直線という図形を式で表す
前回までは座標平面で「点」を扱ってきましたが、ここからは「直線」について考えてみましょう。
なぜ直線を扱うかというと、三角形・四角形などの図形は直線(線分)でできていますよね。ですから直線を扱えることはつまり、座標平面でそのような図形を扱えることに対応します。
ですので直線が如何にしてできているかを考え、そしてそれらの性質を見ていくことは非常に重要なのです。
ということでまずは中学校の範囲の復習からやってみましょう。実は直線を表す式はすでに学んでいます。
座標平面上で直線を表す式は次のような関数の形になります。
\(y=ax+b\)
馴染みがある人が多いでしょう。まさに直線の式と呼ばれているものですね。
この直線において \(a\) は「傾き」\(b\) は「切片」でした。
傾きはまさしくこの直線の傾き具合を表します。例えば \(y=x\)、\(y=2x\)、\(y=3x\) という関数を座標平面上に書くと
このように \(a\) の値が大きいほど右上がりの直線の傾き具合が急になります。
またマイナスの場合は
のように \(a\) の値が小さくなるほど右下がりに直線の傾きが急になっていきます。
一方で切片 \(b\) は何かというと、
\(y\) 軸との交点の \(y\) 座標
ですね。例えば \(y=2x+2\) というグラフは
のようになります。見て分かる通り、この直線は \(y\) 軸と \((0,2)\) という座標で交点を持ちますね。これが切片の意味です。
ですから私たちは傾きと切片の情報さえあれば基本的に直線の式をイメージできます。
つまり \(y=-2x+3\) なんていう関数が与えられれば、この直線は座標平面上で
傾きが\(-2\) だから右下がり、切片が \(3\) だから \((0,3)\) と通るな
とイメージができて、実際に
とかけますよね。これで直線はひとまずかけてしまいますね。
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よく知っている形 \(y=ax+b\) から離れてみる 直線の方程式の一般形
じゃあこの分野の直線パートは終わり・・・と言いたいところですが、実はそうではありません。正直なところ直線の方程式がかけてしまうのでこれで良いのですが、今後出てくる公式や応用を考えるとこのままだと不便なことがあります。
もちろんこれまでの知識があれば問題は解けるでしょうが、数学は「如何に速く・効率的に、そして無駄なく解けるか」が受験では重要になりますし、数学という学問において
同じ内容を多角的な視点で見る
というのは数学を学ぶ上で非常に重要なことですから、これから学ぶ直線の方程式についての話はしっかりと理解しておくべきです。
さて、前置きが長くなりましたので先に進むとしましょう。
実は以下のような形の式が出てくればそれは全て直線を表す式になります。
\(ax+by+c=0\)
ここで \(a,b,c\) は定数で \(a\neq 0\) または \(b\neq 0\) です。
そして最大の注意はこの \(a\) と \(b\) は 傾きや切片を表していません。あくまで定数です。気をつけてください。
私たちはこれからこの式の形のことを
直線の方程式
と呼ぶことにします。直線を表す方程式だからです。単純ですね。
さて、直線の方程式と言うからにはこの式が直線を表しているはずなのですが、本当にそうなのでしょうか。
それを確かめたければ、私たちが知っている直線の式の形にしてしまえばいいですね。
例えば \(6x+2y+4=0\) という方程式があった時、これは本当に直線なのでしょうか。
私たちが知っている形は \(y=\) の形なので変形してみることにします。
\begin{eqnarray} 6x+2y+4&=&0\\2y&=&-6x-4\\y&=&-3x-2\end{eqnarray}
と確かに先ほど確認した直線の式になったではありませんか。傾きが \(-3\) 、切片が \(-2\) なので
このような直線ですね。ですから \(y=\) の形になっていなくてもあくまで
\(ax+by+c=0\)
\(a,b,c\) は定数で \(a\neq 0\) または \(b\neq 0\)
という式の形であればこれは直線を表す式だ!!と言えるわけです。もちろん図示する時は傾きと切片が必要ですから変形が必要ですが。
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直線の方程式の求め方(傾きと1点)
じゃあこれで直線は完璧・・・と言いたいところですが、もう少し学ぶべきことがあります。
なぜかというと私たちは
直線の式を与えられればそれを書ける
のですが、逆に
ある情報から直線の式を求める
ことはしていません。もちろん一番最初に学んだ \(y=ax+b\) という傾きと切片が分かる形から求めることもできますが、もっと効率的に、そして色々なパターンに対処できるようになっておくのが得策です。
例えばこんな問題があったとしましょう。
中学校の範囲でもやったような問題ですね。もちろんこの問題は \(y=ax+b\) という式を仮定して解くことができます。傾きが与えられていますから、
\(y=3x+b\)
までわかります。後はこの直線は 点\((2,-4)\) を通りますから、代入すれば成り立たなければいけないので、
\(-4=3\cdot 2+b\)
より
\(b=-4-6=-10\)
となり結局求める直線の方程式は
\(y=3x-10\)
