なぜ極限を学ぶのか
みなさんは数学Ⅲまでで数多くの関数を勉強してきました。中学生の時は
一次関数と反比例から始まり
二次関数
高校からは二次関数が少しパワーアップして
三角関数
指数・対数関数
分数関数、無理関数
などなど数多くの『関数』を扱ってきました。これまでこれらのいろいろな極限も学びましたね。
でもみなさんの中にはこういう人もいると思います。
『なぜ極限を学んでいるのか』
と。なんだかんだいろんな極限を不定形を避けたり、グラフをイメージしたりして解いてきたわけですがいったい何につながるのかと。
この答えは実はここで全てを出すことはできません。
極限を勉強していてよかった…と思うのは微分の範囲です。もろ最初から使うことになるので、そこで極限の知識が活かされるのは間違いありません。
ですが、実はそこに繋がる大事な概念がこれからやる
関数の連続性
というテーマです。ここに極限の知識が活かされます。
では、関数が連続ってどういうこと?という疑問が出てくると思うのでまずはそこから説明しましょう
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関数の連続性とは?
関数が連続であるとはその名の通り
途中で途切れていない関数
ということです。ですので実は私たちが扱ってきたほとんどの関数は
連続な関数
です。三角関数なんかも見れば分かる通り
どこも途切れていないですよね。むしろ途切れるって何?って思うと思いますが、世の中には「つながっていない関数」というのが存在するのです。
例えば「ガウス記号」で表される「ガウス関数」というものがあります。これは
\(\displaystyle y=[x]\)
という記号で表されるものです。この記号がどういう意味かというと
ある数 \(x\) があるとき \(n\leqq x <n+1\) になる整数 \(n\) が必ず存在するので \([x]\) を \([x]=n\) と定義する
こんな記号です。そのままだとなかなか難しいので例を挙げると
\(\displaystyle [1.2]=1\)
こんな感じです。これは \(\displaystyle 1<1.2<2\) と整数で挟むことができるので、計算結果は \(1\) になるのです。他にも
\(\displaystyle [0.283]=0\)
\(\displaystyle [-1.334]=-2\)
などなど、考えると意外と簡単ですね。最後のマイナスの数字は注意です。マイナスの場合は
\(\displaystyle -2<-1.334<-1\)
となるので、定義に従うと確かに \(\displaystyle [-1.334]=-2\) ですよね。
簡単にいうと
プラスの数字のガウス記号 => 小数点以下を切り捨て
マイナスの数字のガウス記号 => 小数点以下を切り捨てて、値を \(1\) 下げる
と言えましょう。
さて、ガウス記号について長く喋ってしまいましたが、私たちが知りたいのはこのガウス記号を関数として考えた場合のガウス関数でした。
つまり
\(y=[x]\)
がどんな関数かを知りたいわけですね。これはこれまで考えてきた例を思い出せば
になることがわかるでしょう。注目すべきは、\(1\) ,\(2\) ・・・や \(-1\), \(-2\) ・・・などの整数で値がジャンプしていることですね。なぜなら
\(\displaystyle [1]=1\) であるけれども \(\displaystyle [0.99]=0\) であり、とても近い値にもかかわらず計算結果がガラリと変わる
からです。ですから、こんな
途切れ途切れの関数になってしまいます。これは明らかに「途切れた」関数です。
このように我々が普段使ってきた関数は基本的に「連続」つまり「つながった」関数ですが、ガウス記号のように「不連続」つまり「途切れた」関数も世の中には存在するのです。
ではこの「連続」「不連続」といったことを数学的にちゃんと調べるにはどうしたら良いでしょうか。このままだと
グラフが「つながっているか」 もしくは、「つながっていないか」
という私たちの「主観」だけで判断せざるを得ません。これは数学としてはダメですよね。どうしたものか・・・。
大丈夫です。ここで登場するのが私たちがこれまで散々やってきた「極限」です。極限を使ってこの「連続」と「不連続」をしっかりと調べられるようにしていきます。
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極限を使って「連続」「不連続」を定義する
さて、私たちはこれから「極限」の知識を使って関数の「連続性」を調べていきたいわけですが、どう考えれば良さそうでしょうか。
これまで見てきたガウス関数をみるとこんなことがわかります。
不連続になっている点 ( = 不連続点) では極限値が決まっていないかも
確かにガウス関数は不連続になっているところはジャンプしていて、極限値が定義できませんね。
なぜなら片側極限を考えれば、例えば \(\displaystyle x \rightarrow 1\) に対して
\(\displaystyle\lim_{x\to 1+0}[x]=1\) であるが、\(\displaystyle\lim_{x\to 1-0}[x]=0\) なので、 \(x \rightarrow 1\) の時の極限値はない
ですよね。これで良さそうな気もします。
ただ、実はこんな関数も連続ではありません
\begin{eqnarray}f(x)=\left\{\begin{array}{11}\frac{x^{2}-1}{x-1}&(x \neq 1)\\1&(x=1)\\ \end{array}\right.\end{eqnarray}
これは上の式は
\(\displaystyle f(x)=\frac{(x+1)(x-1)}{x-1}=x+1\)
なので直線なのですが、\(x=1\) では定義できないのでそこだけは別の値を持っているということです。
つまりグラフで書くと
こうですね。これは \(x \rightarrow 1\) の極限は
\(\displaystyle\lim_{x\to 1+0} \frac{x^{2}-1}{x-1} =2\)
\(\displaystyle\lim_{x\to 1-0} \frac{x^{2}-1}{x-1} =2\)
ですから、\(x \rightarrow 1\) で極限値はあるけれども、見ての通り連続ではありません。直線に見えて途切れてしまっています。
ですから「極限値がない」というだけでは「不連続」を表せません。じゃあどうしたら・・・。
こうしましょう!
