無限級数の収束・発散は判定できるのか?
前回は無限級数について重要な性質を見ましたが、今回はその収束・発散について見ていきます。
実は無限級数の収束・発散にも少しだけルールがあります。もちろん今のところ私たちに解けるものは限られていますが、これを知っておくと計算の手間を省くことができるかもしれません。
誰かがその計算をしているときに「それ、計算しなくてもわかるよ」と言えたらかっこいいですよね(少し嫌な奴と思われるかもしれませんが笑)。もちろん言わなくてもいいですが、知っておくだけで無駄な計算をしなくて済むかもしれません。
現実問題として受験の時などにはかなり役に立ちます。スピードが必要な数学では計算しなくて済むというのはアドバンテージです。
もったいぶってないで説明しましょう。一つ目はこれです。
\(\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}a_{n}\) が収束するならば \(\displaystyle\lim_{n\to\infty} a_{n}=0\) である
ん?これはなんでしょうか。なんか使い道があるのでしょうか?
実はこれはこれから説明する「次の性質」の準備段階の命題です。もちろんどんな時もこの性質は成り立ちますが、現実的には使えないですね。無限級数の収束・発散を結局計算しなければならないのですから。
最大の注意はこれは逆は必ず成り立つ訳ではないということです。つまり
のです。これだけは間違えないでください。数列の極限が \(0\) であるということは数列が最終的に \(0\) に近づくということを言っているだけです。それだけで和が \(0\) になりますか?全部そうはならないですよね。
ですのであくまで
\(\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}a_{n}\) が収束するならば \(\displaystyle\lim_{n\to\infty} a_{n}=0\) である
が正しいのです。ここまで大丈夫ですね。ちなみに証明は補足として後ろに出てきますので気になる方はそちらをご覧ください。
ではもう一つの重要な性質はというと、この命題の対偶をとればわかります。
元の命題が真なら、対偶も真でしたね。対偶を取ってみると
ですね。これは大変有用そうです。なぜなら無限級数を計算したいなあと思ったときにはその中身である
\(a_{n}\)
の極限を取ってみればいいと言っているのです。もし \(0\) でない結果が出たら実は無限級数を取っても無駄で、結局発散してしまうということを意味しています。
ただし、\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_{n}\) が \(0\) の時はどっちに転ぶかわかりません。先ほど確認しましたよね。
つまり我々が無限級数を計算するときに、計算を始める前にやることは
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_{n}\)
を計算することなのです。これがもし \(0\) でないなら計算は不要。自動的に無限級数も \(0\) です。
なんか便利そうですよね。ちょっと使ってみましょう。
いったん広告の時間です。
無限級数の発散を判定する
問題をやってみましょう。この無限級数を調べてみます。
まずはこの無限級数の一般項を求めてみます。最初の項を \(\frac{1}{1}\) だと考えれば
分子は \(1\ ,\ 2\ ,\ 3\ , \ 4\ ,\cdots\) と増えていて
分母は \(1\ ,\ 3\ ,\ 5\ ,\ 7\ ,\ \cdots\) を増えているので
\(n\) 番目の項、つまり一般項は
\(\frac{n}{2n-1}\)
になりますね。ちゃんと \(n\) に 自然数を代入していけば、与えられた無限級数を再現できます。つまり
\(\displaystyle 1+\frac{2}{3}+\frac{3}{5}+\frac{4}{7}+\cdots=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{n}{2n-1}\)
と書き表せます。
ではこの無限級数は果たして収束するのでしょうか。はたまた発散してしまうのでしょうか。
じゃあ計算するためにまずは部分和を求めて・・・というのがオーソドックスなやり方でしたが、私たちはその前にできることがあります。それが今回学んだこの性質です。
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_{n}\neq 0\) ならば \(\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}a_{n}\)は発散する
まずはとにかく一般項の極限を求めてみれば良いのでした。それが \(0\) でないなら無限級数は発散します。つまり ”計算せずとも” 無限級数は発散すると言えるのです。
やってみましょう。これを計算すればいいのですね。
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{n}{2n-1}\)
これはもちろん極限の計算問題で散々やりました。とにかく \(\frac{1}{n}\) を作ればよかったのでしたよね。今回の場合は分母分子を \(n\) で割れば
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{n}{2n-1}=\lim_{n\to\infty}\frac{\frac{n}{n}}{\frac{2n}{n}-\frac{1}{n}}=\lim_{n\to\infty}\frac{1}{2-\frac{1}{n}}=\frac{1}{2}\)
となります。極限をとると \(0\) になりませんでした。この結果から先ほどの性質を使えば
\(\displaystyle 1+\frac{2}{3}+\frac{3}{5}+\frac{4}{7}+\cdots=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{n}{2n-1}\) は発散する
と簡単に言えるのです。実はこの問題は部分和を求めようとすると結構大変です。ですが、無限級数の性質を使えば簡単に計算ができました。便利!
