はさみうちの原理は関数の極限でも同じ
数列の極限で「はさみうちの原理」というものをやりました。これは簡単にいうと
求めたい極限を直接求めずに、わかっている極限で挟んで間接的に極限を求めてしまおう
というものでしたね。この「はさみうちの原理」はもちろん関数の極限でも使えます。
数列の極限では極限を取る文字 \(n\) が自然数でした。関数の極限では \(x\) はどんな値も取れますが、だとしてもこのはさみうちの原理は成り立ちます。
どんな風に使うんだっけ?という人は、ぜひこちらの記事
を読んでください。この記事の \(n\) を \(x\) に変えて読むだけで関数の極限に当てはめられます。
というわけで、ここでは具体的な説明には時間を使わず、実際に問題を解いて思い出してもらおうと思います。
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はさみうちの原理を使って思い出す
一つ目は非常に典型的な、でも大事な問題です。
\(\displaystyle \lim_{x\to 0}x\sin{\frac{1}{x}}\) を求めよ。
数列の極限でもあったような形ですが、\(n\) ではなく \(x\) ですので気をつけましょう。これはもちろん不定形ですね。なぜなら \(x=0\) を式に代入すると、
\(\displaystyle 0\sin{\frac{1}{0}}\)
で\(\displaystyle \frac{1}{0}\) は計算できませんので不定形です。
さて、この問題において変形は難しそうですよね。こういう時に、「はさみうちの原理」を使う方向に切り替えます。
不等式を作って、同じ極限にいくようにしてあげれば良いのでしたね。不等式の関係が作れそうなのはやはり \(\sin \) でしょう。なぜなら角度がなんであれ \(\sin\) は
\(\displaystyle -1 \leqq \sin{\theta} \leqq 1\)
より、今回の場合も
\(\displaystyle -1 \leqq \sin{\frac{1}{x}} \leqq 1\)
ですものね。
ですが、ここで問題が発生します。問題にあるように \(\displaystyle x\sin{\frac{1}{x}}\) を作りたいのですが、\(x\) の符号が決まっていないのでどうにもできません。
どうするか。
絶対値を使いましょう。
そうすればプラスをかけることになるので不等号も問題ありません。
だとすると、\(\sin\) の方も絶対値をつけておいた方が良さそうです。なぜなら極限において
\(\displaystyle \lim_{x\to a}|f(x)| = 0\) なら \(\displaystyle \lim_{x\to a}f(x) = 0\)
なのです。言い換えれば
「絶対値の極限の計算結果が0」=「中身の極限の計算結果も0」
ということです。これは逆も成り立ちます。
なぜそうなるかは高校数学では触れられないですし説明できません。大学で極限について勉強するとわかります。とりあえずここではこれを鵜呑みにすることにします。
つまり、私たちは
\(\displaystyle\lim_{x\to 0}\left|x\sin{\frac{1}{x}}\right|\)
を計算できれば良いのですね。じゃあ先ほどの \(\sin\) の範囲も絶対値をとって
\(\displaystyle 0\leqq \left|\sin{\frac{1}{x}}\right|\leqq 1\)
で良いですね。よって全体に \(|x|\) をかければ
\(\displaystyle 0\leqq |x|\left|\sin{\frac{1}{x}}\right|\leqq |x|\)
で、絶対値の掛け算は一緒にできるので
\(\displaystyle 0\leqq \left|x\sin{\frac{1}{x}}\right|\leqq |x|\)
ここまできました。こうすればあとはそれぞれの極限を取ればよく
\(\displaystyle \lim_{x\to 0}0\leqq\lim_{x\to 0}\left|x\sin{\frac{1}{x}}\right|\leqq\lim_{x\to 0} |x|\)
\(\displaystyle \therefore 0\leqq\lim_{x\to 0}\left|x\sin{\frac{1}{x}}\right|\leqq 0\)
ですね。これではさみうちの原理より
\(\displaystyle \lim_{x\to 0}\left|x\sin{\frac{1}{x}}\right| = 0\)
最後に先ほどの定理を使って絶対値を取れば
\(\displaystyle \lim_{x\to 0}x\sin{\frac{1}{x}} = 0\)
これで極限が求められました。絶対値を使うところがトリッキーでしたが、難しいことはやっていませんのでしっかりと読み込んでみてください。
いったん広告の時間です。
「どんな時に」はさみうちの原理を使うかについての補足
実は勉強を進めていくと三角関数の極限の重要公式
\(\displaystyle \lim_{x\to 0}\frac{\sin{x}}{x} = 1\)
というものが出てきます。この記事で証明したりしているのですが
その時にはさみうちの原理を使うのでいったんここで紹介したわけです。ここでわかることが
三角関数の極限は
①三角関数の極限公式で解く
②はさみうちの原理で解く
という2種類が存在していることです。これは非常に厄介ですね。どちらを使えば良いか迷ってしまいます。
そういう時はまず①から攻めてみてください。
ひとまず三角関数が出てきたら三角関数の極限公式で解く、という意識を持つとよいです。
あくまで、はさみうちの原理は「最終手段」として考えておくのがベストです。これから問題を解いていくときも、まずは三角関数の極限公式に慣れるのが第一ですので。
今後の記事でその辺りに焦点を当てた問題演習もできたらと思っておりますのでお楽しみに。
まとめ
数列の極限でも関数の極限でも、この「はさみうちの原理」は最終手段です。変形などを施したけど全く歯が立たない・・・という時に思い出すと手を差し伸べてくれるかもしれません。もちろん典型的な問題もあるのでそれらはしっかりと理解して自分で解けるようにしておきましょうね。
ではまた。
コメント
lim[x→a]|f(x)|=α なら lim[x→a]f(x)=α は偽なのではないでしょうか。
反例としてf(x)が x 、a が ー1 のとき、
lim[x→a]|f(x)|=1、しかしlim[x→a]f(x)=ー1となるからです。
正確にはlim[x→a]|f(x)|=0 なら lim[x→a]f(x)=0
なのではないでしょうか。
間違っていたらすみません。
匿名様
ご返信が遅れ誠に申し訳ございません・・・!
ご指摘ありがとうございます!こちら仰る通り、
lim[x→a]|f(x)|=0 なら lim[x→a]f(x)=0
が正しいです。ある特定の値αに関しては一般に言えませんね。。。
こちら修正させていただきましたのでご確認いただけますと幸いです。
このようなご指摘とても助かります・・・記事の信憑性を上げるためにも繋がりますので大変嬉しいです。
引き続きお気軽にコメントいただけますと幸いです!
当サイトを今後ともよろしくお願いいたします!
da Vinch