無限等比数列とは
無限数列についてこれまで考えてきましたが、その中で特に取り上げられるのは、無限に続く「等比数列」である
無限等比数列
です。この数列の極限は少し考えなくてはいけない部分があります。色々見ながら考えていくことにしましょう。
形自体は難しくありません。等比数列が無限に続いただけです。初項を \(a\) 公比を \(r\) とすると
\(a\ ,\ ar\ ,\ ar^2\ ,\ \cdots\ ,\ ar^{n-1}\ ,\ \cdots\)
これが無限等比級数です。今考えたいのはこの数列の極限、すなわち
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}ar^{n-1}\)
を計算することが目標です。なんとなく無限まで数列を考えるとものすごく値は大きくなりそうですが、指数関数などの話を覚えている人はそうじゃないことがわかるはずです。その辺りを踏まえながらこの後解説していこうと思います。
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無限等比数列の極限はなにをもって決まるのか
次の無限等比数列を考えてみましょう。
\(3\ ,\ 6\ ,\ 12\ ,\ \cdots\ ,\ 3\cdot 2^{n-1}\ ,\ \cdots\)
見てわかる通りこの無限等比数列は、初項が \(3\) 公比が \(2\) ですね。この数列は無限の極限を考えたらどうなるでしょうか。つまり
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}3\cdot 2^{n-1}\)
これを考えます。これは元はというと数列が最終的にどんな値に近づいていくかを考えればよかったのでした。
数列を見てわかる通り、項が進むにつれて値はどんどん大きくなっていきますね。
ですので極限は
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}3\cdot 2^{n-1}=\infty\)
となり、発散するでしょう。これは皆さん納得できますかね。ではこんな無限等比数列はどうでしょうか。
\(2\ ,\ 1\ ,\ \frac{1}{2}\ ,\ \cdots\ ,\ 2\cdot \left(\frac{1}{2}\right)^{n-1}\ ,\ \cdots\)
先ほどとは異なる等比数列です。初項は \(2\) 公比は \(\frac{1}{2}\) ですね。ではこの無限等比数列の極限はどうなりそうでしょうか。
これは項が進んでも大きくなっているどころか逆に小さくなっていきますね。
最終的にこの数列では項はどんどん小さくなり \(0\) に近づいていくので
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}2\cdot \left(\frac{1}{2}\right)^{n-1}=0\)
となりそうですね。この差はどこで現れているか、もうお分かりですね。
そうです。公比です。無限等比数列の極限はこの公比によって決まります。
なぜならどんどんと累乗を繰り返していくので
公比が大きい = 累乗するとどんどん大きくなる → 極限は無限大に
公比が小さい = 累乗するとどんどん小さくなる → 極限は \(0\) に
ただしこの「大きい」「小さい」はどこが境目なのでしょうか。小さいといっても「マイナス」はどうなのか・・・
このあたりをしっかりと考えていきます。
先ほどの2つの例を考えてみると、極限が無限になるか、\(0\) になるかは
公比が \(1\) より大きいか小さいか
で考えれば良さそうです。もし公比がちょうど \(1\) なら全く値が変わらない数列になりますよね。
\(2\ ,\ 2\ ,\ 2\ ,\ \cdots\ ,\ 2\cdot 1^{n-1}\ ,\ \cdots\)
\(1\) を何乗したって \(1\) ですから。
ちなみにこの時はずーっと初項が続くので極限をとったら当たり前ですが、
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}2\cdot 1^{n-1}=\lim_{n\to\infty}2=2\)
です。
話を戻します。数列がどんどんと項数を重ねるにつれて大きくなるためには、公比が \(1\) より少しでも大きくないといけません。そうすれば累乗をとったときにどんどん値は大きくなります。
逆に小さくなるためには \(1\) より少しでも小さければよいです。累乗をどんどんしていくと小さくなりますね。
「初項」に関しては全く関係ないです。なぜなら、結局公比がどんどんとかけられていくわけですから、最終的に初項が何であれとても大きくなる or 小さくなっていきます。そして極限は 無限大 or \(0\) になるのです。
ここまでをまとめると
無限等比数列の極限は 初項を \(a\) 公比を \(r\) をすると
\(r=1\) の時
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a\cdot 1^{n-1}=\lim_{n\to\infty}a=a\)
\(r>1\) の時
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a\cdot r^{n-1}=\infty\)
\(r<1\) の時
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a\cdot r^{n-1}=0\)
である。
と結論づけられますね。
ただし公比が小さいと言ってもマイナスはどうなのでしょうか。
公比がマイナスの無限等比数列を考えると、例えば
\(2\ ,\ -6\ ,\ 18\ ,\ \cdots\ ,\ 2\cdot (-3)^{n-1}\ ,\ \cdots\)
などが考えられますね。これは極限を考えるとどうなるでしょうか。
見てわかる通りこの数列は「大きく」はなっていますがプラスとマイナスを行ったり来たりしています。つまり
無限大には近づいていくが、プラスかマイナスかわからない
という状況になってしまうわけです。このような時私たちは極限をどう呼ぶのだったかというと
振動する
と呼ぶのでした。つまり式で書くと
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}2\cdot (-3)^{n-1}=\) 振動する
として極限としての値は決められないのです。
ただし一つ注意があります。公比がマイナスの全ての無限等比数列が振動するか、というとそうでもありません。
例えばこんな数列。
\(2\ ,\ -1\ ,\ \frac{1}{2}\ ,\ \cdots\ ,\ 2\cdot \left(-\frac{1}{2}\right)^{n-1}\ ,\ \cdots\)
これだとプラスマイナスを取りつつも、どんどんと「小さく」なっていますよね。最終的にものすごく小さくなって \(0\) に近づきそうです。
これは最初の議論を思い出せばやはり
公比が \(-1\) より大きいか小さいか
が境目となりそうですね。 公比が \(-2\) だと振動してしまいますが、 \(-\frac{1}{3}\) だと振動しつつも小さくなって \(0\) に近づいていきます。
もちろん公比が \(-1\) の場合は値は変化せずともプラスマイナスを取り続けるので「振動」します。
これらも踏まえてもう一度まとめなおすと次のようにかけます。
無限等比数列の極限は 初項を \(a\) 公比を \(r\) をすると
\(r=1\) の時
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a\cdot 1^{n-1}=\lim_{n\to\infty}a=a\)
\(r>1\) の時
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a\cdot r^{n-1}=\infty\)
\(-1<r<1\) の時
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a\cdot r^{n-1}=0\)
\(r=-1\) の時
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a\cdot r^{n-1}=\) 振動する
\(r<-1\) の時
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a\cdot r^{n-1}=\) 振動する
である。
これで公比がなんであっても極限がどうなるかが言えるようになりました。結局は数列がどうなるかなので、少し書いてみるとイメージがつきやすいです。
まとめ
無限等比数列について解説をしました。厳密ではありませんが結局のところ極限がどうなるかを聞かれるのでこのイメージを持っていないとすぐに計算ができません。振動などの厄介な極限を避けるなんてこともこれからしなくてはなりません。どんな形に持っていけばいいかの一つの指針が示されたわけですね。次回は実際の問題で計算をしてみましょう。
ではまた。
コメント
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