三角関数を微分したらどうなる?
結論から言いましょう。
三角関数を微分すると・・・三角関数になります。
いや知ってるよ・・・というツッコミが入りそうですね。
知っている人にとっては当たり前かもしれませんが、まずはこの事実を知らなくてはなりません。
次は三角関数それぞれを微分したらどうなるかを覚えましょう。詳しい証明などは
記事リンク(近日公開予定)
こちらで説明していますので気になる方はどうぞ。今回の目標はひとまず
三角関数の微分ができるようになる
です。ここに焦点を当てたいと思います。では早速公式を教えましょう。
三角関数を微分すると
\((\sin x)’ =\cos x\)
\((\cos x)’ =-\sin x\)
\(\displaystyle(\tan x)’ =\frac{1}{\cos^2 x}\)
となります。まずは
「サインとコサインが相互に関係する」
「タンジェントは特殊」
この事実をおさえましょう。闇雲に覚えても記憶に頼るだけになりすぐに忘れてしまいます。覚える際に必要なのは
記憶のトリガー
です。なんだっけ・・・と思っているときにパッと思い出せる時は基本的に何かがトリガーになっていることが多いです。
日常生活でもよくありますね。例えば買い物をしているとき、
「何を買うか忘れてしまった・・・」
というとき、陳列棚を見ていて関連する商品を見るととっさに思い出したりしませんか?これは脳が
繋がりによって情報を保管している
からです。丸まんま全てを覚えようとすると人間の脳はパンクします。コンピュータではないですからね。ですからどんどん記憶を薄くしていき、新しいことを覚えようとするのです。
ですから「思い出す」作業は「記憶を辿る」作業です。これを効率よくやるために「トリガー」が便利なのです。
記憶を呼び起こすトリガーを作れば効率的に覚えることができます。
さて、長々と話をしてしまいましたが、初学者の人は今すぐ三角関数の公式を言えますか?
たくさんやって覚えている人はすぐに出てくるでしょうが、今日初めて学んだ、もしくは学びたての人は既に忘れてしまっているのではないでしょうか?
これが記憶の脆さです。でもこれだけは覚えていますよね。
「サインとコサインが相互に関係する」
「タンジェントは特殊」
そう、これが記憶のトリガーです。これと公式を結びつければ効率的に公式を覚えられますし、覚えやすくないですか。
はい、というわけで公式をもう一度おさらいします。
\((\sin x)’ =\cos x\)
\((\cos x)’ =-\sin x\)
\(\displaystyle(\tan x)’ =\frac{1}{\cos^2 x}\)
サインは微分したらプラスで、コサインはマイナスです。なぜ『サインはコサイン・・・』と覚えないかというと、もう
「サインとコサインが相互に関係する」
ことを知っているからです。頑張って覚える必要なんてありません。符号さえわかっていれば、
「サインとコサインが相互に関係する」
のですからね。あとはタンジェント。これは分数で特殊なので
\(\displaystyle(\tan x)’ =\frac{1}{\cos^2 x}\)
そのまま覚えてもいいですし、作り方をみるとわかりますが、 \(\tan \) の公式から
\(\displaystyle(\tan x)’ = \left(\frac{\sin x}{\cos x}\right)’\)
で、「商の微分で計算していくので分母の二乗が出るよね」と知っておいてもいいかもしれません。
というわけでひとまず基本の微分として
\((\displaystyle\sin x)’ =\cos x\)
\((\displaystyle\cos x)’ =-\sin x\)
\((\displaystyle\tan x)’ =\frac{1}{\cos^2 x}\)
を覚えましょう!!
