円の方程式の一般形とは
これまで私たちが考えてきたのは
\(x^2+y^2 = r^2\)
と言う原点を中心とする半径 \(r\) の円と、
\((x-a)^2+(y-b)^2 = r^2\)
という中心が \((a,b)\) で半径が \(r\) の円ですね。これらが出てきた場合はすぐに座標平面に簡単にかけるようになりました。
例えば \((x-2)^2+(y-3)^2=25\) なんていう円は
\((x-2)^2+(y-3)^2=25=5^2\)
ですから
のようにできるのでしたね。
では私たちはこのような形で問題で出てこない限りは円として認識できないのでしょうか。そうだとしたらかなり不便ですね。
ですが安心してください。僕たちはこの円の方程式を作ることができます。ヒントは二次関数の平方完成です。
では、次から見ていきましょう。
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円の方程式の一般形
先ほど考えた円の方程式
\((x-2)^2+(y-3)^2=25\)
は点 \((2,3)\) を中心とした半径 \(5\) の円でしたね。ではこれをわざと「展開」してみましょう。
\begin{eqnarray} (x-2)^2+(y-3)^2&=&25\\[5pt]x^2-4x+4+y^2-6y+9&=&25\\[5pt]x^2+y^2 -4x-6y-12&=&0\end{eqnarray}
展開して全部左に寄せてみました。一応降べきの順にしています。
さてこの式はもともと点 \((2,3)\) を中心とした半径 \(5\) の円の方程式でしたから、これももちろん円を表す式のはずですね。ですからこれだけをみてもよくわかりませんが
\(x^2-4x+y^2-6y-12=0\)
は点 \((2,3)\) を中心とした半径 \(5\) の円を表す方程式なのです。つまり
\(x^2+y^2+lx+my+n=0\) (\(l,m,n\) は整数)
であれば円の方程式なのではないかと思われます。もともと円であるとわかっている式を展開したらこのような形が出てきたのですから。
じゃあ逆にこれが円である証拠は・・・というと、もちろん円の方程式に戻せるからです。
\(x^2-4x+y^2-6x-12=0\)
この式を円の方程式にできるの?と思われるかもしれませんが、今までやってきた知識を使えば簡単にできます。それは
平方完成
です。\(x\) と \(y\) それぞれで平方完成をしてあげれば円の方程式の形に近づきますからね。やってみると
\begin{eqnarray} x^2+y^2 -4x-6y-12&=&0\\[5pt]x^2-4x+y^2-6y&=&12\\[5pt](x-2)^2-4+(y-3)^2-9&=&12\\[5pt](x-2)^2+(y-3)^2&=&25\end{eqnarray}
逆にやっただけに見えますが、それぞれで平方完成すれば実は逆をやっていることと同じなのです。
平方完成した時に出てくる定数は右辺に持っていけば半径を表す値に変わるだけですからね。
つまり
\(x^2+y^2+lx+my+n=0\) (\(l,m,n\) は整数)
の形が出てきたら、\(x\) と \(y\) それぞれで平方完成をすれば
\((x-a)^2+(y-b)^2 = r^2\)
の形にできる
ということがわかるわけです。この時
\(x^2+y^2+lx+my+n=0\) (\(l,m,n\) は整数)
の形は
円の一般形
と呼ばれます。
(ただし一般系とここで言いましたが、必ずしもこの式が円を表すかどうかはわかりません。最初のうちはあまり気にしなくてもいいですが、後々応用問題を解く際には注意が必要かもしれません。これは追って別の記事で解説しようと思います。)
また、私たちのよく知っている
\((x-a)^2+(y-b)^2 = r^2\)
は
円の標準形
と呼ばれます。まあ言葉はとりあえずいいので、どちらも円の方程式を表していることを覚えておけばいいでしょう。
では実際に問題をやって円の方程式に変形できるかどうか確認してみましょう。
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一般形から標準形へ
やることは簡単で、 \(x\)、 \(y\) についてそれぞれで平方完成をしてあげればいいですね。
ひとまずわかりやすいようにそれぞれの文字で集めましょう。
\(x^2-6x+y^2+10y+18=0\)