とわかります。これで良い感じがしますよね。もちろん間違ってはいません。
ただこの問題はもっと簡単に一発で求めることができます。そしてこの方法は応用面でもとても万能です。
どういうやり方かというと、実は「傾き」と「通る一点」を与えられている時には次のようにすれば一発で求める直線の方程式が求まります。
傾きを \(m\) 、通る一点を \((x_{1}, y_{1})\) とすると、直線の方程式は
\(y-y_{1}=m(x-x_{1})\)
となる。
何が何やら・・・という感じですが、実は難しいことはしていません。
傾きがわかっているので \(y=mx\) というところまでは確定しています。その \(x\) と \(y\) を
\(x\rightarrow x-x_{1}\)
\(y\rightarrow y-y_{1}\)
に変えただけです。実はそうするだけで傾きと通る一点から直線の方程式が求められてしまうのです。
本当か・・・?と思いますよね。実際に計算してみましょう。
今回は傾きが \(3\) ですから \(m=3\) ですね。また通る点は \((2,-4)\) なので \(y=3x\) の \(x\) と \(y\) を
\(x\rightarrow x-2\)
\(y\rightarrow y-(-4)=y+4\)
と変えてしまえば終わりです。 \(y\) の方は座標がマイナスなので気をつけてください。
公式に当てはめてみると
\(y+4=3(x-2)\)
であり、計算すると
\(y=3x-6-4=3x-10\)
で確かに同じになりました。計算の手間が非常に少なくなったと思いませんか。
ということは私たちは
傾き \(m\) と通る一点 \((x_{1},y_{1})\) が分かれば
\(y-y_{1}=m(x-x_{1})\)
と、すぐに直線の方程式を作ることができる
のですね。これは非常に便利です。計算も楽になりますし、考えやすいですね。
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直線の方程式の求め方(2点)
ではこんな時はどうしましょう。
これは中学校の範囲でやる時にはかなり面倒だったのではないでしょうか。連立方程式を解かなければいけないですね。
一応やっておくと、求める直線を \(y=ax+b\) とおき、この直線が2点をどちらも通るので
\(2=3a+b\)
\(6=5a+b\)
という二つの式が成り立つはずです。これらを同時に成り立たせる \(a,b\) が欲しいので連立方程式を解きます。解いてみると上の式から下の式を引けば
\(-4=-2a\)
より
\(a=2\)
これを上に代入すれば(どちらでもいいですね)
\begin{eqnarray}2&=&6+b\\b&=&2-6\\&=&-4\end{eqnarray}
であるので結果
\(y=2x-4\)
が求める直線の方程式ですね。これは簡単な例ですが、連立方程式を解くのが面倒です。
ですがこれももう少し簡単に解く方法があります。
私たちは先ほど 傾きと通る点から直線を求める方法を学びましたからこの問題でも
傾き
が分かれば良さそうですよね。2点から傾きを求める方法はあるのでしょうか・・・
ありますね。座標を書いてみるとわかりやすいです。今回の場合
こうなりますが、傾きというのは
傾き \(\displaystyle =\frac{y\mathrm{の増加量}}{x\mathrm{の増加量}}\)
でしたよね。もちろんそれぞれの増加量は
「ある点からある点まででどれだけ \(x\), \(y\) が変化したか」
なので、
ここですよね。座標から簡単に求めることができます。というわけで傾き \(m\) が
\(\displaystyle m=\frac{6-2}{5-3}=\frac{4}{2}=2\)
となります。気をつけて欲しいのは引く順番です。2点の増加量を考えるのなら、ある点からある点を引くという順序をごっちゃにしてはいけません。
今回は\((5,6)\) から \((3,2)\) を引く順番にしました。というわけで後は通る点が2個ありますから、先ほど学んだ直線の方程式の作り方に当てはめるだけです。どちらでも良いので、今回は \((3,2)\) を使ってあげれば
\(y-2=2(x-3\)
より
\(y=2x-6+2=2x-4\)
で確かに一致しました。
ですから一般に2点を通る直線の方程式は、傾きを求めてしまえばいいので
のように2点 \((x_{1},y_{1}), (x_{2},y_{2})\) が与えられた時は
\(\displaystyle y-y_{1}=\frac{y_{2}-y_{1}}{x_{2}-x_{1}}(x-x_{1})\)
が直線の方程式である。
と言えます。複雑そうに見えますが、
\(\displaystyle m= \frac{y_{2}-y_{1}}{x_{2}-x_{1}}\)
と考えれば実は傾きと一点から求める方法と同じです。やってることは結局同じなのですね。
まとめ
今回は直線の方程式についてまとめてみました。長文になりましたがここまでしっかりと読んでいただければ直線の方程式をしっかりとわかったと言えるでしょう。ただ後はこれを実際に問題を通して解いてみるということが重要です。じっくりと自分の理解を深めてみてください。
ではまた。
コメント
[…] 直線の方程式 傾きと一般形 座標からの導出方法 こんにちは。 da Vinch (@mathsouko_vinch)です。 この記事のトピックは「直線の方程式の様々な導出方法」です。 直線という図形を式で表 […]