無限の数列→無限の数列の和へ
ここまで無限に続く数列の極限について考えてきました。無限大まで数列の項を考えた時に数列がどうなるかを考えるのが「数列の極限」でしたね。
数列の場合は「一般項」を求めてその極限をとってあげればその数列の極限を求めることになるのでした。
では数列の和を無限に続けていった場合はどうなるのでしょうか。
つまり数列の「項」がどうなるのかではなく「和」がどうなっていくかを考えたいのです。これを無限級数と言います。
例えば
\(\frac{1}{1\cdot 2}\ ,\ \frac{1}{2\cdot 3}\ ,\ \frac{1}{3\cdot 4}\ ,\ \cdots\)
は数列です。この数列の一般項はすぐに出せますね。もちろん \(n\) 番目の項は
\(\frac{1}{n(n+1)}\)
と表されます。部分分数分解を使えばさらに
\(\frac{1}{n(n+1)}=\frac{1}{n}-\frac{1}{n+1}\)
ですよね。数学Bでやったはずです。もしわからない人は一旦数学Bの部分分数分解の解説記事へGO。
話を戻します。一般項がわかっているのでこの数列の極限をとってやると、前回までの知識を使えば
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n(n+1)}=\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n^2+n}=\frac{1}{\infty}=0\)
もしくは部分分数分解をした方の一般項を用いても
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\frac{1}{n}-\frac{1}{n+1}\right)=\frac{1}{\infty}-\frac{1}{\infty}=0-0=0\)
となります。つまりこの数列は「 \(\infty\) 番目」まで数列を考えると \(0\) になるということです。もっと言えばこの数列はだんだんと \(0\) に近づいていく数列であるとも言えます。
ではこの数列の「和」はどうなるでしょうか。例えば10項目ぐらいまで和をとると、部分分数分解したものを使えば
\(\frac{1}{1\cdot 2}+\frac{1}{2\cdot 3}+\frac{1}{3\cdot 4}+\cdots +\frac{1}{10\cdot 11}=\left(\frac{1}{1}-\frac{1}{2}\right)+\left(\frac{1}{2}-\frac{1}{3}\right)+\left(\frac{1}{3}-\frac{1}{4}\right)+\cdots +\left(\frac{1}{10}-\frac{1}{11}\right)=1-\frac{1}{11}=\frac{10}{11}\)
ですね。部分分数でしたから隣同士がどんどん消えて簡単に計算できます。
ではこの和を無限に続けていったら結局値はどうなるのでしょうか。つまり
\(\frac{1}{1\cdot 2}+\frac{1}{2\cdot 3}+\frac{1}{3\cdot 4}+\cdots +\frac{1}{n(n+1)}+\cdots \)
を計算すると最終的な計算結果はどうなるのかを知りたいわけです。これが無限級数です。さてどうしましょうか。無限に続く数列の和なんて求めたことがありません。
直感的にはどうでしょう。何に近づくと思いますか。
少し考えてみます。この部分分数では無限に足していったとしても隣同士が消えてくれるはずなのでなんとなく一番最初の
\(\frac{1}{1}\)
と無限まで考えた時の最後の項、つまり
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n(n+1)}\)
の無限大を入れて計算した値が残りそうですよね。最後の項は先ほども確認しましたが極限計算によって
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n(n+1)}=0\)
でしたから、無限に足していった時の答えは
\(\frac{1}{1\cdot 2}+\frac{1}{2\cdot 3}+\frac{1}{3\cdot 4}+\cdots +\frac{1}{n(n+1)}+\cdots =\frac{1}{1}-0=1\)
となりそうです。納得できましたか。うーんと思った人。それでいいんです。ひとまず次に進んでみてください。
いったん広告の時間です。
無限級数は部分和で考えることにしよう
さて、「部分分数分解できる数列を無限に足す」という計算ができたわけですが、全くもって一般的ではありません。ましてや本当にこんな計算でいいのかと思うぐらいですね。
ただ極限の最初で話した気がしますが、高校数学において極限は非常に曖昧な説明しかできません。数学において極限は非常に重要で難しい概念であり、高校数学の範囲ではこうするしかないというのが現状です。
ですからここから先の話もなんか騙されたような気がするかもしれませんがひとまず受け入れてみてください。もし疑問に思った人は自分で極限の本を買って読むのもいいかもしれません。私なりのおすすめも今度紹介しようかと思います。
話を戻しましょう。「無限級数を考える際にどうするか」なのですが、こう考えてみましょう。
①無限に足すのは無理だから一旦 \(n\) 番目まで足しておいて、
②そのあとその \(n\) を無限大にする極限をとって
③その計算結果を無限級数の和ということにしよう
つまり
「一旦有限の範囲で和を出しておいて、そのあと無限に飛ばしてしまえ」
と言っているのです。うーん、本当にそんなことしていいのか・・・それは本当に無限に足した答えになるのか・・・疑問は尽きないですね。
非常に大事な疑問なのですが、現状これの答えを示すことは難しいので一旦鵜呑みにすることにしましょう。
つまり無限級数を考える時は一旦 \(n\) 番目まで和をとってしまってから極限を考えることにするのです。この \(n\) 番目までの和のことを部分和と呼ぶことにします。無限に続く和の途中、つまり部分的な和だから部分和です。
先ほどの問題だと、部分和は
\(\frac{1}{1\cdot 2}+\frac{1}{2\cdot 3}+\frac{1}{3\cdot 4}+\cdots +\frac{1}{n(n+1)}\)
これです。まずはこの和を計算してしまえ、というわけです。これは数学Bでやりましたし、先ほど出てきた通り
\(\frac{1}{1\cdot 2}+\frac{1}{2\cdot 3}+\frac{1}{3\cdot 4}+\cdots +\frac{1}{n(n+1)}=\left(\frac{1}{1}-\frac{1}{2}\right)+\left(\frac{1}{2}-\frac{1}{3}\right)+\cdots +\left(\frac{1}{n}-\frac{1}{n+1}\right)=1-\frac{1}{n+1}\)
ですね。この \(n\) の無限大の極限を考えた計算結果が無限級数
\(\frac{1}{1\cdot 2}+\frac{1}{2\cdot 3}+\frac{1}{3\cdot 4}+\cdots +\frac{1}{n(n+1)}+\cdots \)
の和である、と結論づけるわけです。実際に計算してみると
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(1-\frac{1}{n(n+1)}\right)=1-\frac{1}{\infty}=1-0=1\)
で確かに無限に足したらこうなりそうという予想と一致しました。
このように無限級数は部分和の極限によって定義されています。まずはこの事実を受け入れ、色々な計算をすることが重要です。
ふんわりとした終わりになってしまいますが、次の記事では練習問題を通して無限級数を考えていくことにしましょう。
まとめ
無限級数という新たな極限を考える時がきました。しかしながら、やはりというか極限は曖昧ですね。本当に騙された気がしてなりません。ですが何度もいうように極限は数学において非常に重要な概念であり、証明されている操作です。まずは無限級数の扱いに慣れることが一番でしょう。計算自体は今までの考え方と全く変わりませんが、数列の和の知識が必要になってくるので忘れていそうな人は復習をお勧めします。
ではまた。
コメント