では最初なのでわかりやすいように、 \(x\) だけで平方完成をしてみます。その部分だけ取り出してやってみます。
\(x^2-6x=(x-3)^2-9\)
大丈夫でしょうか。二次関数で散々やった平方完成ですので手に馴染んでいる人も多いでしょう。もしできなかったら一旦二次関数の記事に戻ると良いでしょう。
というわけで \(y\) も同じようにやれば
\begin{eqnarray}x^2-6x+y^2+10y+18&=&0\\[5pt](x-3)^2-9+(y+5)^2-25+18&=&0\\[5pt](x-3)^2+(y+5)^2-16&=&0\end{eqnarray}
ですから、あとは定数部分を移項すれば
\((x-3)^2+(y+5)^2=16\)
ですね。これはまさしく点 \((3,-5)\) を中心とする半径 \(4\) の円であることがわかりました。難しいところは平方完成だけです。
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標準形と一般形の使い分け
さて、今回で円の方程式には二つの表式があることを知りましたが、これらに優劣はあるのでしょうか。
答えから言うと優劣ではなく「使い分け」をすると言うのが正しいです。
私たちはその方程式がどんな円かを知りたければ
標準形 \((x-a)^2+(y-b)^2 = r^2\)
を見なければいけません。これでないと円の中心と半径が分かりませんからね。
じゃあ一般形はというと
特定の問題に対して威力を発揮する
のです。ですから円の情報を知りたければ一般形で見る意味は全くありません。基本的には全て標準形に直して考えるべきです。
ではどんな時に威力を発揮するかというとこんな問題を解く時です。
この問題は3点を通る円の方程式を求めるものですが、これを標準形でやろうとすると結構大変です。
この問題は基本的に円の方程式を仮定して、代入していくのがセオリーです。二次関数でよくやりましたね。
もし標準形で仮定したとすると例えば \((1,1)\) を代入すれば
\((1-a)^2+(1-b)^2 = r^2\)
となり、文字の二乗が出てきます。見るからに面倒ですよね。やりたくありません。ですから標準形でやるのは無理があるのです。
ですが一般系であれば
\(x^2+y^2+lx+my+n=0\)
ですから
\(1+1+l+m+n=0\)
となり、文字の二乗が出てきません。これなら少し明るい未来が待っていそうです。
実際に全て代入すると
\begin{eqnarray}1+1+l+m+n=0\tag{1} \\[5pt]4+1+2l+m+n=0\tag{2} \\[5pt]1+0-l+0+n=0\tag{3} \end{eqnarray}
と連立方程式になったではありませんか。特に今回の問題は座標が \(0\) のものがあるのでさらに簡単になりました。きれいにしておくと
\begin{eqnarray}l+m+n=-2\tag{1} \\[5pt]2l+m+n=-5\tag{2} \\[5pt]-l+n=-1\tag{3}\end{eqnarray}
あとはこれを解くだけです。簡単なやり方はとりあえず2つの式を考えてそれぞれ引いてあげることですね。
(1)から(2)を引けば
\(-l=3\)
ですからすぐに
\(l=-3\)
と出ますね。ここまで来れば引き算することもありませんが、一般的には(2)から(3)を引いて
\(3l+m=-4\)
と出てきますから、\(l=-3\) を代入して
\(m=5\)
となります。あとはどれでもいいので代入して計算すれば
\(n=-4\)
となりますね。つまり求める方程式は
\(x^2+y^2-3x+5y-4=0\)
となるわけです。この方程式は標準形にすれば
\(\displaystyle \left(x-\frac{3}{2}\right)^2+ \left(y+\frac{5}{2}\right)^2=\frac{34}{4}\)
と結構複雑ですがこうなります。もちろん一般系のままでもOKです。
というわけで実用的にはこのような使い方になるので覚えておくと良いですよ。
まとめ
円の方程式の2つの形について学習しました。基本的には標準形でどんな円なのかを確認していきますので、一般形で出てきてもすぐに直せるようにしておきましょう。ただし問題によっては一般形が威力を発揮する場面もあるので必ず形は覚えておきましょう。使い所が大事です。
ではまた。
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