ド・モアブルの定理とは
数学Ⅲの複素数平面において重要な公式の1つが
ド・モアブルの定理
です。これは何かというと簡単にいえば
複素数の累乗に関する定理
です。この公式を知っていると累乗の計算が圧倒的に楽になります。複素数を学ぶなら必ず使うことになる定理でしょう。
また、この法則は極形式で表した時に使える定理なのでそこもお忘れなく。
まずは定理を紹介しましょう。こんな定理です。
ドモアブルの定理
複素数 \(z\) が
\(z=r(\cos\theta +\mathrm{i}\sin\theta)\)
と極形式で表されている時、 \(z\) の累乗、すなわち \(z^{n}\) は
\(z^{n}=r^{n}(\cos\theta+\mathrm{i}\sin\theta)^{n}=r^{n}(\cos n\theta +\mathrm{i}\sin n\theta)\)
とできる。
つまり
複素数の累乗は絶対値の累乗と角度を定数倍することで求めることができる
ということです。何が嬉しいのか。例えば
\((1+\mathrm{i})^{8}\)
を計算したいとは思いますか?正直諦めるレベルでしょうか。私は嫌です笑。
ですがド・モアブルの定理を知っていると計算してもいいかなと思えます。複素数 \(1+\mathrm{i}\) は
\(1+\mathrm{i}=\sqrt{2}\left(\cos\frac{\pi}{4}+\mathrm{i}\sin\frac{\pi}{4}\right)\)
と極形式で表せるのでド・モアブルの定理を思い出せば
\((1+\mathrm{i})^{8}=(\sqrt{2})^{8}\left(\cos\left(8\times\frac{\pi}{4}\right)+\mathrm{i}\sin\left(8\times\frac{\pi}{4}\right)\right)\)
と計算すれば良いということになるのです。なんと面倒な累乗の計算が一気に楽になりました。なぜなら累乗が角度の定数倍に変わったからです。
これは計算を続ければ
\(8(\cos 2\pi +\mathrm{i}\sin 2\pi)=8\)
となってしまいます。計算する気にならないような累乗の計算もド・モアブルの定理を使えばかなり楽になります。
さて使い勝手はわかりましたがどこで使うのか気になるところです。計算を楽にしてくれるのは良いことですがもっと応用範囲は広いはずですね。
それは次の記事に一旦おいておきましょう。その前にやはり定理は証明しなくてはなりません。
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ド・モアブルの定理の証明
ド・モアブルの定理を証明するには帰納法が有効だと思います。やり方としては帰納法の典型的なやりかたで
1.まずは \(n=1\) で成り立つことを確認する。
2. \(n=k\) で成り立つことを仮定し、\(n=k+1\) で成り立つことを示す。
これだけです。証明自体は簡単そうです。やってみましょう。まずは確認からしますよ。証明したいド・モアブルの定理は \(n=1\) の時
\(z^{1}=r(\cos\theta +\mathrm{i}\sin\theta)=r^{1}(\cos(1\times\theta)+\mathrm{i}\sin(1\times\theta))\)
とできるので当たり前に成り立ちますね。
次は仮定します。
\(z^{k}=r^{k}(\cos\theta+\mathrm{i}\sin\theta)^{k}=r^{k}(cos(k\theta)+\mathrm{i}\sin(k\theta)\)
が成り立つと仮定して
\(z^{k+1}=r^{k+1}(\cos\theta+\mathrm{i}\sin\theta)^{k+1}\)
を変形しましょう。方針としては仮定した式を作ればいいので
\(r^{k+1}(\cos\theta+\mathrm{i}\sin\theta)^{k+1}=r^{k+1}(\cos\theta+\mathrm{i}\sin\theta)^{k}(\cos\theta+\mathrm{i}\sin\theta)\)
ですがここで仮定の式を使って、
\(r^{k+1}(\cos\theta+\mathrm{i}\sin\theta)^{k}(\cos\theta+\mathrm{i}\sin\theta)=r^{k+1}(\cos k\theta+\mathrm{i}\sin k\theta)(\cos\theta+\mathrm{i}\sin\theta)\)
とできます。後ろの三角関数の掛け算を普通に展開すると、
\((\cos k\theta+\mathrm{i}\sin k\theta)(\cos\theta+\mathrm{i}\sin\theta)=\cos k\theta \cos\theta -\sin k\theta \sin\theta+\mathrm{i}\sin k\theta \cos\theta +\mathrm{i}\cos k\theta \sin\theta\)
\(=(\cos k\theta \cos\theta -\sin k\theta \sin\theta)+\mathrm{i}(\sin k\theta \cos\theta +\cos k\theta \sin\theta)\)
ですが、これは実は加法定理の逆になっていて、
\(\cos k\theta \cos\theta -\sin k\theta \sin\theta=\cos (k+1)\theta\)
\(\sin k\theta \cos\theta +\cos k\theta \sin\theta=\sin (k+1)\theta\)
です。右辺が左辺になることを確認できれば納得できるはずです。ですから最終的に
\(z^{k+1}=r^{k+1}(\cos (k+1)\theta +\mathrm{i}\sin (k+1)\theta)\)
です。よって \(n=k+1\) で成り立つことがわかったので帰納的に定理を証明することができました。
本当に成り立っているのか2乗あたりで確認してみましょうか。計算してみると
\(z^2=r^2(\cos\theta+\mathrm{i}\sin\theta)^2=r^2(\cos^2\theta+2\mathrm{i}\sin\theta\cos\theta -\sin^2\theta)\)
となりますがここで2倍角の公式
\(\cos 2\theta=cos^2\theta -\sin^2\theta\)
\(\sin 2\theta=2\sin\theta\cos\theta\)
を思い出せば
\(z^2=r^2(\cos 2\theta+\mathrm{i}\sin 2\theta)\)
とできますのでちゃんとド・モアブルの定理が成り立っているのがわかります。ドモアブルの定理が少し信頼できるのではないでしょうか。
証明がわかればあとはたくさん使ってあげるのが定理にとって嬉しいものです。使いこなして武器にしてあげてください。
まとめ
ドモアブルの定理は複素数平面で出てくる数少ない定理の1つです。複素数の計算を圧倒的に楽にしてくれる定理なのでしっかりおさえて使えるようにしましょう。
ではまた。
コメント
[…] ド・モアブルの定理の証明と意味を解説ド・モアブルの定理とは 数学Ⅲの複素数平面において重要な公式の1つが ド・モアブルの定理 です。これは何かというと簡単にいえば 複素数の […]