少し難しい極限計算をできるようになる
前回の〜その1〜に引き続き、ここでは例題を示しながら計算の方針とその方法について解説していきます。もし前回の記事を見ていない人がいればぜひ下記リンクからご参照ください。
〜その2〜では少し難しいと思われる極限計算の問題をやってみます。一応予定としては〜その3〜までシリーズとしては作成することになりそうです。お楽しみ(?)に。
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少し計算が必要な分数式の極限計算
難しいかと言われるとそうではないかもしれませんが、パッと出てきた時に「ん?」と思うかもしれない問題をやっておきましょう。
一つ目はこんな問題
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{n(3n+2)}{(n+2)(2n-1)}\)
一見やったことのない形に見えますが、私たちは分数式であれば必ず解けるはずです。なぜなら今までやってできたから。
今までの形じゃないならその形に頑張って持っていきましょう。数学で学んだ基礎はそうやって使っていきます。
やることはただ一つ。展開ですね。
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{n(3n+2)}{(n+2)(2n-1)}=\lim_{n\to\infty}\frac{3n^2+2n}{2n^2+3n-2}\)
こうすればもういつも通りの形です。常に「どうしたら解ける形になるか」を意識しましょう。
あとは \(n^2\) で割るだけですね。
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\lim_{n\to\infty}\frac{3n^2+2n}{2n^2+3n-2}=\lim_{n\to\infty}\frac{3+\frac{2}{n}}{2+\frac{3}{n}-\frac{2}{n^2}}=\frac{3+0}{2+0-0}=\frac{3}{2}\)
で極限が計算でできました。パターンではありますが頭の中には基礎の形を残しておいてくださいね。
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ルートの時は何で割る?ルートが入った極限計算のちょっとした応用
同じようにルートの極限でも今までの基礎が複合した問題が出題される時があります。2つ目としてみていきましょう。
もちろん最初にやることは大丈夫ですね。形としては「引き算の不定形」ですのでそのままではダメ。分子の有理化でこの状況を打開しましょう。
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}(\sqrt{n^2+n}-n)=\lim_{n\to\infty}\frac{(\sqrt{n^2+n}-n)(\sqrt{n^2+n}+n)}{\sqrt{n^2+n}+n}=\lim_{n\to\infty}\frac{n^2+n-n^2}{\sqrt{n^2+n}+n}=\lim_{n\to\infty}\frac{n}{\sqrt{n^2+n}+n}\)
ここまでは来れるはず。このあとどうするかですね。
もちろんこのまま極限を取っても割り算の不定形で計算不能です。ここからもう一つ変形を施さなくてはなりません。
さて、私たちが知っている変形といえば・・・そうですね、先ほどやった分数式での変形です。これしかありません。
見返してみると確かに式は
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{n}{\sqrt{n^2+n}+n}\)
となっていて分数式になっています。今までと違うところはルートが入っているところですね。
やりたいこととしてはやはり \(\frac{1}{n}\) などの形を作ることですから \(n\) が入った式で割りたいところです。
では何で割ればいいでしょうか。なんとなく \(n^2\) が見えるのでこれで割りたくなりますが、実は違います。なぜなら
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{n}{\sqrt{n^2+n}+n}=\lim_{n\to\infty}\frac{\frac{n}{n^2}}{\frac{1}{n^2}\sqrt{n^2+n}+\frac{n}{n^2}}\)
ですが分母は
\(\frac{1}{n^2}\sqrt{n^2+n}=\sqrt{\frac{1}{n^4}(n^2+n)}\)
となりますよね。ルートの中に入れる時は二乗していれなくてはなりませんから。つまり
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{\frac{n}{n^2}}{\sqrt{\frac{n^2}{n^4}+\frac{n}{n^4}}+\frac{n}{n^2}}\)
となってしまい計算すると
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{\frac{1}{n}}{\sqrt{\frac{1}{n^2}+\frac{1}{n^3}}+\frac{1}{n}}=\frac{0}{\sqrt{0+0}+0}\)
で結局不定形です。つまりルートの中を見越して割る数を見なくてはなりません。
では何で割るか。そうです \(n\) ですね。
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{n}{\sqrt{n^2+n}+n}=\lim_{n\to\infty}\frac{\frac{1}{n}}{\sqrt{\frac{n^2}{n^2}+\frac{n}{n^2}}+\frac{n}{n}}\)
なので
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{1}{\sqrt{1+\frac{1}{n}}+1}\)
となります。これで極限をとれば
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{1}{\sqrt{1+\frac{1}{n}}+1}=\frac{1}{\sqrt{1+0}+1}=\frac{1}{2}\)
で計算ができました。ルートがある場合は割る数に注意しなくてはならないことを頭に入れておきましょう。
まとめ
極限計算は常に基礎が大事です。ゴールにあるのは不定形をなくすこと。頭でじっくり考えてなぜこんな計算するのかをどんどん吸収して自分で他の問題も計算できるようにしておきましょう。
ではまた。
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