha -\beta}=\overline{\alpha}-\overline{\beta}\)
⑤ \(\overline{\alpha \beta}=\overline{\alpha}\overline{\beta}\)
⑥ \(\overline{\left(\frac{\alpha}{\beta}\right)}=\frac{\overline{\alpha}}{\overline{\beta}}\)
上の2つは
で証明した通りなので割愛します。3つ目から順に証明していきましょう。
証明といってもただ左辺と右辺をそれぞれ変換するだけです。計算をするときは実数部分と虚数部分をあらわに書いて計算してみます。
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③、④の証明
左辺は
\(\alpha +\beta=(x+y\mathrm{i})+(p+q\mathrm{i})=(x+p)+(y+q)\mathrm{i}\)
となるので、これの複素共役は
\(\overline{\alpha +\beta}=(x+p)-(y+q)\mathrm{i}\)
ですね。また右辺は
\(\overline{\alpha}=x-y\mathrm{i}\)
\(\overline{\beta}=p-q\mathrm{i}\)
なので
\(\overline{\alpha}+\overline{\beta}=x-y\mathrm{i}+p-q\mathrm{i}=(x+p)-(y+q)\mathrm{i}\)
より
\(\overline{\alpha +\beta}=\overline{\alpha}+\overline{\beta}\)
ですね。計算するだけの簡単なお仕事です。マイナスの方も同じようにできるので自分で計算してみてください。
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⑤、⑥の証明
さて引き続き⑤、⑥の証明をしてみましょう。
まずは⑤から。左辺は
\(\alpha\beta=(x+y\mathrm{i})(p+q\mathrm{i})=xp+xq\mathrm{i}+yp\mathrm{i}-yq=(xp-yq)+(xq+yp)\mathrm{i}\)
ですね。よってこれの複素共役は
\(\overline{\alpha\beta}=(xp-yq)-(xq+yp)\mathrm{i}\)
となります。積は面倒ですがあることは同じですね。右辺は先ほどの複素共役の表式を使えば
\(\overline{\alpha}\overline{\beta}=(x-y\mathrm{i})(p-q\mathrm{i})=xp-xq\mathrm{i}-yp\mathrm{i}-yq=(xp-yq)-(xq+yp)\mathrm{i}\)
なのでやはり
\(\overline{\alpha \beta}=\overline{\alpha}\overline{\beta}\)
であることが分かります。同じようにすれば⑥に関してもできますね。⑥は有理化が入ってくるので少し面倒です。
左辺は
\(\frac{\alpha}{\beta}=\frac{x+y\mathrm{i}}{p+q\mathrm{i}}=\frac{(x+y\mathrm{i})(p-q\mathrm{i})}{(p+q\mathrm{i})(p-q\mathrm{i})}=\frac{(xp+yq)+(-xq+yp)\mathrm{i}}{p^2+q^2}\)
です。有理化をして、分子を計算しました。分母は \(\mathrm{i}^2=-1\) を忘れずに。よってこれの複素共役は
\(\overline{\left(\frac{\alpha}{\beta}\right)}=\frac{(xp+yq)-(-xq+yp)\mathrm{i}}{p^2+q^2}\)
となります。右辺も計算してみると、
\(\frac{\overline{\alpha}}{\overline{\beta}}=\frac{x-y\mathrm{i}}{p-q\mathrm{i}}=\frac{(x-y\mathrm{i})(p+q\mathrm{i})}{(p-q\mathrm{i})(p+q\mathrm{i})}=\frac{(xp+yq)-(-xq+yp)\mathrm{i}}{p^2+q^2}\)
となり確かに
\(\overline{\left(\frac{\alpha}{\beta}\right)}=\frac{\overline{\alpha}}{\overline{\beta}}\)
です。ただ計算しただけですが、複素数の計算練習にはなるので自分で追ってみるとよいでしょう。
これらを見てわかることは
複素共役は単純に分解して考えてよい
ということですね。ルートとは違い、足し算引き算でも分けられてしまうところがポイントです。ちなみに絶対値は足し算引き算は分けることができないので注意です。
まとめ
複素共役について詳しく証明を行いましたが、実用上は計算できれば全く問題ありません。導出過程はある意味一度やればOKなので今後は計算でつまらないように、頭の中に入れておきましょう。
ではまた。
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