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商の微分 公式と証明 覚え方も

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こんにちは。 da Vinch (@mathsouko_vinch)です。

この記事のトピックは「微分係数と微分可能性の関係」です。

 

商の微分公式とは

数学Ⅲの微分をやる時に避けては通れない微分公式の一つ。それが商の微分公式です。

なぜならこの微分公式を知らないと、三角関数や指数対数関数を微分できても問題は解けないからです。

基本の微分はみんな覚えます。でもその微分を行う時に必要な知識が足りないために微分を進められないのです。

「これは分数だから、商の微分を使おう」とか、「これは掛け算の形になっているから、積の微分を使わねば」、「これは合成関数だな、気をつけないと」といった考え方が必要になってくるのです。

積の微分と、合成関数についてはこちらで解説してます。

合成関数の微分公式と考え方
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積の微分 公式と証明 覚え方も
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つまり三角関数それ自身を微分できるだけでは意味がないのです。その前にこの商の微分と言った微分公式が必要になります。

ですからこれから微分をするときは一度立ち止まって、どんな微分かなと考えてみてください。このステップを踏めるだけであなたの「微分力」は大きく上昇するはずです。

とまあ少し脇道にそれましたので、今回のメインの商の微分公式を説明しましょう。

商の微分公式はこんな公式です。

 

 

 

関数 \(f(x)\)、\(g(x)\) がともに微分可能であるとき

 

\(\displaystyle \left\{\frac{1}{g(x)}\right\}’ = -\frac{g’(x)}{\{g(x)\}^2}\)

 

\(\displaystyle \left\{\frac{f(x)}{g(x)}\right\}’ = \frac{f’(x)g(x)-f(x)g’(x)}{\{g(x)\}^2}\)

 

である。

 

 

まず大事なことは、今考えている関数は分数になっていることです。何かしらの関数 \(f(x)\)、\(g(x)\) はなんでもOK。三角関数でもいいし、 \(x^2+2x\) といったべき関数でも良いです。とにかく何かしらの関数が分数の形になっている状態からスタートです。

 

そういう関数を「微分する」場合は、単純に関数部分を微分するだけではダメ

 

ということをこの公式は表しています。もし \(\displaystyle \frac{1}{g(x)}\) の形になっているなら

 

マイナスをつけて分子に \(g(x)\) の微分、分母に\(g(x)\) の二乗

 

にするのです。微分は上に来るのですね。少し不思議ですが、気になる方はこの後証明をするのでそれで納得していただけると思います。

マイナスがつくことも注意です。意外と忘れがち。

また \(\displaystyle \frac{f(x)}{g(x)}\) の場合は

 

分子は「積の微分」のマイナスバージョン、分母はやっぱり \(g(x)\) の二乗

 

と覚えましょう。積の微分は覚えていますか?

 

微分して、そのまま。足すことの、そのままにして微分

 

でしたよね。もう一度参考記事を貼っておきます。

 

積の微分 公式と証明 覚え方も
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商の微分の場合は足し算ではなく引き算になることがポイントです。少し覚えづらければ

 

上(分子のこと)微分して、下(分母のこと)そのまま。引き算で、上そのまま、下微分

 

なんていう風に言葉で覚えてから実際に計算練習をたくさんすると自然に身についてきます。

とりあえず公式の中身がわかったと思うので、とりあえず使ってみます。

 

例題

次の関数を微分せよ。

(1) \(\displaystyle y=\frac{1}{3x+2}\)

 

(2) \(\displaystyle y=\frac{4x}{x^2+5}\)

 

(1)から解いていきましょう。まず関数を見た時に「分数になっているな」と把握できるようにしておきましょう。(1)の場合は最初の方の公式と同じ形です。 \(g(x)\) が \(g(x)= 3x+2\) に対応していますね。

これがわかれば後は公式に当てはめて計算するだけ。マイナスを忘れずに。微分自体は簡単ですよね。

 

\(\displaystyle y’= \{\frac{1}{3x+2}\}’=-\frac{(3x+2)’}{(3x+2)^2}=-\frac{3}{(3x+2)^2}\)

 

これで終わりです。微分自体ができれば後は簡単ですよね。基本的に分母の二乗は展開しなくて良いことが多いです。展開しても簡単な式になりませんから。

(2)は2個目の公式と同じ形です。 \(f(x)=4x\)、\(g(x)= x^2+5\) に対応しています。これがわかればすぐに公式に代入しましょう。分母は積の微分と似ていました。分子は二乗でしたね。

