極方程式とは
これまで僕たちは様々な図形を考えてきました。
直線から始まり、円、放物線、楕円、双曲線。
実に様々な図形の特徴とその方程式を覚え、いろんな場面で使ってきました。
さて、僕たちは今「極座標」という座標の表し方を学んでいます。前回の記事を見ていない人はぜひ目を通してみてください。
私たちは図形をこれまでは「直交座標」で表してきましたね。全て \(x\) と \(y\) で書いてきましたから。
でも同じ「点」を表すときには直交座標だけではなく極座標でもいいという事実は前回学びましたから、極座標でも色々な図形を表せるはずです。
ある図形を極座標表示で表すとき、そこで出てくる方程式のことを
極方程式
と言います。せっかく座標を考えたので点だけ求めるのは寂しいですからね。
ここからは簡単な例から始めて極方程式を少しずつ理解していきましょう。
まず極方程式を考えるとものすごく簡単になってしまうものから紹介します。それは「円」です。
もともと直交座標形では原点中心の半径 \(a\) の円は
\(x^2+y^2=a^2\)
でしたね。ですが、極座標で考えると円の方程式は一変します。
極座標では原点からの距離 \(r\) と 偏角 \(\theta\) で表すので直交座標からは一旦離れます。
図を見ればわかりますが、円を表す点は \(\theta\) がなんであっても \(r=a\) ですよね。ですから原点中心で半径 \(a\) の円を極座標で表してしまうと、
\(r=a\)
\(\theta\) はなんでもいい(任意である)
となります。イメージとしては
\(r\) が \(a\) の点を、全ての \(\theta\) で打ってみてください
ということを言われればあなたは
この図を得られるはずです。ですから原点中心で半径 \(a\) の円の極座標表示での方程式、すなわち「円の極方程式」は
「円の極方程式」
\(r=a\)
\(\theta\) は任意
となるわけです。少し不思議な感じですが、持っておくべきイメージは
\(r\) と \(\theta\) が変数であり、それらの関係を表すのが極方程式
という \(x\) と \(y) の関数を考えるときと同じ感覚です。極方程式になった途端にこの「関数」のイメージがなくなってしまう人が多いので気をつけると良いです。
いったん広告の時間です。
いろんな図形を極方程式で表してみる
先ほどは円を極方程式で考えましたが、もう少し色々な図形を表してみましょう。
ちなみにここから出てくる「座標」は全て 「極座標」なので注意してください。例えば \((1,0)\) という点は原点からの距離が \(1\) で \(x\) 軸からの角度が \(0\) であるという意味です。
では行きます。
極座標が \((2,0)\) である点Mを通り、始線(X軸)に垂直な直線を極方程式で表せ。
まずは状況を把握しましょう。 \(x\) 軸と \(y\) 軸を書くとややこしいので、始線を X 軸として書くことにしますね。図で書くと
こんな感じの直線です。これの極方程式を求めよということです。
極方程式を考える際に重要なことは、基本的に \(r\) と \(\theta\) の関係を知りたいので、
図形を表す点を一点考え、\(r\) と \(\theta\) が変化しても変わらない関係を見つける
ということを意識すると良いです。今回の場合は
こんな風に直線上の一点を考えて、そのときの \(r\) と \(\theta\) を考えます。この二つの値が変数です。
このとき、常にOMは \(2\) ですね。もし直線上を点Pが動いたら \(r\) と \(\theta\) も変わります。
このときこの \(r\) と \(\theta\) が変化しても変わらない関係というのは一体なんでしょうか。
点Pがどこに行っても常に三角形OMP は「直角三角形」です。ということは常に直角三角形の関係性が \(r\) と \(\theta\) には入っていなくてはなりませんね。
直角三角形といえば・・・やっぱり三角比ですよね。一番簡単なのは、わかっているのが OP\(=r\)、OM\(=2\)、\(\angle\)POM\(=\theta\) ですから
\(r\cos\theta=2\)
ですね。これは点Pがどこにあっても成り立ちます。ですからこれが「極座標が \((2,0)\) である点Mを通り、始線(\(x\)軸)に平行な直線」の極方程式なのです。
まあ
\(\displaystyle r=\frac{2}{\cos\theta}\)
と書いたほうが \(r\) と \(\theta\) の関係性がわかりやすいのでこちらの書き方が一般的ですね。
どちらにしてもこのように
図形を表す点を一点考え、\(r\) と \(\theta\) が変化しても変わらない関係を見つける
ことで極方程式を求めることができます。意外と簡単に見えますよね。
もう一問やってみましょう。
これはいかがでしょうか。書けそうですか?