「不連続である」 = 極限値が存在しない or 存在したとしてもその値が飛んでいる
そのまんまですね。
これを逆に利用して、「連続である」ということを数式で書くとするとこうなるでしょう。
関数 \(f(x)\) において、その関数の定義域内のある値 \(a\) に対してまず、
極限値 \(\displaystyle\lim_{x\to a}f(x)\) が存在し、かつ
\(\displaystyle\lim_{x\to a}f(x)=f(a)\) である時、
\(f(x)\) は \(x=a\) で連続であるといい、関数 \(y=f(x)\) のグラフは \(x=a\) でつながっている。
長ったらしく書きましたが、つまりは
どんな定義域内の \(x\) でも極限が存在する
and
ある \(x=a\) での極限値と 関数の値 \(f(a)\) が一致している
を満たした時初めて、関数は その定義域内の \(x\) で「連続」である。逆にこれのどちらも、もしくはどちらかを満たさなければその関数は「不連続である」
ということですね。もっともっと噛み砕いて言えば
極限を取りに近づいていったら関数の値と違った・・・っていう時には不連続
ということです。先ほどの関数だと
このようにだんだん近づいていった先が「実際の関数の値ではない」ので不連続です。そう考えると簡単ですよね。
というわけで少し問題をやってみましょう。
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例題演習
少し問題をやって実際に使ってみましょう。
次の関数 \(f(x)\) が \(x=0\) で連続であるか、不連続であるかを述べよ。
- \(\displaystyle y=x[x]\)
- \(\displaystyle f(x)=\left\{\begin{array}{11}x+1&(x \neq 0)\\3 &(x=0)\\ \end{array}\right.\)
確認の仕方は簡単です。
まずは単純に代入して計算する。その後に片側極限をとってあげて、極限を計算し、一致するか調べるだけです。
1.の解答
ガウス記号が入っているから \(x=0\) で不連続なんじゃないの?と思いたくなりますが、まずは代入して値を求めます。もちろん \([0]=0\) であることはもう知っているので
\(\displaystyle y=0\times [0]= 0\times 0=0\)
ですね。これは簡単。では極限を考えてみます。
まずは
\(\displaystyle \lim_{x\to +0}x[x]\)
から。\(x\) はいいですが、\([x]\) が厄介なのでこちらを考えます。\([x]\) はプラスの方から近づけると
を見てわかるとおり
\(\displaystyle \lim_{x\to +0}[x]=0\)
です。例えば \([0.5]=0\) なんてのを考えるとわかりやすいでしょう。ですから
\(\displaystyle \lim_{x\to +0}x[x]= 0\times 0=0\)
ですね。プラス側からの極限は代入した値を一致しました。では
\(\displaystyle \lim_{x\to -0}x[x]\)
これはどうでしょう。ガウス関数はマイナス側から近づけると様子が変わるので、再度グラフを載せますと
より
\(\displaystyle \lim_{x\to -0}[x]=-1\)
ですよね。先ほどと違うのは予想した通り。ガウス関数は \(x=\) 整数 で不連続な関数ですから。
ですが \(x\) の方はマイナスから近づけても \(0\) なので結局
\(\displaystyle \lim_{x\to -0}x[x]=0\times (-1)=0\)
で、やはり \(0\) です。ということは代入した値と極限値が一致するのでこの関数は連続なのです。
実際に書いてみると
になります(pythonで書かせた関係上グラフが文字に重なっているところがあり見づらいです。すみません)。
確かに \(x=0\) でグラフがつながっています。それ以外の整数では不連続ですね。
ですから\(x=0\) では連続ですが、それ以外の整数では不連続です。
ガウス関数が入ると必ず不連続であるわけではないことを理解できたのではないでしょうか。注意ポイントです。
2.の解答
これは簡単ですね。単純に代入すると問題から
\(\displaystyle f(0)=3\)
ですね。 \(\displaystyle x\rightarrow 0\) の極限はというと
\(\displaystyle \lim_{x\to 0}(x+1)=0+1=1\)
ですよね。ただの直線の式なので代入するだけでOK。というわけで計算結果を見てわかる通り
\(\displaystyle \lim_{x\to 0}f(x) \neq f(0)\)
なので連続ではありません。不連続です。グラフを書けば、計算せずとも
ですからね。
まとめ
今回は関数の連続性を取り上げて解説しました。極限を今までやってきたことを少しだけ使うことができましたね。ここで紹介していることが直接試験で問われることは少ないかもしれませんが、この後に出てくる中間値の定理や微分を説明する時には必須の知識になってきます。連続って何?ということだけでも頭に入れておくと良いでしょう。
ではまた。
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