接線の方程式はたくさんあるけど大体同じ
さて、ここまで「放物線」「楕円」「双曲線」について学習してきました。
以前円の方程式を学んだときに「円の接線の方程式」を学びましたが、この「円」も二次曲線でしたのでこれまで学んできた二次曲線についても接線の方程式を知りたくなります。
放物線に関しては微分を使って接線の方程式を求めることはしてきました。ただ、今回学んだ放物線の形はいつも使っているものとは違いますし、二次曲線はたくさんありますからそれぞれに関して接線の方程式を求めておくことは大事です。
しかし結論から言うと全部を完全に一字一句覚える必要はありません。「放物線」「楕円」「双曲線」の接線の方程式はとても「似ている」のです。それを実際に接線の方程式を求めてみて確認してみましょう。
放物線の接線の方程式を求める
まずは放物線について考えてみましょう。考え方は全て同じなので、ここで少し詳しく解説しておきます。
まず接線を考えるので接点を置きましょう。今回は接点を \((x_{1}, y_{1})\) とします。
次に接線の方程式を考えるのですが、接線はもちろん接点を通るので、傾きだけ指定してあげれば直線の方程式を作れますね。今回は傾きを \(m\) と置くことにすれば
\(y=m(x-x_{1})+y_{1}\)
となりますね。直線の方程式に関しては
ここで詳しく解説しているので不安な方は一度復習しておきましょう。
そして、接点を \((x_{1}, y_{1})\) としていますから、放物線の式は
\(y^2=4px\)
より
\(y_{1}^2=4px_{1}\)
が成り立ちますね。接点は放物線上の点ですから。
さてここまでで準備は完了です。ここからやりたいことは単純で、放物線と直線の方程式が一点で交わるような条件を作ってあげます。
一点で交わるということはつまり
放物線に直線の式を代入した方程式が解を一つ持つ
ということになりますね。特に今回はその解は接点である必要がありますからもっと言えば
放物線に直線の式を代入した方程式は重解を持ち、重解は接点の座標である
となります。つまり代入してできた方程式の 解 \(x\) は \(x_{1}\) である必要があるということです。
なんとなくイメージができましたでしょうか。とりあえず実際に計算してみるとわかってくると思いますので、「今何をしているのかをしっかりと意識して」追ってみてください。
まずは直線の方程式を放物線の式に代入します。
\begin{eqnarray}\{m(x-x_{1})+y_{1}\}^2&=&4px\\[5pt]m^2(x-x_{1})^2+2my_{1}(x-x_{1})+y_{1}^2-4px&=&0\\[5pt]m^2(x^2-2x_{1}x+x_{1}^2)+2m y_{1}x-2m y_{1}x_{1}+y_{1}^2-4px&=&0\\[5pt]m^2x^2-2m^2x_{1}x+m^2x_{1}^2+2m y_{1}x-2m y_{1}x_{1}+y_{1}^2-4px&=&0\\[5pt]m^2x^2+(-2m^2x_{1}+2my_{1}-4p)x+m^2x_{1}^2+y_{1}^2+2mx_{1}y_{1}&=&0\end{eqnarray}
長かったですが、やったことは展開して、\(x\) で整理しただけです。
この複雑な方程式は直線と放物線の交点を求める方程式ですね。今回はこの方程式は重解を持っている必要があります。なぜなら放物線と直線は接するからですね。
ここで少し思い出して欲しいのは、二次方程式の解の公式です。もちろん皆さんご存知の通り
\(ax^2+bx+c=0\) の解は
\(\displaystyle x=\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\)
でしたね。もしこの二次方程式が重解を持つのなら、判別式 \(D=b^2-4ac=0\) ですから、解は
\(\displaystyle x=\frac{-b\pm\sqrt{0}}{2a}=-\frac{b}{2a}\)
です。つまり、重解は二次方程式の \(x^2\) と \(x\) の係数から
\(\displaystyle x=-\frac{b}{2a}\)
であるのです。
今回の場合も重解となることが必要なので、その答えは
\(m^2x^2+(-2m^2x_{1}+2my_{1}-4p)x+m^2x_{1}^2+y_{1}^2+2mx_{1}y_{1}=0\)
