2つの直線の関係を式から考える
ここでは直線同士の関係を式で表すことを考えます。
なぜそんなことをするのかというと、図形と方程式では常に図形を式で考えていくという目標の上で進みます。
ですから例えば直線が平行に並んでいるところを見た時に、これを
平行に並んでいるなあ・・・
と「見える」だけではダメで、
「平行に並ぶ」というのは結局式でいうと、「・・・が成り立っている」ということだ
と言えなければならないのです。そうしないと私たちは
見えたものを計算する
ことができませんからね。私たちは図形を計算したいのです。それを達成するためにも数々の図形的な考え方を式に落とし込むことが重要なのですね。
いったん広告の時間です。
平行条件
では早速直線の関係性について一つずつ見ていきましょう。
まずは先ほども出てきましたが
直線同士が平行である
ということは式の上ではどのように表現されるのでしょうか。
これは簡単で、直線が平行ということは「傾き具合が同じ」ということですから、直線の式でいうと
傾き \(m\) が等しければ、それらは全て平行である
と言えますね。これだけです。例えば
\(y=3x+3\) と \(-3x+y+4\)
という二つの式があった時に、この直線は
\(-3x+y+10=0\) より \(y=3x-4\)
なのでどちらも傾きは \(3\) です。つまりこの2つの直線は平行であることがわかる、という具合です。
実際に描いてみても
まあ当たり前ですよね。切片が違っても傾きが同じであればそれらは平行です。
ですから一般的に書けば
\(y=m_{1}x+k_{1}\), \(y=m_{2}x+k_{2}\) について
2直線が平行 \(\Leftrightarrow\) \( m_{1}=m_{2}\)
である。
となりますね。
いったん広告の時間です。
垂直条件
ではこちらはどうでしょう。次は垂直の条件です。
2直線が垂直であるとはどういうことかというと、
こういうイメージですね。二つの直線が交点を持っていて、そのなす角が \(90\) 度であるというわけです。このような場合どのような数式を持ってこの「直線同士が垂直に交わる」ということを表現するのでしょうか。
ひとまずここでは結果だけを示すことにします。実はこれも2つの直線の傾きの関係性で決まります。それは
2つの直線の傾き \(m_{1}\), \(m_{2}\) が
\(m_{1}m_{2}=-1\)
である時、その2つの直線は垂直に交わる
のです。ほんとかよ・・・と思いますよね。実際に確認してみます。
例えば \(y=2x+3\) と \(y=-\frac{1}{2}x-2\) という二つの直線は先ほどの条件を満たしています。
確認してみると
\(\displaystyle 2\cdot -\frac{1}{2}=-1\)
ですからね。では実際にグラフを書いてみましょう。
確かにこの2つの直線は垂直に交わっています。この図は正確に描いていますのでもちろん騙してるなんてことはありません。
ですので例えば
\(3x+2y-3=0\) と \(2x-3y+15=0\) なんていう2つの直線も
\(3x+2y-3=0\) より \(\displaystyle y=-\frac{3}{2}x+\frac{3}{2}\)
\(2x-9y-15=0\) より \(\displaystyle y=\frac{2}{3}x+5\)
となりますから、傾きを見ると
\(\displaystyle-\frac{3}{2}\cdot \frac{2}{3}=-1\)
となるので、図を書かずともこれらは垂直に交わっていることがわかるのです。
ですから覚える時には
「傾きをかけたら \(-1\)」なら「垂直」
と考えればいいですね。
まとめとして、一般的に書けば
\(y=m_{1}x+k_{1}\), \(y=m_{2}x+k_{2}\) について
2直線が垂直 \(\Leftrightarrow\) \( m_{1}m_{2}=-1\)
である。
と言えますね。傾きだけで直線の関係を記述できるとは驚きです。
いったん広告の時間です。
(補足)垂直条件の証明
さて、先ほど垂直条件を説明しましたが、なんの証明もなしにあの不思議な関係を使うのは少し嫌なので、ここで簡単に証明をしたいと思います。
気になる人だけで結構ですので、ここで悩むぐらいなら次に進むことをおすすめします。
まず原点を通る2つの直線を考えます。
これらは今原点で直角に交わっているとします。もちろん2つの直線はそれぞれ
傾きが \(m_{1}\) , \(m_{2}\) である、\(y=m_{1}x\), \(y=m_{2}x\) とします。
この時、 \(x\) 座標が \(1\) であるそれぞれの直線上の点をA,Bとすると
A\((1,m_{1})\), B\((1,m_{2})\)
ですよね。代入すればすぐわかりますし、傾きが \(m_{1}, m_{2}\) なので \(x\) の増加量が \(1\) の時, \(y\) の増加量は傾き分になります。
この時、できた三角形OABは直角三角形です。
つまりこの三角形の辺には三平方の定理が成り立たなければなりません。
点と点の距離の公式はもう知っているので、それを使ってあげれば
OA\(=\sqrt{1^2+m_{1}^2}\)
OB\(=\sqrt{1^2+m_{2}^2}\)
AB\(=\sqrt{(1-1)^2+(m_{1}-m_{2})^2}=\sqrt{(m_{1}-m_{2})^2}\)
で、三平方の定理より
\(\mathrm{AB}^2= \mathrm{OA}^2+ \mathrm{OB}^2\)
なので代入すると
\((m_{1}-m_{2})^2=(1+m_{1}^2)+ (1+m_{2}^2)\)
ですね。これを整理してあげると
\begin{eqnarray}m_{1}^2-2m_{1} m_{2}+m_{2}^2&=&1+m_{1}^2+1+m_{2}^2\\ -2m_{1} m_{2}&=&2\\ m_{1} m_{2}&=&-1\end{eqnarray}
となります。つまり2直線が垂直である時、その二つの直線の間では
\(m_{1} m_{2}=-1\)
が成り立ってなくてはいけないのです。さらに、
\(y=m_{1}x+k_{1}\), \(y=m_{2}x+k_{2}\)
という直線を考えた場合も、そもそも
\(y=m_{1}x\), \(y=m_{2}x\)
が垂直に交わっていますから
図(原点にない直線の絵、垂直に交わっている)
平行条件から原点で交わっていなくても同じことが言えます。
ですから一般に
\(y=m_{1}x+k_{1}\), \(y=m_{2}x+k_{2}\) について
2直線が垂直 \(\Leftrightarrow\) \( m_{1}m_{2}=-1\)
である。
と言えました。逆は明らかなので証明をしませんが、気になる人はやってみてください。この条件を満たす直線を考えて、垂直に交わることを言えばいいだけです。
まとめ
最後は証明までやりましたので少し長くなりましたが、抑えて欲しいことは図形としての特徴が傾きの関係で記述できるという点です。問題で直線が垂直になっていると出てきたらすぐさま「傾きをかけたら\(-1\)」と出てくるように。いかに図形的な条件を数式に落とし込めるかがこの分野の鍵ですので。
ではまた。
コメント