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三角関数の極限公式の証明とその使い方

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Topic Of This Article

・三角関数の重要極限を理解する

・図形を用いた証明を理解する

・重要極限の使い方(どうやって公式の形にするか)

 

三角関数の最重要公式

前回の記事

三角関数の極限と考え方
この記事で学べること ・\(\sin\ ,\ \cos\ ,\ \tan\)の極限があるのか、ないのか ・\(\sin\ ,\ \cos\) のグラフ ・\(\tan\) のグラフからわかる片側極限をする理由 三角関...

 

では、特に \(\sin\) と \(\cos\) には角度を大きくしていっても決まった極限がないということを確認しました。

では三角関数の極限の問題はどうしたら良いのでしょうか。

このままだと全ての問題で三角関数部分に極限がないので三角関数が入っただけでお手上げになってしまいます。

あ、もちろんこんなのは解けますよ。

\(\displaystyle\lim_{x\to 0}\cos x = 1\)

\(\displaystyle\lim_{x\to 0}\sin x = 0\)

などなど・・・。

ですが私たちがこれから出くわすのは、このような極限が入っていても「不定形」になってしまうパターンです。

例えばこんな極限とか。

 

\(\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{\sin 2x}{\sin 3x}\)

 

これはもちろん不定形になってしまいますから、今の僕たちにとってはお手上げです。

でも大丈夫です。これからやる『ある極限』がその救世主になります。

それはこんな形の極限です。

 

\(\displaystyle \lim_{x\to 0}\frac{\sin x}{x}\)

 

\(\sin\) だけではなくて \(x\) も入っています。もちろんそのまま代入しても不定形ですからこの極限がなにかはすぐにはわかりません。

ですが図形的に考えるとこの極限の値が決められます。答えから言うと

 

 

\(\displaystyle \lim_{x\to 0}\frac{\sin x}{x}=1\)

 

 

となります。なんだか不思議ですがとりあえずはこうなるらしいです。

んー・・・でもさすがに何もなしに受け入れるのは不安なのでこの公式の証明からやってみましょうか。その後に問題へ立ち向かっていくことにしましょう。

\(\displaystyle \lim_{x\to 0}\frac{\sin x}{x}=1\) を証明する

さて、この謎の極限をどうやって求めましょう。不定形だから変形したい」ところですが正直にいうとこれ以上の変形は難しそうですよね。

「じゃあお手上げじゃないか」と言いたいところですが、先ほどもチラッと言った通り、この極限は

『図形的に』

考えれば求めることができます。その詳細をここではみていきましょう。

「なぜそう考えたか」途中で出てきますのでまずは読み進めてみてください。

まず何を考えるかというと三角形を考えます。こんな三角形です。

 

 

辺の長さが等しいところが二つあります。二等辺三角形というやつです。

その等しい二辺が挟む角を \(x\) とします。単位はラジアン、つまり弧度法です。

では突然ですがこの三角形の面積は求められるでしょうか。簡単ですよね。もちろん

 

\(\displaystyle \frac{1}{2}\cdot 1 \cdot 1 \sin{x} = \frac{1}{2}\sin{x}\)

 

です。三角比のところでやりましたね。ではこの三角形に少し細工をします。こんな風に

 

 

直角三角形を作ってみました。辺ABは共通で長さを \(1\) にしておきます。

ではこの直角三角形の面積はどうなるでしょうか。

直角三角形なので底辺高さがあれば求めることはできますが今の情報では少なすぎますね。辺ATが欲しいところ・・・。

ですが直角三角形ということに注目すると

 

\(\displaystyle \tan{x} = \frac{\mathrm{AT}}{\mathrm{OA}} = \frac{\mathrm{AT}}{1}\)

より

\(\displaystyle \mathrm{AT} = \tan{x}\)

 

ということがわかります。これは、

 

 

この直角三角形に対して三角比の定義を考えただけですね。ここから、そのまま辺ATが \(\tan{x}\) になることが先ほどの式でわかりました。

これなら面積は求められますね。

 

\(\displaystyle \frac{1}{2}\cdot 1\cdot \tan{x} = \frac{1}{2}\tan{x}\)

 

2つ目完了です。次はというと、こんな扇型を考えます。

 

 

点A,BをOを中心にコンパスで結べば扇形の完成です。この扇形の面積はどうなるでしょうか。

扇形の面積は扇型の半径 \(r\) と中心の角度 \(\theta\) で決まります。今回、角度はラジアンで考えることにしていましたので面積は

 

\(\displaystyle \frac{1}{2}r^2 x = \frac{1}{2} \cdot 1^2\cdot x=\frac{1}{2} x\)

 

になります。これは別に難しいことはなく、一度半径 \(r\) の円の面積を考えて

\(\displaystyle \pi r^2\)

このうち「全体のどれだけの角度分」「今求めたい扇形の面積 \(S\) なのか」を考えるだけですね。

全体は \(360^{\circ}\) 、つまり弧度法では \(2\pi\) なので

 