をみてあげれば
\(\displaystyle x=-\frac{-2m^2x_{1}+2my_{1}-4p}{2m^2}\)
でありますね。確認した公式と見比べてみてください。
そしてさらにこの答えは接点である必要があるので
\(\displaystyle x=-\frac{-2m^2x_{1}+2my_{1}-4p}{2m^2}=x_{1}\)
となりますね。つまり結果として
\(\displaystyle -\frac{-2m^2x_{1}+2my_{1}-4p}{2m^2}=x_{1}\)
こんな式が得られたというわけです。僕たちは自分たちで置いた傾き \(m\) が欲しいので変形すると
\begin{eqnarray} -\frac{-2m^2x_{1}+2my_{1}-4p}{2m^2}&=&x_{1}\\[5pt] 2m^2x_{1}-2my_{1}+4p&=&2m^2x_{1}\\[5pt]-2my_{1}&=&-4p\\m&=&\frac{2p}{y_{1}}\end{eqnarray}
となります。これが傾きですね。
よって、最初においた接線の方程式に代入すれば
\begin{eqnarray}y&=&\frac{2p}{y_{1}}(x-x_{1})+y_{1}\\[5pt]yy_{1}&=&2p(x-x_{1})+y_{1}^2\end{eqnarray}
ですが、最初に確認した通り
\(y_{1}^2=4px_{1}\)
ですから
\begin{eqnarray}yy_{1}&=&2p(x-x_{1})+y_{1}^2\\[5pt]yy_{1}&=&2p(x-x_{1})+4px_{1}\\[5pt]yy_{1}&=&2px-2px_{1}+4px_{1}\\[5pt]yy_{1}&=&2p(x+x_{1})\end{eqnarray}
です。つまり接線の座標が与えられたとき、放物線の接線の方程式は
\(yy_{1}=2p(x+x_{1})\)
であるということですね。大変でしたが出すことができました。
放物線 \(y^2=4px\) の接点 \((x_{1},y_{1})\) における接線の方程式
\(yy_{1}=2p(x+x_{1})\)
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楕円の接線の方程式を求める
楕円に関しても同様ですので、簡単に計算の概略だけを載せておきます。
まず、楕円の方程式は
\(\displaystyle \frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1\)
で、求める接線の方程式は
\(y=m(x-x_{1})+y_{1}\)
です。接点を \((x_{1},y_{1})\)としているので、もちろん楕円の方程式に入れても成り立ちます。
\(\displaystyle \frac{x_{1}^2}{a^2}+\frac{y_{1}^2}{b^2}=1\)
これを確認した上で、早速代入です。
\begin{eqnarray} \frac{x^2}{a^2}+\frac{\{m(x-x_{1})+y_{1}\}^2}{b^2}&=&1\\[5pt]b^2x^2+a^2\{m^2(x-x_{1})^2+2m(x-x_{1})y_{1}+y_{1}^2)\}&=&a^2b^2\\[5pt] b^2x^2+a^2(m^2x^2-2m^2x_{1}x+m^2x_{1}^2+2my_{1}x-2mx_{1}y_{1}+y_{1}^2)&=&a^2b^2\\[5pt] b^2x^2+m^2a^2x^2-2m^2 a^2 x_{1}x+m^2 a^2 x_{1}^2+2m a^2 y_{1}x-2m a^2 x_{1}y_{1}+ a^2 y_{1}^2-a^2b^2&=&0\\[5pt](m^2a^2+b^2)x^2+(-2m^2a^2x_{1}+2ma^2y_{1})x+m^2a^2x_{1}^2-2ma^2x_{1}y_{1}+a^2y_{1}^2-a^2b^2&=&0\end{eqnarray}
ごちゃごちゃしていますが、とりあえずまとめられましたね。あとはこれの重解が \(x_{1}\) であればいいので
\(\displaystyle x_{1}=-\frac{-2m^2a^2x_{1}+2ma^2y_{1}}{2(m^2a^2+b^2)}\)
が成り立つはずです。ここから \(m\) を出せば
