合成はなぜ必要か
三角関数には2倍角や半角の公式の他に使い勝手の良いもう一つの公式があります。
公式というと覚える感が出て嫌なのですが、それは
三角関数の合成
です。
ぱっと見知らない人は何をするのかよくわからないと思いますが、やることは
\(sin\) と \(\cos\) を一つにする
ことです。どういうことか説明します。
例えばこんな \(\sin\) と \(\cos\) の足し算
$$\sin\theta+\cos\theta$$
は私たちの今までの知識では何もできません。2倍角・半角を使っても変形はできませんね。
まあ、この形で特に嫌なことがないように思えますが、実はこの足し算がどれくらいの範囲で値をとるのかイメージがとてもしづらいです。
なぜなら
\(\sin\) と \(\cos\) は対照的に値が変わる
からです。
どういうことか説明しますね。例えば角度が \(\frac{\pi}{6}\) の時、
$$\sin\frac{\pi}{6}=\frac{1}{2}$$
$$\cos\frac{\pi}{6}=\frac{\sqrt{3}}{2}$$
ですよね。ですからこれらの足し算は
$$\sin\frac{\pi}{6}+\cos\frac{\pi}{6}=\frac{1}{2}+\frac{\sqrt{3}}{2}=\frac{1+\sqrt{3}}{2}$$
です。では \(\sin\theta +\cos\theta\) が一番大きくなるのはどんな角度の時なのでしょうか。\(\theta\) は\(0\leqq\theta\leqq 2\pi\) としましょう。
この時、先ほどの \(\frac{\pi}{6}\) で見たように、\(\sin\) が大きくなるとそれに伴って同じ角度の \(\cos\) が小さくなります。ですからすぐには最大値が何かとは言えないはずなのです。
もし最大値は \(1\) だよ!と思った人はもう一度よく考えてみてください。先ほどの \(\sin\frac{\pi}{6}+\cos\frac{\pi}{6}\) がもはや1を超えていますよね。
というわけで \(\sin\) と \(\cos\) の足し算は実は意外と厄介なのです。ですからこの表式は変えてあげたいのですが、私たちはまだこれをどうすることもできません。
以下ではこれを加法定理を使って変形できることを示します。またまた加法定理ですね。大活躍です。
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加法定理を逆に使って三角関数を合成する
では \(\sin\) と \(\cos\) の足し算をどうするのか。実はすごくトリッキーなことをします。なんでこんなこと思いつくんだという疑問は大昔の数学者に言いましょう。考え出したのがすごいです。じっくり考えると確かにできそうな気もしますが。
その内容について説明します。合成をどう考えたかと言うと、まず加法定理をじっと眺めるわけです。
$$\sin(\alpha+\beta)=\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta$$
先ほどの
$$\sin\theta+\cos\theta$$
にするためにはどうしたらいいか。うーん。。。
こんな風にしてはどうでしょう。\(\theta\) は必ずでてこなくてはいけないので \(\alpha=\theta\) にして、\(\beta\) に何か角度を入れてあげれば式に \(\theta\) だけがでてきそうです。
例えば\(alpha=\theta\ ,\ \beta=\frac{\pi}{6}\) にすると、加法定理から
$$\sin\left(\theta+\frac{\pi}{6}\right)=\sin\theta\cos\frac{\pi}{6}+\cos\theta\sin\frac{\pi}{6}$$
こうすると右辺に \(\sin\theta\) と \(\cos\theta\) がでてきて、右辺のそれ以外は計算できます。してみると
$$\sin\left(\theta+\frac{\pi}{6}\right)=\sin\theta\cos\frac{\pi}{6}+\cos\theta\sin\frac{\pi}{6}=\frac{\sqrt{3}}{2}\sin\theta+\frac{1}{2}\cos\theta$$
近いですが、これはどうやっても右辺を \(\sin\theta+\cos\theta\) にできません。これだとダメですね。
では角度を変えてみましょう。
$$\sin\left(\theta+\frac{\pi}{4}\right)=\sin\theta\cos\frac{\pi}{4}+\cos\theta\sin\frac{\pi}{4}$$
これはどうでしょうか。
$$\sin\left(\theta+\frac{\pi}{4}\right)=\sin\theta\cos\frac{\pi}{4}+\cos\theta\sin\frac{\pi}{4}=\frac{1}{\sqrt{2}}\sin\theta+\frac{1}{\sqrt{2}}\cos\theta$$
お、これはいけそうですね。右辺の係数を左辺に持って行ってしまいましょう。
$$\sqrt{2}\sin\left(\theta+\frac{\pi}{4}\right)=\sin\theta+\cos\theta$$
なんと \(\sin\theta+\cos\theta\) は \(\sin\left(\theta+\frac{\pi}{4}\right)\)という形にできてしまいました。これはつまり、
三角関数の足し算を一つの三角関数で表した
ことになりますね。これが三角関数の合成です。加法定理をうまく使うことで三角関数を一つにできました。
こうなると何がいいかというと、結局のところ係数以外は \(\sin\) であることがわかるので角度が何であれ一周分であれば \(\sin\) の最大値は \(1\) です。つまり \(\sin\theta+\cos\theta\) の最大値は \(\sqrt{2}\) であることが簡単にわかってしまうわけです。
もちろん用途はこれだけではないですし、問題にはしょっちゅうでてきますが、なぜ合成を学ばなくてはならないかを感じてもらえればOKです。
ですが、正直できることはわかりましたが、面倒ですよね。やりたくないです。角度探したくないです。
でも大丈夫です。もっと簡単にできる方法を皆さんは学びます。詳細は次の記事になりますが。もちろん皆さんの持っている教科書にも書いてあるはずです。
できるようになればそれをどんどん使って問題を解いて構いません。ですがこの基本的な原理とどうやって作っていたかは応用問題を解く際にとても重要になります。忘れないでくださいね。
まとめ
今回は三角関数の合成の根本的意味を学びました。加法定理からできていることを知らないで使っている人もいるので管理人は危機感を感じています。数学は基本がわかればそれを使っていいですが、よくわからないで使っていると必ず公式に“使われる”日がきます。あくまでも公式は「武器」ですので使いこなせるようになりましょう。
この次の記事では簡単な合成のやり方を解説しています。ぜひそちらもご覧ください。
ではまた
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