\(\displaystyle S= \pi r^{2} \times \frac{x}{2\pi}\)

 

となります。したがって求める扇形の面積は

 

\(\displaystyle S= \frac{1}{2}r^2 x\)

 

なので、今回の場合は

 

\(\displaystyle S = \frac{1}{2}1^2 x = \frac{1}{2}x\) 

 

となるのでした。

というわけで3つの異なる図形の面積を求めたわけですが、これが一体何かというと、

これら3つの面積は

 

\(\triangle\) OAB \(<\) 扇型OAB \(<\) \(\triangle\) OAT

 

より

 

\(\displaystyle \frac{1}{2}\sin{x} < \frac{1}{2}x < \frac{1}{2}\tan{x}\)

 

\(\displaystyle \therefore\ \sin{x} < x < \tan{x}\)

 

の関係に必ずありますね。 \(x\) が大きくなってもこの関係は変わりません。もちろん \(\displaystyle 90^{\circ} \left(= \frac{\pi}{2}\right)\) までです。

式で書くと

\(\displaystyle 0 < x <90^{\circ}\left(= \frac{\pi}{2}\right)\) のとき

 

\(\displaystyle \sin{x} < x < \tan{x}\)

 

は常に成り立つ

ということになります。

なんでこんな不等式を導いたかというと、変形がダメなら

 

はさみうちの原理

 

を使いたくなります。ですから、

 

ある範囲でも良いのでその範囲内で必ず成り立つ不等式が欲しかった

 

わけです。

さて、後は \(\displaystyle \frac{\sin{x}}{x}\) を作ることが目標ですね。

角度の範囲は \(\displaystyle 0 < x < \frac{\pi}{2}\) ですから \(\sin{x}\) は \(\displaystyle 0 < \sin{x} <1\) です。よって今回の角度の範囲であれば \(\sin{x}\) はプラスです。

つまり \(\sin{x}\) で割っても不等号の向きは変わりませんから

 

\(\displaystyle \sin{x} < x <\tan{x}\)

 

を \(\sin{x}\) で割って

 

\(\displaystyle 1 <  \frac{x}{\sin{x}}<\frac{\tan{x}}{\sin{x}}\)

 

となります。次に逆数を取ると、不等号は逆向きになるので

 

\(\displaystyle 1 > \frac{\sin{x}}{x} > \frac{\sin{x}}{\tan{x}}\)

 

となり、欲しかった \(\displaystyle \frac{\sin{x}}{x}\) が得られましたね。ここで \(\displaystyle \tan{x}=\frac{\sin{x}}{\cos{x}}\) を使うと

 

\(\displaystyle 1 > \frac{\sin{x}}{x} > \frac{\sin{x}}{\frac{\sin{x}}{\cos{x}}}\)

\(\displaystyle\therefore \cos{x} < \frac{\sin{x}}{x} < 1\)

 

ときれいな形になります。

 

ただ、これは角度の範囲として \(\displaystyle 0 < x < \frac{\pi}{2}\) のみでしか成り立たないですので、今回欲しい

 

\(\displaystyle \lim_{x\to 0}\frac{\sin x}{x}\)

 

のうちプラス側の片側極限である

 

\(\displaystyle \lim_{x\to +0}\frac{\sin x}{x}\)

 

しか考えることができません。この式が成り立つのは今のところ「\(x\) のプラス側」ですから、プラス側からの極限は考えることができますが、マイナスは無理です。

ですのでマイナスの角度でも同じ式が成り立つことを示したいわけですね。

これは図形的に考える必要は要らず、実は簡単です。

まず、今欲しいマイナスの角度の範囲 \(\displaystyle -\frac{\pi}{2}< x <0\) を考え、この式の全体にマイナスをかけると

 

\(\displaystyle \frac{\pi}{2}> -x >0\)

書き換えれば

\(\displaystyle 0 < -x < \frac{\pi}{2}\)

 

となります。これは \(-x\) を \(A\) とでもすれば角度の範囲が

 

\(\displaystyle 0 < A < \frac{\pi}{2}\)

 

になりますので、角度 \(A\) については今まで考えていた

 

\(\displaystyle \cos{A} < \frac{\sin{A}}{A} < 1\)

 

が成り立つことは当たり前ですね。ここで \(A\) を戻してみれば

 

\(\displaystyle \cos{(-x)} < \frac{\sin{(-x)}}{-x} < 1\)

 

であり、\(\displaystyle \sin{(-x)}=-\sin{x}\ ,\ \cos{(-x)}=\cos{x}\)  であることを使えば

 

\(\displaystyle \cos{x} < \frac{-\sin{x}}{-x} < 1\)

\(\displaystyle\therefore \cos{x} < \frac{\sin{x}}{x} < 1\)

 

となってなんと角度が \(\displaystyle -\frac{\pi}{2}< x <0\)であっても同じ式

 

\(\displaystyle \cos{x} < \frac{\sin{x}}{x} < 1\)

 

が成り立つことがわかりました。つまり 0 の近くで

 

