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関数の極限計算をしてみる〜その2〜(有限でない極限値編)

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こんにちは。 da Vinch (@mathsouko_vinch)です。

この記事のトピックは「関数の極限計算 有限でないバージョン」です。

 

無限大に発散してしまう関数の極限を考える

さて、ここまででいろいろな関数について極限計算をしてきたわけですが、ここからは数列の極限ではでてこなかったパターンの極限計算を考えます。

数列の極限ではとにかく「\(n\) を無限大にしたとき」を考えてきましたが、イントロでも説明した通り、関数の極限ではあらゆる値に向かって極限を取ることができます

それらの中でも今回は、これから新しい極限計算をするために必要な基本の極限を理解していきます。

その一つはこれです。

 

\(\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{1}{x^2}\)

 

見覚えがありますね。確か数列の極限では

 

\(\displaystyle\lim_{n\to \infty}\frac{1}{n^2}\)

 

は出てきました。大きな違いは「\(0\)」に向かうのか「\(\displaystyle\infty\)」に向かうのかですね。これは大きく違います。

もちろん数列の極限で学んだのは

 

\(\displaystyle\lim_{n\to \infty}\frac{1}{n^2}=0\)

 

でしたよね。 \(\displaystyle\frac{1}{n}\) の形が出てきたときはどうなっても「無限大」に項を増やせば、値は小さくなるので「\(0\)」に近づくのでした。ですので

 

\(\displaystyle\lim_{n\to \infty}\frac{1}{n}=0\ ,\ \lim_{n\to \infty}\frac{1}{n^2}=0\ ,\ \lim_{n\to \infty}\frac{1}{n^3}=0\ ,\ \cdots\)

 

となることは知っているはず。こんな性質があるので、数列の極限ではこれらの形を作って不定形を避ける方法を学びました

 

もちろん「無限大」で極限を取る場合は関数も同じです。

 

\(\displaystyle\lim_{x\to \infty}\frac{1}{x}=0\ ,\ \lim_{x\to \infty}\frac{1}{x^2}=0\ ,\ \lim_{x\to \infty}\frac{1}{x^3}=0\ ,\ \cdots\)

 

変数が \(x\) に変わっただけでやっていることは変わりませんからね。

 

では少し復習したところで、本題に戻って

 

\(\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{1}{x^2}\)

 

これはどうなるのでしょうか。もちろん \(0\) をそのまま入れても不定形なので単純ではありませんよね。

というわけでしょうがないので具体的に考えてみましょうか。

 

\(x\) を \(0\) に近づけるということは、つまり

 

\(\displaystyle \frac{1}{1^2}\ ,\ \frac{1}{(0.1)^2}\ ,\ \frac{1}{(0.01)^2}\,\ \frac{1}{(0.001)^2}\ ,\ \cdots\)

 

というように \(0\) に近い値を考えていくことと同じです。もちろん \(1\) からスタートする意味はありません。とにかく \(0\) にどんどん近づけていけばいいのです。これは

 

\(1\ ,\ 100\ ,\ 10000\ ,\ 100000\ ,\ 1000000\ ,\ \cdots\)

 

になりますね。つまり \(x\) を \(0\) に近づけていくと値はどんどん大きくなっていきます。ですので結局極限は

 

\(\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{1}{x^2}=\infty\)

 

となりそうですね。同じ式なのに \(x\) のとる極限が違うだけで極限値が全然違うのです。

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グラフで極限を理解する

さて、極限が計算できたので早速計算練習かと思いきやそうではありません。この分野のタイトルは「関数と極限」です。私たちは関数に対して極限を考えているのですから、この極限計算をできるだけでは意味がありません。この計算自体にはどんな意味があるのかを考える必要があるのです。これが微分につながっていきます。

 

先ほど計算した

 

\(\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{1}{x^2}=\infty\)

 

ですが、この中に書いてある関数

 

\(\displaystyle y=\frac{1}{x^2}\) 

 

はどんな形をしているでしょうか。実際に僕たちはこの関数を描けと言われたことはおそらくないですが、先ほどやったようにある程度値を当てはめてみると概形はわかります。

 

例えばこんな風に

\(x=1\) の時 \(y=1\)

\(x=2\) の時 \(\displaystyle y=\frac{1}{4}\)

\(x=5\) の時 \(\displaystyle y=\frac{1}{25}=0.04\)

\(x=-1\) の時 \(y=-1\)

\(x=-2\) の時 \(\displaystyle y=\frac{1}{4}\)

\(x=-5\) の時 \(\displaystyle y=\frac{1}{25}=0.04\)

\(x=\frac{1}{2}=0.5\) の時 \(y=4\)

\(x=-\frac{1}{2}=-0.5\) の時 \(y=4\)

 

 

と計算しておいて、これをプロットすると

 

 

となることから

 

 

のように書けそうですね。このグラフは値を見てもわかりますが \(y\) 軸対称のグラフになっています。

 

