円と直線の関係は何で決まるか
座標平面に円と直線がある場合、私たちは3つの状況を考えることができます。
それは
① 円と直線が2点で交わる
② 円と直線が接する(1点で交わる)
③ 円と直線が共有点を持たない(交わらない)
ですね。ではこれらを式で扱うとしたらどのようにしたら良いでしょうか。私たちの目的は何度も言うように「視覚的な情報」を「式」に落とし込むことですからね。
一番最初に思いつくのは
交点 = 片方をもう片方に代入してできる方程式の解
ですから、とにかく「連立して方程式を解いてしまう」ことですね。
その方程式の答えが交点の座標ですから、それがすなわち交点の個数になるわけです。
例えば
こんな問題は皆さんすぐに\(y=x+2\) を円の方程式に代入して
\(x^2+(x+2)^2=25\)
として、\(x\) を求めようとしますよね。実際に求めると
\begin{eqnarray}x^2+x^2+4x+4-25&=&0\\[5pt]2x^2+4x-21&=&0\end{eqnarray}
より
\begin{eqnarray}x&=&\frac{-2\pm\sqrt{4+42}}{2}\\[5pt]x&=&\frac{-2\pm\sqrt{46}}{2}\end{eqnarray}
となります。解の公式を使うしかなかったので少し面倒でしたね。 \(y\) 座標は直線の式を使えば
\(\displaystyle y= \frac{-2\pm\sqrt{46}}{2}+2= \frac{2\pm\sqrt{46}}{2}\)
となるので結局交点の座標は
\(\displaystyle\left(\frac{-2+\sqrt{46}}{2}, \frac{2+\sqrt{46}}{2}\right)\), \(\displaystyle\left(\frac{-2-\sqrt{46}}{2}, \frac{2-\sqrt{46}}{2}\right)\)
となるわけです。ここからこの円と直線は2つの交点を持つことがわかります。
ですがいつもこんなことをしていたのでは大変です。特に「共有点の座標はいらないけど位置関係だけ知りたい・・・」と言うときにはとても不便です。
どうしたら良いでしょう。
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交点の座標を求めないで位置関係を求める 判別式の利用
ここで一度、先ほど共有点を求めるときに円の方程式に直線の式を代入したのは何故だったか思い出してみましょう。
それは
共有点の座標を求めるため
でした。と言うことは円の方程式に直線を入れてできた式は答えが共有点の座標なのですよね。
じゃあこれを逆手にとってやりましょう。答えはいらないけど解があるかないかだけ判断できれば良いではないですか。
できますよね。そうです。
判別式
です。結局解くのは二次方程式になるのですから、「解があるかないか」だけを判断できれば良いのであれば、解く必要なありません。判別式を用いて確認してしまえば良いのです。
円の方程式に直線を入れてできた方程式の解(以下,二次方程式と呼びます) = 共有点の座標
でしたので、つまりは
二次方程式の解が2個 = 共有点の座標が 2個 = 円と直線は交点を2つ持つ
二次方程式の解が1個 = 共有点の座標が 1個 = 円と直線は交点を1つ持つ(接する)
二次方程式の解が0個 = 共有点の座標が 0個 = 円と直線は交点を持たない
となりますね。じゃあこうできます。
二次方程式の解が2個 = 判別式 \(D>0\) = 共有点の座標が 2個 = 円と直線は交点を2つ持つ
二次方程式の解が1個 = 判別式 \(D=0\) = 共有点の座標が 1個 = 円と直線は交点を1つ持つ
二次方程式の解が0個 = 判別式 \(D<0\) = 共有点の座標が 0個 = 円と直線は交点を持たない
解の個数は判別式で確認できますからね。こうすれば二次方程式を解かずして共有点の個数を考えることができます。
先ほどの問題だと
\(2x^2+4x-21=0\)
を解かなくても判別式を考えれば共有点の個数はわかるということです。
実際に判別式を考えると
\(D=4^2-4\cdot 2\cdot (-21)=16+168=184>0\)
ですからすぐに共有点は2個あるなとわかるのです。
全然難しいことはしていません。単純に解の個数を調べるだけで共有点の個数を求められるので、そこで判別式を利用しただけですね。