\(\displaystyle \lim_{x\to -0}\frac{\sin x}{x}\)

 

も考えられるので、後は導き出した式

 

\(\displaystyle \cos{x} < \frac{\sin{x}}{x} < 1\)

 

の \(0\) への極限を取るだけです。つまり

 

\(\displaystyle \lim_{x\to 0}\cos{x} <\lim_{x\to 0}\frac{\sin{x}}{x} <\lim_{x\to 0}1\)

\(\displaystyle \therefore 1 <\lim_{x\to 0}\frac{\sin{x}}{x} < 1\)

 

ですのではさみうちの原理から

 

\(\displaystyle  \lim_{x\to 0}\frac{\sin{x}}{x} = 1\)

 

となります。これで欲しかった極限が得られました。やりましたね。

これが三角関数が絡む最重要の極限公式になります。大袈裟じゃなく本当に最重要です。

 

三角関数の極限公式

 

\(\displaystyle \lim_{x\to 0}\frac{\sin x}{x}=1\)

 

 

三角関数の重要公式が教えてくれること

この公式の何が重要かというと、

 

 

この形を作れば全部 \(1\) にできる

 

 

ということです。何を言っているかというと

 

\(\displaystyle \lim_{x\to 0}\frac{\sin{3x}}{3x}\)

 

\(\displaystyle \lim_{x\to 0}\frac{x}{\sin{x}}\)

 

などもすべて \(1\) ということです。2つ目は

\(\displaystyle \lim_{x\to 0}\frac{x}{\sin{x}}=\lim_{x\to 0}\frac{1}{\frac{\sin{x}}{x}}\)

と考えればすぐにわかりますね。

 

これを使うと多くの解けなさそうな極限計算ができるようになります。

例えば

 

例題\(\displaystyle \lim_{x\to 0}\frac{\sin{5x}}{x}\)
 

はもちろん不定形なのですが、

 

\(\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{\sin{5x}}{x}=\lim_{x\to 0}\frac{\sin{5x}}{5x}\cdot 5\)

 

と、わざと \(5\) を分母に作っておいて、後から \(5\) をかければ元に戻りますよね。

よって極限公式が作れたので、その部分を \(1\) にすることで

 

\(\displaystyle\therefore\lim_{x\to 0}\frac{\sin{5x}}{x}=1\cdot 5 = 5\)

 

解けてしまいました。なんとあっさりでしょうか。

掛け算はあとで割ったりすればいくらでも変形できるのでどうにでもなります。

つまり自分で \(1\) になるところを作れてしまうんですね。

こんなのも

 

例題\(\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{\sin 2x}{\sin 3x}\)
 

別々にして極限公式の形を作りにいけば

 

\(\displaystyle\lim_{x\to 0}\frac{\sin 2x}{\sin 3x}=\lim_{x\to 0}\frac{\sin{2x}}{2x}\cdot 2x\cdot\frac{3x}{\sin{3x}}\cdot \frac{1}{3x}=\lim_{x\to 0}\frac{\sin{2x}}{2x}\cdot\frac{3x}{\sin{3x}}\cdot \frac{2}{3}\)

となるので

 

\(\displaystyle \therefore \lim_{x\to 0}\frac{\sin 2x}{\sin 3x}=1\cdot 1\cdot \frac{2}{3}=\frac{2}{3}\)

 

なんと計算できてしまいました。つまり三角関数のはいった極限は、 \(0\) への極限であればこの形 \(\displaystyle \lim_{x\to 0}\frac{\sin{x}}{x}\) をいかに作るかのゲームになってくるわけですね。

そういうわけで最重要公式に位置付けられるわけです。

 

とにかく
 
\(\displaystyle \lim_{x\to 0}\frac{\sin{x}}{x}\)
 
を作ろう

まとめ

今回は三角関数の入った極限の最重要公式を学びました。証明は一度理解すればOKです。とにかくその使い方をしっかりとおさえて、計算の方針を自分で立てられるように勉強をしましょう。

ここからは問題練習の量でできるかが決まります。たくさんの問題に当たって慣れていきましょう。

ではまた。

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コメント

  1. 清水洋次 より:

    2020/05/19
    いつも記事を拝見しております
    色々なものを見て「高校数学の知識庫」が一番意欲が出るように感じました
    小生72歳の老人です、人生残り約10年傘寿位までは生きていると思います
    約半年前予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」のユーチューブを見て代数学等眺めましたがチンプンカンプンでした
    再度高校数学を理解しようと思い色々な記事・ユーチューブを拝見しましたが、一番人間性がある内容に思えました
    (東大出身の美しい数学は理路整然とっか書かれていますが参考書をみれま判ると思いました)
    是非数学Ⅲまで早めに執筆してください アナログ人間なので全部印刷しそれを眺めながら解いておりますが、理解できないことがたくさんあります
    再度出して見ますと、現在は数式が大学数式で記載されております 小生でも理解できるように一般の数式にしてください
    よろしくお願いいたします

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