\begin{eqnarray} 2(m^2a^2+b^2)x_{1}&=&-2m^2a^2x_{1}+2ma^2y_{1}\\[5pt]2m^2a^2+2b^2x_{1}&=&2m^2a^2x_{1}-2ma^2y_{1}\\[5pt]m&=&-\frac{b^2x_{1}}{a^2y_{1}}\end{eqnarray}
です。とてもスッキリした形になりました。あとはこれを接線の方程式に入れて
\begin{eqnarray}y&=& -\frac{b^2x_{1}}{a^2y_{1}}(x-x_{1})+y_{1}\\[5pt]a^2y_{1}y&=&-b^2x_{1}(x-x_{1})+a^2y_{1}^2\\[5pt] a^2y_{1}y&=&-b^2x_{1}x+b^2x_{1}^2+a^2y_{1}^2\end{eqnarray}
となりますが、
\(\displaystyle \frac{x_{1}^2}{a^2}+\frac{y_{1}^2}{b^2}=1\)
より
\(b^2x_{1}^2+a^2y_{1}^2=a^2b^2\)
\(a^2y_{1}y=-b^2x_{1}x+a^2b^2\)
より
\(\displaystyle \frac{x_{1}x}{a^2}+\frac{y_{1}y}{b^2}=1\)
が楕円の接線の方程式となるのです。最後は楕円の方程式に似た形に寄せてみましたがそっくりなことがわかるでしょう。
楕円 \(\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1\) 上の接点 \((x_{1},y_{1})\) における接線の方程式は
\(\displaystyle \frac{x_{1}x}{a^2}+\frac{y_{1}y}{b^2}=1\)
である。
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双曲線の接線の方程式を求める
こちらも同様にして計算してあげればOKです。さすがに数式が多すぎなので自分で計算してみてください。そうすると
双曲線 \(\frac{x^2}{a^2}-\frac{y^2}{b^2}=1\) 上の接点 \((x_{1},y_{1})\) における接線の方程式は
\(\displaystyle \frac{x_{1}x}{a^2}-\frac{y_{1}y}{b^2}=1\)
である。
という結論が出てきます。これもまたとても似ていますね。
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二次曲線の接線の方程式を並べてみてみよう
さてここまで頑張って出してきた二次曲線の接線の方程式を並べてみましょう。
これをみるとわかるとおり、放物線は異質ですね。なんだか複雑になってしまっている感じが否めません。
しかしながら楕円と双曲線はどうでしょう。みると
\(x^2\) の部分が \(xx_{1}\)、\(y^2\) の部分が \(yy_{1}\)に変わっている
だけですね。これは驚くべきことです。つまり接点の座標さえ決まれば、元々の楕円・双曲線の方程式の一部を変えるだけですぐに接線の方程式を求められるということですから。
これらを踏まえると、実用的には
放物線の接線の方程式は覚える
&
楕円と双曲線の接線の方程式は \(x^2\) の部分を \(xx_{1}\)、\(y^2\) の部分を \(yy_{1}\)に変えるだけ
とみてあげれば良さそうです。結果までは大変でしたが、実際の方程式はきれいな形で覚えやすく、一安心です。
まとめ
今回は二次曲線の接線の方程式を求めてみました。やり方はこれだけではなく、微分を使うともっと簡単に求められるのですが、今回は愚直に計算して出してみました。自分で出せるようになっておくと計算力もつき、かつ理解も深まると思いますので一度手を動かすと良いでしょう。
覚えることは少ないのでたくさん使って「接線の方程式はすぐ頭に浮かぶよ」という状態にできると良いでしょう。
ではまた。
コメント
「二次曲線の接線の方程式を並べてみましょう」のところの、放物線の接線の方程式にの係数に誤記があるようです。
(誤) 4p
(正) 2p
コメントとご指摘ありがとうございます!
サイト管理人の da Vinchです。
こちら該当箇所を修正させていただきました!
ご指摘非常に助かります。
これからも当サイトをご愛好いただけると幸いです!
よろしくお願いいたします!
da Vinch