 

\begin{eqnarray}y’&=& \{\frac{4x}{x^2+5}\}’ \\[5pt]&=&\frac{(4x)’\cdot(x^2+5)-(4x)\cdot(x^2+5)’}{(x^2+5)^2}\\[5pt]&=&\frac{4(x^2+5)-(4x)\cdot(2x)}{(x^2+5)^2}\\[5pt]&=&\frac{4x^2+20-8x^2}{(x^2+5)^2}\\[5pt]&=&\frac{-4x^2+20}{(x^2+5)^2}\end{eqnarray}

 

できましたでしょうか。公式に当てはめた後は微分をしてゴリゴリ計算を進めるだけですね。計算は面倒になることが多いですが、一つ一つ確実にやれば大丈夫です。慣れるまで何度も繰り返すと良いですよ。

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商の微分公式の証明

さて、ここまでなんの証明もなしに商の微分公式を使ってきましたが、何の根拠もなく公式を使うのは気持ちが良いものではないですね。一旦一休みということで証明をさっとやってしまいましょう。

実は積の微分公式を知っているとすぐにできてしまいます。そちらはすでに証明したので問題ないですね。

まずは最初の方の公式

 

\(\displaystyle \left\{\frac{1}{g(x)}\right\}’ = -\frac{g’(x)}{\{g(x)\}^2}\)

 

を証明します。とにかく微分の定義からスタートしますよ。

 

\(\displaystyle \left\{\frac{1}{g(x)}\right\}’ =\lim_{h\to 0}\frac{\frac{1}{g(x+h)}-\frac{1}{g(x)}}{h}\)

 

ちょっと見づらいですが、定義通りに当てはめました。これを後は通分して少し細工をしていきます。

 

\begin{eqnarray} \lim_{h\to 0}\frac{\frac{1}{g(x+h)}-\frac{1}{g(x)}}{h}&=& \lim_{h\to 0}\frac{1}{h}\left\{\frac{1}{g(x+h)}-\frac{1}{g(x)}\right\}\\[5pt]&=& \lim_{h\to 0}\frac{1}{h}\left\{\frac{g(x)-g(x+h)}{g(x+h)g(x)}\right\}\end{eqnarray}

 

わかりづらかったので \(\displaystyle \frac{1}{h}\) は前に出して、その後は通分しただけですね。ここで

 

\(\displaystyle \lim_{h\to 0} \frac{g(x+h)-g(x)}{h}=g’(x)\)

 

なのは微分の定義から明らかですから、これを作ってあげれば

 

\(\displaystyle \lim_{h\to 0}\frac{1}{h}\left\{\frac{g(x)-g(x+h)}{g(x+h)g(x)}\right\}= \lim_{h\to 0}\left\{-\frac{g(x+h)-g(x)}{h}\cdot \frac{1}{g(x+h)g(x)}\right\}\)

 

ですね。最初のマイナスはそのままだと定義通りにならないので無理やり合わせた時に出てきました。いらない部分は後ろにかけています。

後は極限を取るだけ。もちろん「微分可能」なら「連続」でしたので

 

\(\displaystyle \lim_{h\to 0}g(x+h)=g(x)\)

 

ですね。これを使えば

 

\(\displaystyle \lim_{h\to 0}\left\{-\frac{g(x+h)-g(x)}{h}\cdot \frac{1}{g(x+h)g(x)}\right\}=-g’(x)\cdot \frac{1}{g(x)g(x)}=-\frac{g’(x)}{\{g(x)\}^2}\)

 

より

 

\(\displaystyle \left\{\frac{1}{g(x)}\right\}’ = -\frac{g’(x)}{\{g(x)\}^2}\)

 

ですね。計算は案外簡単でしたね。

さて、このように\(\displaystyle \left\{\frac{1}{g(x)}\right\}’\) が計算できるようになったので、

 

\(\displaystyle \left\{\frac{f(x)}{g(x)}\right\}’ = \left\{f(x)\cdot \frac{1}{g(x)}\right\}’\)

 

と考えて積の微分と今求めた公式を使えばさくっと計算できそうですね。積の微分から

 

\(\displaystyle \left\{f(x)\cdot \frac{1}{g(x)}\right\}’=f’(x)\cdot \frac{1}{g(x)}+f(x)\cdot \left\{\frac{1}{g(x)}\right\}’\)

 

です。後は公式を使えば

 

\begin{eqnarray} f’(x)\cdot \frac{1}{g(x)}+f(x)\cdot \left\{\frac{1}{g(x)}\right\}’&=&f’(x)\cdot \frac{1}{g(x)}+f(x)\cdot \left\{-\frac{g’(x)}{\{g(x)\}^2}\right\}\\[5pt]&=&\frac{f’(x)}{g(x)}-\frac{f(x)g’(x)}{\{g(x)\}^2}\\[5pt]&=&\frac{f’(x)g(x)-f(x)g’(x)}{\{g(x)\}^2}\end{eqnarray}

 