教科書に書いてある風にまとめると
判別式 \(D>0\) = 円と直線は交点を2つ持つ
判別式 \(D=0\) = 円と直線は交点を1つ持つ
判別式 \(D<0\) = 円と直線は交点を持たない
こうですね。成り立ちさえわかれば覚えなくてもわかってしまいます。
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判別式もいらない?点と直線の距離の公式で位置関係を判断
じゃあこれで一件落着・・・と思いたいですがちょっと待ってください。
これではせっかくこれまで学んできたことをさっぱり使ってないではありませんか。
実はもう一つ円と直線の関係性を考える有益な方法があります。
それは
点と直線の距離を使う方法
です。どうやって?と思いますよね。実は頭の良い方法があるのです。
点と直線の距離と言われると、「直線はわかるが点は・・・?」と言いたくなりますが、どの距離を考えるかというと
円の中心と直線の距離を考える
のです。感のいい人はお気づきでしょう。そうです。この距離と
円の半径
を比べるのです。どういうことか。図を見ればすぐにわかります。
これは直線と円が2点で交わっていますが、このとき
円の中心と直線の距離 \(d\) と 半径 \(r\)
はどんな関係になっていますか。そうですね。明らかに半径のほうが大きくなります。ですから
円と直線が2点で交わる => 「円の中心と直線の距離 \(d\)」 \(<\) 「半径 \(r\)」
の時なのです。同じように考えれば
これは1点で交わる状況ですが、まさしくこの場合は
円と直線が1点で交わる(接する) => 「円の中心と直線の距離 \(d\)」 \(=\) 「半径 \(r\)」
ですよね。もうお分かりでしょう。共有点を持たない場合は
円と直線が交わらない => 「円の中心と直線の距離 \(d\)」 \(>\) 「半径 \(r\)」
なのです。これを使えばもっと簡単に共有点の個数を判断できます。
先ほどの問題を考えてみましょう。
円 \(x^2+y^2=25\) と直線 \(y=x+2\) の共有点の個数を求めよ
この円は原点が中心なので \((0,0)\) が考える点になりますね。
直線の方は
\(y=x+2\) => \(x-y+2=0\)
と変形しておきましょう。そうすれば円の中心と直線の距離は
\(\displaystyle d=\frac{|0-0+2|}{\sqrt{1^2+1^2}}=\frac{2}{\sqrt{2}}=\frac{2\sqrt{2}}{2}=\sqrt{2}\)
となります。円の半径は
\(r=5\)
ですからもちろん
「円の中心と直線の距離」 \(\sqrt{2}\) \(<\) 「半径」 \(5\)
ですね。ですから共有点は2個であることがわかります。
イメージを持っていると簡単に考えられますね。最後にまとめて終わりにしましょう。
円と直線が2点で交わる => 「円の中心と直線の距離」\(<\) 「半径」
円と直線が1点で交わる(接する) => 「円の中心と直線の距離」\(=\) 「半径」
円と直線が共有点を持たない => 「円の中心と直線の距離」\(>\) 「半径」
まとめ
円と直線の関係性は一通りの考え方だけでは解ける問題の範囲が狭まってしまいます。どれも重要な考え方ですが、大変便利なのは最後の点と直線の距離を用いる方法です。視覚的に考えることができるのでイメージもしやすいですね。例を通してその簡単さを実感していただけたかと思います。
ではまた。
コメント
円と直線の関係を視覚的にだけではなく式としても理解することができました。代数が幾何を飲み込んでしまう感じですね。
いつもいつも細かいところで申し訳ないのですが、例題の最後の「円の中心から直線までの距離」と「円の半径」の不等式は
5<√2ではなく、√2<5ではないでしょうか。
どの記事も公式や問題の答えを導くまでの思考過程が詳しく書かれていて助かっています。
数学Ⅲの更新待ってます!
たくさんのコメントありがとうございます。大変助かります。
ご指摘いただいたところを訂正いたしました。お手数をおかけしています。
そのように言っていただけて本当に原動力となります。新しい記事にもかかわらずすぐに見ていただいていること大変嬉しいです。
数学Ⅲももう少しで始められそうなので一刻も早くお届けできるように頑張ります!
da Vinch