楕円はどんな条件の軌跡か
さて、二次曲線の次の話題は「楕円」です。
楕円という言葉は聞いたことがある人がほとんどでしょう。でもこれまで数学では一切出てこなかった図形でもあります。それはまさしくこの図形が二次曲線であるからです。
軌跡を知らないとこの曲線の式が出てこないし、図形的な特徴がなかなかないので登場が叶わなかった図形なのですね。
ここまで読んでくださった方からは早く楕円の条件を教えてくれという声が聞こえてきそうなので、早速いきましょう。
楕円は
2つの点からの距離の和が等しい点の軌跡
です。和です。気をつけてください。そしてこの二つの点のことを焦点と言います。放物線にも出てきましたね。楕円の場合は焦点が2つあることに注意してください。
ここでもやはり軌跡を考えることになりますので、もしまだ読んでいなければこの記事たち
を読んでおくと流れがつかみやすいかと思います。
では早速式を考えていきましょう。
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楕円の一般形をじっくり考える
今回は実際に一般形を考えていくことにします。というのも一般形をやるとわかるのですが、楕円の式はどちらかというと
与えられた楕円の式から楕円を描く
ことがほとんどなので楕円の式から情報を抜き取れなければいけないのです。放物線の場合は焦点と準線があればかけましたが、楕円の場合は楕円の式の値を使って「焦点を計算する」という手順が必要になります。
今は分からなくても大丈夫です。ひとまず楕円の式を頑張って作っていくことにしましょう。
まず焦点を2つ用意します。今回は簡単のため \(x\) 軸上に対称に置くことにします。つまり
こんな状況を考えます。焦点の座標は \((c,0)\) と \((-c,0)\) で、求める軌跡の点の座標はもちろん P\((x,y)\) です。
楕円の条件は
2つの点からの距離の和が等しい点の軌跡
でしたから、今回の場合は
PF\(+\)PF’\(=\) 一定
という条件になります。今回はこの「一定」という部分を \(2a\) とします。つまり
PF\(+\)PF’\(= 2a\)
とするのですが、これの意味は
楕円でいうこの一番長くなる長さを \(2a\) と置いたことと同じです。確かに上の図にあるようにPを一番端に置いた時、
PF\(+\)PF’\(= 2a\)
が成り立ちます。ですから図でいう色のついている部分が \(2a\) になるのです。
もちろんこれはわかっているからこう置けるだけで、「なんで \(2a\) なの?」と疑問を持つと思いますが、今は認めてあげると楕円の式の形がわかりやすくなるのでそういうものだと思っておきましょう。
ひとまず先に進みます。今ある情報から楕円の条件式を作ると
\(\sqrt{(x-c)^2+y^2}+ \sqrt{(x+c)^2+y^2}=2a\)
となりますね。点と点の距離の公式を使っただけです。これを整理すれば楕円の式ができるはず。
ただし、適当に計算すると沼にはまりますので、一つずつ計算を進めていきます。
まず平方根があるので二乗したいのですが、このまま両辺を二乗すると平方根の掛け算が出てきて大変なので
\(\sqrt{(x-c)^2+y^2}=2a – \sqrt{(x+c)^2+y^2}\)
このように一つの平方根を移項しておきます。これで両辺を二乗すれば
\((x-c)^2+y^2= 4a^2-4a\sqrt{(x+c)^2+y^2}+(x+c)^2+y^2\)
より、整理すると
\begin{eqnarray}x^2-2cx+c^2+y^2&=&4a^2-4a\sqrt{(x+c)^2+y^2}+x^2+2cx+c^2+y^2\\[5pt] 4a\sqrt{(x+c)^2+y^2}&=&4a^2+4cx\\[5pt] a\sqrt{(x+c)^2+y^2}&=&a^2+cx\end{eqnarray}
ですね。平方根とそれ以外に分けました。これでもう一度両辺を二乗すると