こうですね。まさしくこれは私たちがよく扱ってきた直線ではないですか。これを極方程式で表すとどうなるでしょう。
ある点Pを考えたとき
このように点Pの角度 \(\theta\) は常に \(\displaystyle \theta=\frac{\pi}{3}\) です。ただし、 \(r\) はなんでも良いですね。逆にいうと
\(\displaystyle \theta=\frac{\pi}{3}\) であれば \(r\) はなんでも良い
ということになります。これは円の極方程式と似てますね。\(r\) と \(\theta\) は直接結びついているわけではなく、片方が常に同じで、もう片方はなんでも良いという状況です。ですから極方程式は
\(r\) は任意、\(\displaystyle \theta=\frac{\pi}{3}\)
となるのです。ちょっと不思議ですが、関係性はなく、片方がすでに決まってしまっているという場合に相当します。
いったん広告の時間です。
「直交座標の方程式を極方程式で表す」&「極方程式を直交座標の方程式で表す」
まずは直交座標で与えられている関数を極座標に変換していくことを考えてみます。
ですが、実はこれ、ものすごく簡単です。なぜならすでに直交座標で \(x\) と \(y\) での方程式を知っているのなら、極座標と直交座標の関係はもうすでに知っている通り
\(x=r\cos\theta\)
\(y=r\sin\theta\)
ですから、言ってしまえば
元の直交座標形での \(x\)、\(y\) の式に代入するだけ
です。ですから実は最初にやった円の極方程式も簡単に出すことができます。
円の直交座標での方程式は
\(x^2+y^2=a^2\)
でしたが、これに先ほどの関係式を代入すれば
\begin{eqnarray}(r\cos\theta)^2+(r\sin\theta)^2&=&a^2\\[5pt]r^2\cos^2\theta+r^2\sin^2\theta&=&a^2\\[5pt]r^2(\sin^2\theta+cos^2\theta)&=&a^2\\[5pt]r^2&=&a^2\\[5pt]r&=&a\end{eqnarray}
\(a\) は常にプラスなので平方根を取るときにはプラスだけ残しました。
というわけで簡単に円の極方程式 \(r=a\) を出せましたね。
もちろん極方程式を直交座標での方程式に直すこともできます。
例えば
こういう場合はとにかく
\(x=r\cos\theta\)
\(y=r\sin\theta\)
\(r=\sqrt{x^2+y^2}\)
がありますから、この形を作ってあげれば良いわけです。今回の場合は両辺に \(r\) をかけてあげると綺麗に
\begin{eqnarray}r^2&=&4r(\cos\theta+\sin\theta)\\[5pt]r^2&=&4r\cos\theta+4r\sin\theta\end{eqnarray}
となるので、これですぐに \(r\) と \(\theta\) を消せますね。代入すれば
\begin{eqnarray}x^2+y^2&=&4x+4y\\[5pt]x^2+y^2-4x-4y&=&0\end{eqnarray}
ですが、実はこれ
\begin{eqnarray}x^2+y^2-4x-4y&=&0\\[5pt](x-2)^2-4+(y-2)^2-4&=&0\\[5pt](x-2)^2+(y-2)^2&=&8\end{eqnarray}
とできるので、中心が \((2,2)\) で半径が \(2\sqrt{2}\) の円ですね。やはり極方程式で表すと僕たちにはイメージしづらいですが、極方程式の方が式が簡単になることが多いです。
まとめ
今回は極方程式について学習しました。直交座標に慣れ親しんでいるとなかなか理解が難しいですが、もし物理や化学等、理学系の分野を学習する機会があったときには極座標表示(もっというと球座標表示)が頻繁に出てきます。今はなんだか使い道が分からないとは思いますが、座標というのは奥深く面白いです。ぜひ勉強を続けてその面白さに触れてみてください。
ではまた。
コメント