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(補足)最初の命題の証明
最初の命題
をそれとなく出してしまいましたが、もちろん証明できます。とても簡単なのでここで証明しておきましょう。
無限級数 \(\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}a_{n}\) が収束する時、その和を \(S\) とし、さらに第 \(n\) 項までの部分和を \(S_{n}\) とします。つまり収束値が \(S\) で
\(\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}a_{n}=\lim_{n\to\infty}S_{n}\)
が基本の式ですから、ここに出てくる \(S_{n}\) のことですね。今回はこの極限が
\(\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}a_{n}=\lim_{n\to\infty}S_{n}=S\)
ということです。
\(n\leqq 2\) の時、数列の範囲でもやりましたが、\(S_{n}-S_{n-1}=a_{n}\) ですので、
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty} a_{n}=\lim_{n\to\infty}S_{n}-S_{n-1}=\lim_{n\to\infty}S_{n}-\lim_{n\to\infty}S_{n-1}\)
となりますが、\(n\) を無限大に飛ばしますから、\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}S_{n-1}=S\) ですね。よって
\(\displaystyle\lim_{n\to\infty} a_{n}=\lim_{n\to\infty}S_{n}-\lim_{n\to\infty}S_{n-1}=S-S=0\)
となりますので、証明できました。最初に出てきたもう一つの性質は対偶を取ればいいという話でしたので、証明はいらないですね。
まとめ
無限級数の計算は面倒なことが多いです。ですが今回の性質を使えば計算せずとも無限級数が発散するか否かはわかります。ただし、使うときには最大の注意をしてください。極限計算は基本的に普通ではありません。なにせ極限という高校数学では扱いきれないものを無理やり扱っているのですから。それを肝に命じて計算練習をしてみてください。使える条件をしっかりと抑えないとあやふやのままなんとなく計算している状態から抜け出せませんからね。
ではまた。
コメント
最初の命題の証明はいつ頃に更新されるのでしょうか?
コメントありがとうございます!管理人の da Vinch です。
更新を忘れていました・・・大変申し訳ありません。
今証明をつけましたのでご確認ください!
これからも当サイトをどうぞよろしくお願いいたします!
早速の返信と更新、ありがとうございます!!
他のサイトとは違って、省略せずに解説しているところから
理解し易いサイトだなと思っています!
大変ありがたいお言葉ありがとうございます!
最近少し更新が滞っておりますが、頑張って記事を書いていきますので、今後とも当サイトをよろしくお願いいたします!
サイトを使っていただくことがとても励みになります!頑張ります!!
返信して頂いたお返しとして、またわからなければここに質問することで
SEO的に良いと思うので、また質問させて頂きます!
僕のコメントがあることで、口コミみたいに他の人もコメントをする可能性が上がると思うので
そのようにさせて頂きます!
是非よろしくお願いいたします!
よりたくさんの人に届けて、数学ができるようになる人が増えることが僕の願いです!
今後ともよろしくお願いいたします!!