\begin{eqnarray}a^2\{(x+c)^2+y^2\}&=&a^4+2a^2cx+c^2x^2\\[7pt]a^2(x^2+2cx+c^2+y^2)&=&a^4+2a^2cx+c^2x^2\\[7pt]a^2x^2+2a^2cx+a^2c^2+a^2y^2&=& a^4+2a^2cx+c^2x^2\\[7pt] a^2x^2-c^2x^2+a^2y^2&=&a^4-a^2c^2\\[7pt](a^2-c^2)x^2+a^2y^2&=&a^2(a^2-c^2)\end{eqnarray}
ここまで変形できました。 ここで \(a^2-c^2\) の平方根を考えると、図でいうと
この楕円でいうところの短い部分に対応します。なぜなら、もし軌跡の点Pが楕円の上部分や下部分にきた場合
みてわかる通り FP\(=a\) であり、OF\(=c\) なので \(\sqrt{a^2-c^2}\) は三平方の定理から
この赤い部分ですね。ですのでこれを \(b=\sqrt{a^2-c^2}\) と置くとわかりやすくなりそうです。これを使えば
\(b^2x^2+a^2y^2=a^2b^2\)
より \(a^2b^2\) で割れば
\(\displaystyle \frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1\)
となります。これが楕円の式になります。やっと出せましたね。
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楕円の方程式を紐解く
さて、楕円の方程式を出したのはいいですが、これらは色々文字で置いたりしたのでその意味をもう一度確認しておきます。
\(\displaystyle \frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1\)
出てくるのは \(a\) と \(b\) ですね。まずは \(a\) から見ると、どこで出てきたかというと
和の定数部分を \(2a\) と置いた
ところでした。楕円のどこの部分かというと
この色のついた部分が \(a\) となります。ですから楕円の内側の一番長いところが \(2a\) というわけです。
これをこれから私たちは「長軸」と呼ぶことにします。
同じように \(b\) は短い部分を置いたのでしたね。
\(2b\) は内側の短い部分になりますが、これを「短軸」と呼びます。
また先ほど \(b\) を決めたときのことを思い返すと
\(b=\sqrt{a^2-c^2}\)
でしたから、ここから焦点の座標を \(a,b\) を使って求めることができます。
\(b^2=a^2-c^2\)
より
\(c=\pm\sqrt{a^2-b^2}\)
となります。つまり楕円の式を図と一緒に書くと
このようにまとめることができます。\(2a\) が長軸、\(2b\) が短軸、焦点は \((\sqrt{a^2-b^2},0)\) と \((-\sqrt{a^2-b^2},0)\) です。作り方は難しかったですが、一度理解すれば図との対応だけを覚えるだけでOKです。
一度まとめておきましょう。
楕円の方程式
\(\displaystyle \frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1\)
長軸 は \(2a\)、短軸は \(2b\)
焦点は \((\sqrt{a^2-b^2},0)\) と \((-\sqrt{a^2-b^2},0)\)
いったん広告の時間です。
楕円の方程式からグラフを書く
では楕円の方程式からグラフを書いてみましょう。これができれば楕円の基本はOKです。
次の楕円の概形を書き、焦点・長軸の長さ・短軸の長さを求めよ
\(\displaystyle \frac{x^2}{25}+\frac{y^2}{9}=1\)
この式を見たときにまずは楕円だということをしっかりとイメージしましょう。そしてまずは \(a,b\) が何かを考えますよ。
楕円の式は
\(\displaystyle \frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1\)
でしたので、今回の場合は
\(a=5\,\ b=3\)
となりますね。ここから長軸が \(2a=10\)、短軸は \(2b=6\) とわかりますので、この時点で楕円を描くことは可能です。こんな感じでしょうか。