最後は通分しただけですね。難しいことはありません。というわけで

 

\(\displaystyle \left\{\frac{f(x)}{g(x)}\right\}’ = \frac{f’(x)g(x)-f(x)g’(x)}{\{g(x)\}^2}\)

 

が証明できました。めでたしめでたし。

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実際に使ってみる

では最後に少し使ってみることにしましょう。一応合成関数の微分はこの後やる予定なのでそれは出てこないようにしますが、三角関数や指数対数関数の微分は問題に含まれますので、まだの方はできなくても大丈夫。勉強したらまた戻ってきてください。

もちろん最終的に全部合わせて問題演習記事を作る予定なので、そちらも合わせてやると勉強になるかと思います。

では問題を解いてみましょう。

問1

 

例題

次の関数を微分せよ。

\(\displaystyle y=\frac{1}{\sin x}\)

 

問題を見た時にまずは「商の微分だ」となる必要があります。関数が分数の形になっていますからね。後は公式に当てはめるだけです。

最初のうちはいきなり計算しようとせず、何を微分するのかを明確にすると良いですよ。こんな風に

 

\(\displaystyle y’=-\frac{(\sin x)’}{(\sin x)^2}\)

 

こうすれば後は「微分を行う」だけです。\(\sin \) の微分は \(\cos\) ですから

 

\(\displaystyle y’=-\frac{(\sin x)’}{(\sin x)^2}=-\frac{\cos x}{\sin^2 x}\)

 

ですね。かんたんかんたん。

問2

 

例題

次の関数を微分せよ。

\(\displaystyle y=\frac{\sin x}{\cos x}\)

 

これも同じですが、今回は分子が \(1\) ではないので気を付けましょう。商の微分はこうですね。

 

\(\displaystyle y’=\frac{(\sin x)’\cdot (\cos x)-(\sin x)\cdot (\cos x)’}{(\cos x)^2}\)

 

必ず微分をする前に確認しましょう。慣れてきたらこのステップは飛ばしてすぐに微分してOKです。計算すれば

 

\(\displaystyle y’=\frac{\cos x\cdot \cos x – \sin x\cdot (-\sin x)}{(\cos x)^2}=\frac{\cos^2 x+ \sin^2 x}{\cos^2 x}=\frac{1}{\cos^2 x}\)

 

これで終わりですね。これは俗にいう \(\tan x\) の微分です。商の微分を知らないと \(\tan x\) の微分はできないわけですね。

問3

 

例題

次の関数を微分せよ。

\(\displaystyle y=\frac{e^x}{x^2+2x}\)

 

指数関数が入っているだけで何ら難しいことはありません。まずは公式に当てはめます。

 

\(\displaystyle y’=\frac{(e^x)’\cdot (x^2+2x)-(e^x)\cdot (x^2+2x)’}{(x^2+2x)^2}\)

 

大丈夫ですね。もう慣れてきたでしょう。後は微分を実行するだけ。\((e^x)’=e^x\) という何とも嬉しい微分が入っていますね。らくらくです。

 

\(\displaystyle y’=\frac{e^x(x^2+2x)-e^x(2x+2)}{(x^2+2x)^2}=\frac{e^x(x^2+2x+2x+2)}{(x^2+2x)^2}=\frac{e^x(x^2+4x+2)}{(x^2+2x)^2}\)

 

2番目では \(e^x\) で括ってあげました。大抵の場合きれいになることはないので因数分解するのが得策です。

まとめ

今回は商の微分公式を学びました。基本的には二つの公式を使い分ける形になりますが、とにかく大事なことは使いどころを見極められるようになることです。後半の問題のように使える形が出てきた時に瞬時に思い出せるかがポイントですね。

いろいろな微分公式が出てきますが、これらを全て組み合わせることでどんな問題にも対応できるようになります。まずはその第一歩をこの公式で踏み出しましょう。

ではまた。

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コメント

  1. […] 商の微分 公式と証明 覚え方も   こんにちは。 da Vinch (@mathsouko_vinch)です。 この記事のトピックは「微分係数と微分可能性の関係」です。 商の微分公式とは 数学Ⅲの微分をやる時に避け […]

  2. ダンケ より:

    商の微分公式、誤記になってませんか?分母がg'(x) の2乗になっていますが、g(x)の2乗(微分しない)が正だと思います。

    • da Vinch da Vinch より:

      ご指摘のコメントありがとうございます!

      確認しましたところ、確かにご指摘の通り微分の記号が入ってしまっておりました。混乱させてしまい申し訳ございません・・・!
      修正させていただきました!

      このようなご指摘大変助かります。引き続き気になるところなどございましたらお気軽にコメントいただけますと幸いです!

      引き続き当サイトをどうぞよろしくお願いいたします!

      da Vinch