これが極限となにが関係あるかというと、先ほど計算した

 

\(\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{1}{x^2}=\infty\)

 

はグラフを見れば一目瞭然です。だってこのグラフで \(x\) を \(0\) に近づけたらものすごく大きくなっていますよね。

 

実は同じようにして \(x\) を \(\displaystyle\infty\) としたときの値も簡単に予想できて

 

\(\displaystyle\lim_{x\to\infty}\frac{1}{x^2}=0\)

 

となりそうですよね。先ほど当てはめて考えたものとグラフが繋がってきましたでしょうか。

 

つまりここで声を大にして伝えたいことは一つ

 

 

Focus関数の極限はグラフを見れば一発でわかる

 

 

ということです。つまり私たちは \(\displaystyle y=\frac{1}{x^2}\) の極限については一つ一つを暗記する必要は全くありません。覚えることは「その関数のグラフがどうなるか」ということです。つまり

 

\(\displaystyle y=\frac{1}{x^2}\) 

 

 

 

になることさえ押さえておけば

 

\(\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{1}{x^2}=\infty\)

\(\displaystyle\lim_{x\to\infty}\frac{1}{x^2}=0\)

 

これらの極限がすぐに「視覚的に」わかりますね。

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グラフで考えることの意義

では例えば次の問題は解けますでしょうか。

 

\(\displaystyle\lim_{x\to 1}\left(-\frac{1}{(x-1)^2}\right)\)

 

これももちろん \(x\) に \(1\) を代入しても不定形です。ではどう考えましょうか。

 

もちろん実際に代入してみてもOKです。 例えば

 

\(x=0\ ,\ 0.1\ ,\ 0.5\ ,\ 0.9\ , \ \cdots\)

 

と代入してみると

 

\(-1\ ,\ -\frac{1}{(-0.9)^{2}}=-1.23\cdots\ ,\ -\frac{1}{(-0.5)^{2}}=-4\ ,\ -\frac{1}{(-0.1)^2}=-100\cdots\)

 

とどんどん小さくなっていますね。ですからおそらく

 

\(\displaystyle\lim_{x\to 1}\left(-\frac{1}{(x-1)^2}\right)=-\infty\)

 

であることが予想できますが、少し不安です。ですのでここではグラフを使って簡単に求めてみます。

私たちは

 

\(\displaystyle y=\frac{1}{x^2}\)

 

 

のグラフは知っています。ですのでこれから書きたい

 

\(\displaystyle y=-\frac{1}{(x-1)^2}\)

 

のグラフは「平行移動」などを駆使すれば簡単に考えられそうではありませんか。このグラフさえ書けてしまえばあとは見るだけですものね。

 

では早速。まずグラフにマイナスの符号がついています。元のグラフにマイナスをつけるとグラフは \(x\) 軸に対して対称に動きます。もちろん \(y\) の符号がすべて変わるからですね。

つまり何を言っているかというと

 

\(\displaystyle y=-\frac{1}{x^2}\) 

 

のグラフは

 

 

になります。これは良いですね。では書きたい \(\displaystyle y=-\frac{1}{(x-1)^2}\) のグラフとは何が違うか。それは

 

\(x\) が \(x-1\) になっていること

 

です。これはまさしく「平行移動」でいうと

 

\(y=-\frac{1}{x^2}\) のグラフを \(x\) 軸方向に \(1\) だけ平行移動する

 

に対応しますね。これは二次関数などでさんざんやってきました。平行移動はどんな関数でも考えることができますので、さらに言い換えると

 

\(y=-\frac{1}{(x-1)^2}\) のグラフは \(y=-\frac{1}{x^2}\) のグラフを \(x\) 軸方向に \(1\) だけ平行移動したものである

 

といえます。つまり

 

 

こうですね。大丈夫でしょうか。少し見づらいので元のグラフをどけると

 

 

こうなりますね。イメージできていますでしょうか。少し不安な人はぜひ二次関数のところの記事

 

グラフと平行移動
  こんにちは。 da Vinch (@mathsouko_vinch)です。   グラフの平行移動とは そもそも平行移動とは何かと言うと、 グラフの形を変えずに違う場所に移動すること です。違う場所に移動するというのは色々...

 

で確認してみてください。ですからこのグラフを見れば一発で

 

\(\displaystyle\lim_{x\to 1}\left(-\frac{1}{(x-1)^2}\right)=-\infty\)

 

になることが分かります。グラフとても便利ですね。

 

まとめ

今回のポイントはグラフで考えることができるようになること、これにつきます。グラフのイメージを持たずに極限計算をすると明らかなミスに気づけない場合が多いです。「こんな形をしているからこの値に近づけていくとこうなりそう」ということが言えるか言えないかでは雲泥の差があります。後々微分でグラフを書く時にも重要な感覚です。ぜひグラフに負けず、立ち向かってください。

ではまた。

 

 

 

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関数と極限
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コメント

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