いったん広告の時間です。
三角関数の微分をマスターしよう
さて、ここからは基本の三角関数の微分を存分に使っていろんな微分に挑戦しましょう。この後の微分には
積の微分公式
商の微分公式
合成関数の微分公式
が必要になってきます。もしまだ学習していないという方がいたらまずはそちらを見ると良いでしょう。
というわけでここからは少し難しめの微分も登場するので、一つずつしっかりと説明していきたいと思います。
問題 1
まず微分する時に考えたいのが、この関数は「なんなのか」ということです。どういうことかというと
- 合成関数なのか
- 商の形(分数)なのか
- 積の形(関数の掛け算)なのか
を確認するということです。これがわかればどんな公式を使うのかがわかります。むしろこれがわかるようになるまで勉強しないと微分は意味がありません。微分ができるようになるということはつまり、その関数が「なんなのか」が事前にわかるということです。
さて、今回の問題はどうでしょう。今回は
\(\sin{x}\) の \(x\) に \(\displaystyle \left(3x+\frac{\pi}{4}\right)\)が入っている合成関数
ですね。大丈夫でしょうか。前にある \(\sqrt{2}\) はただの数字なので微分には関わってきません。
ですから合成関数の微分を思い出します。合成関数の微分は「普通に微分して、中身の微分をかける」でしたから
\begin{eqnarray}\displaystyle f’(x)&=& \sqrt{2}\cos\left(3x+\frac{\pi}{4}\right) \cdot \left(3x+\frac{\pi}{4}\right)’ \\[5pt]&=& \sqrt{2}\cos \left(3x+\frac{\pi}{4}\right) \cdot 3 \\[5pt]&=&3\sqrt{2} \left(3x+\frac{\pi}{4}\right)\end{eqnarray}
こうですね。最初は普通に \(\sin\) の微分ですから \(\cos\) になります。もちろん中身は同じ。その後に中身の微分を行います。これで微分が完了なわけです。
何をすればいいのかがわかればあとは単純にこれまで勉強した基本の微分を行うだけ。なんだかできそうな気分になったらこちらのものです。
問題 2
さて、計算に入る前にまずは・・・?
そうです。この関数が「何なのか」を見ますよ。まずわかることは「分数」であること。分母と分子どちらにも、変数である \(x\) があるので商の微分を使わなければいけません。
それがわかれば後は計算だけ。商の微分を思い出して、
\begin{eqnarray}\displaystyle f’(x) &=& \frac{(\sin x)’\cdot x-\sin x \cdot (x)’}{(x)^2}\\[5pt]&=&\frac{x\cos x-\sin x}{x^2}\end{eqnarray}
ですね。 \(\sin\) の微分を知っていればなんてことはありません。
問題 3
\(\displaystyle f(x)=\sin^2{x}\cos{2x}\) を微分せよ
これはどうしましょうか。まずはやはりこの関数は何なのかをしっかりと確認します。
\(\sin\) と\(\cos\) の積になっていますから、まずは積の微分を使うことになりそうです。また、それぞれの関数が合成関数になっていることにも注意しましょう。
ここまでわかればOKです。合成関数の微分は・・・いいですね。
\((\sin^2 x)’ =((\sin x)^2)’=2\sin x(\sin x)’=2\sin x\cos x\)
\((\cos 2x)’=(\cos(2x))’=-\sin 2x \cdot(2x)’ = -2\sin 2x\)
というわけで微分すると、積の微分は「微分してそのまま、そのままにして微分」でしたから、
\begin{eqnarray}f’(x) &=&(\sin^2 x)’\cos 2x + \sin^2 x(\cos 2x)’ \\[5pt]&=& 2\sin x\cos x\cos 2x -2\sin^2 x\sin 2x\end{eqnarray}
ここまできたら後は整理するだけです。第一項に\(2\sin x\cos x\) が見えますから、\(\sin 2x\) にしましょう。そうすればくくることができます。
\(2\sin x\cos x\cos 2x -2\sin^2 x\sin 2x = \sin 2x\cos 2x -2\sin 2x\sin^2 x\)
より
\(\sin 2x(\cos 2x -2\sin^2 x)\)
とできますね。後はカッコの中身を変えるとすると、
\begin{eqnarray}\sin 2x(\cos 2x -2\sin^2 x)&=&\sin 2x(1-2\sin^2 x-2\sin^2 x)\\[5pt]&=&\sin 2x(1-4\sin^2 x)\end{eqnarray}
ですね。長かったですがこれでできました。微分をすれば後は整理するだけですね。この問題がすんなりできればひとまず合格と言っていいでしょう。
まとめ
ここでは三角関数の微分を問題を通して考えていきました。微分自体は難しくありませんが、いろいろな公式と混じり合うことで複雑になっていることがわかったでしょう。
微分の本質はここにあります。三角関数の微分だけを覚えても微分はできるようになりません。後半で扱った問題のように『組み合わせ』られたものを、いかに一つずつ処理できるか。ここが勝負になります。
自分で問題演習をする際は必ず意識してください。解答は答え合わせをするだけではダメです。どうしてそう考えるのか、ここをしっかりと感じ取ってくださいね。
ではまた。
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