横に長い楕円になりますね。もちろん焦点は
\(c=\pm\sqrt{a^2-b^2}=\pm\sqrt{25-9}=\pm\sqrt{16}=\pm 4\)
ですから
ここですね。問題をやってみるとわかるのですが、作った時に考えたことを全く使わずに楕円の特徴だけで図がかけてしまうのです。ですから一度しっかりと理解ができれば機械的に図は書くことができます。
例えばこんな問題も
次の楕円の概形を書き、焦点・長軸の長さ・短軸の長さを求めよ
\(\displaystyle \frac{x^2}{9}+\frac{y^2}{25}=1\)
先ほどと \(a\) と \(b\) の値が逆になっているのですが、こういう場合は
このように縦長の楕円になります。先ほどまで短軸といわれていた \(b\) の方が大きいので自然ですね。この場合は焦点が
\(c=\pm\sqrt{b^2-a^2}\)
となります。\(b\) と \(a\) の立場が逆転しているのでこれも自然です。もちろん焦点は
\(c=\pm\sqrt{b^2-a^2}=\pm\sqrt{25-9}=\pm 4\)
ですね。さらに焦点は \(y\) 軸上になります。これも楕円が縦になっただけなので先ほどまで \(x\) 軸上にあったものが \(y\) 軸上になるだけです。つまり焦点は
\((0,4)\ ,\ (0,-4)\)
となります。これらをまとめて図を書くと
になります。ここまでくるともうパズルみたいになってきますね。
まとめ
楕円の方程式は一度しっかりと作り方がわかればあとは式を見て情報を抜き取れるようになるだけでOKです。他の問題もありますが、\(a,b\) がどこに対応しているのかさえわかっていれば問題から考えることができます。まずは楕円の方程式からグラフを書く練習をしておくと良いでしょう。
ではまた。
コメント
楕円の方程式の一般形はなぜあんな形をしているか、全く考えたこともなかったので今回の記事は本当に助かりました。
楕円の方程式を導く際に、1回目に両辺を二乗した後、式を整理していると思うのですが、右辺の一番右の項はy^2ではなくc^2ではないでしょうか。
自信はないので間違っていたらすみません。
いつもコメントありがとうございます!
そのように言ってもらえることが何よりの原動力です。これからも新しい気づきができる記事を作っていけるように頑張ります!
ご指摘いただいたところを確認したところ c^2 が抜けているので変になっていることに気づきました。
ご指摘していただいて気づくことができましたので大変助かります。
これからもどうぞ高校数学の知識庫をよろしくお願いいたします!
da Vinch
楕円方程式の導出のもう一度両辺を2乗する部分は(a^2-c^2)x^2+a^2y^2=a^2b^2ですね。またこれをa^2b^2で割って楕円方程式の標準形を求められます。標準形は正しいですが、その前の式がa^2がaになっています。
t 様
ご返信が遅れ誠に申し訳ございません・・・!
ご指摘大変助かります、ありがとうございます!!
こちらご指摘いただいた箇所を修正いたしましたので、ご確認いただけますと幸いです。
t様のようなご指摘をいただける方のおかげで記事の信憑性向上が少しずつ進んでいること、とても感謝しております!
至らぬ点も多々ございますが、引き続き当サイトをよろしくお願いいたします!
da Vinch
コメントを見ていただき嬉しい限りです。
訂正箇所についてなんですが、その1つ上の式の左辺にあったy^2が整理した後の左辺では消去されています。これは右辺のy^2を移項したからではないでしょうか?つまり、訂正箇所の隣のy^2は要らないのではないでしょうか?
細かい部分で申し訳ないのですが、ご確認いただけると幸いです。
コメントありがとうございます!
色々な誤植があり大変申し訳ありません。ご指摘いただいたところはその通りで、消えたのか消えてないのかわからない状態になっていました。
訂正として、右辺と左辺のどちらにもy^2を入れさせていただき、その次の式で消去したという形に書き換えました。
計算はスワン様の考え方で間違いないですのでそのまま進めていただければと思います。
今後とも高校数学の知識庫をよろしくお願いいたします!