逆関数は \(x\) と \(y\) の入れ替え?
この記事では「逆関数」について考えていきましょう。
私たちは基本的に関数として \(x\) が決まれば \(y\) が一つに決まるというものを考えてきました。こういう時に
\(y\) は \(x\) の関数である
というのでしたね。ではこれを逆に考えてみるとどうなるでしょうか?
つまり
\(y\) を決めれば \(x\) の値が一つに決まる
ということです。もしこのような性質があった時、もちろん
\(x\) は \(y\) の関数である
と言えますよね。このような時、
元の関数 \(y=f(x)\)に対して、\(x=g(y)\) を考えることができる
というのはすぐにわかるでしょう。つまりは \(x\) と \(y\) の関係を逆にしたわけです。
\(g(y)\) と書いているのは元の関数 \(f(x)\) とは一般に形が違うので新しい記号 \(g\) になっています。変数が \(y\) なのはもちろん \(y\) の式になっているからですね。
この時に私たちは元の関数 \(y=f(x)\) に対して、逆関数というものを定義することができます。それは
\(y=f(x)\) から作った \(x=g(y)\) の \(x\) と \(y\) をそっくりそのまま入れ替えた関数 \(y=g(x)\) を \(y=f(x)\) の逆関数という
\(x=\) にしたのになんでまた入れ替えたんだ・・・と思うかもしれませんが、これが逆関数の定義になっているのです。実際に逆関数を求めてみるとその意味がわかると思いますので、問題を解いてみましょう。
やりたいことはこの関数の変数 \(x\) と \(y\) の立場を逆転させて、その後関係をひっくり返すだけです。ですのでまずは \(x=\) の形にしましょう。
\(y=3x+2\) より
\begin{eqnarray}3x+2&=&y\\3x&=&y-2\\x&=&\frac{1}{3}y-\frac{2}{3}\end{eqnarray}
となります。あとはこの式の \(x\) と \(y\) を入れ替えれば
\(\displaystyle y=\frac{1}{3}x-\frac{2}{3}\)
となります。これが \(y=f(x)\) の逆関数です。
逆ってなんだ?と思うと思いますのでここで説明します。逆の意味は何かというと
「逆」の意味は 「単純に \(y=\) を \(x=\) にした」のではなくて、「\(x\) と \(y\) の帰ってくる値の関係が逆」
ということです。先程の例で言うと
\(\displaystyle y=3x+2\) という関数の \(x\) に \(2\) を入れると \(y=8\) が帰ってくる
のに対し
\(\displaystyle y= \frac{1}{3}x-\frac{2}{3}\) という関数の \(x\) に \(8\) を入れると \(2\) が帰ってくる
のは実際に計算するとわかりますよね。これを見れば「逆」の意味がわかると思います。
つまり
逆関数の関係にある式同士は「片方の関数の \(x\) と \(y\) の関係性」が「もう片方の \(x\) と \(y\) の関係性」と逆になっている
だけです。平たく言えば「逆関数同士で行ったり来たりできる」のですね。
では私たちが知っている関数たちにも逆関数という関係を持った関数たちがいそうなので、いろいろな関数の逆関数を見てみることにしましょう。
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いろいろな関数の逆関数を見てみよう
無理関数の逆関数
まずは無理関数の逆関数を考えてみましょう。やることは同じですよ。
\(\displaystyle y=\sqrt{x}\) より \(\displaystyle \sqrt{x}=y\) なので \(\displaystyle x=y^2\) ですね。
あとは \(x\) と \(y\) をひっくり返せば
\(\displaystyle y=x^2\)
となります。つまり無理関数 \(y=\sqrt{x}\) の逆関数は \(y=x^2\) というまさに二次関数だったわけです。
ただし一つ注意が。皆さんおわかりのとおり、\(y=\sqrt{x}\) には定義域がありますね。 \(x \geqq 0\) でした。
もちろんそれに伴って値域というのも存在しますね。グラフを見ればわかるとおり
\(y\geqq 0\)
です。
逆関数はこの \(y\) が \(x\) にとって変わるので、先程の逆関数 \(y=x^2\) の「定義域」が \(x\geqq 0\) ですよね。
ですから二次関数とは言えども
のようにグラフは一部分のみになります。
このように
逆関数の定義域は元の関数の値域に等しい
という性質がありますのでしっかりと押さえておきましょう。
指数関数の逆関数
では次は指数関数についてみてみましょう。\(y=3^{x}\) の逆関数を考えることにします。やることは同じなのでサッといきましょう。
\(y=3^{x}\) より \(3^{x}=y\)
ですが、もちろんこれを \(x=\) に直すなら、対数を使うしかないですね。つまり
\(x=\log_{3}{y}\) ですから \(y=\log_{3}{x}\) ですね。
もちろん \(y=3^{x}\) の値域は \(y\geqq 0\) なので逆関数の定義域は \(x\geqq 0\) ですね。ですのでグラフを書くと
こうなります。対数の場合は真数がプラスなのは当たり前なのであまり気にしなくても良いですね。
分数関数の逆関数
ではこんな関数はどうでしょうか。
\(\displaystyle y=\frac{x+3}{x-4}\)
もちろん計算をすぐにしたいところですが、まずは値域の確認をしましょう。
そのためにグラフを書いてみることにします。分数関数のグラフの書き方は大丈夫ですね。
\(\displaystyle y=\frac{x+3}{x-4}=\frac{(x-4)+7}{x-4}=\frac{x-4}{x-4}+\frac{7}{x-4}=\frac{7}{x-4}+1\)
となるのでグラフは
のようになります。これをみてわかる通りこの関数の値域は \(y\neq 1\) です。 \(1\) じゃないところで \(y\) が取れますからね。
つまりこれから考える逆関数の定義域が \(x\neq 1\) です。
では実際に逆関数を求めてみましょう。
\(\displaystyle y=\frac{7}{x-4}+1\)
からスタートした方が計算しやすようですね。
\(\displaystyle y-1=\frac{7}{x-4}\) より \((y-1)(x-4)=7\)
で \(y-1\) で割りたいところですが、\(y \neq 1\) を確認することで初めて \(y-1\) で割れます。先程確認しておいてよかったですね。
というわけで
\begin{eqnarray}x-4&=&\frac{7}{y-1}\\x&=&\frac{7}{y-1}+4\end{eqnarray}
より逆関数は
\(\displaystyle y=\frac{7}{x-1}+4\)
となります。分数関数の逆関数は分数関数なのですね。
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逆関数をもたない関数
ここまで色々な逆関数を求めてきましたがどんな関数も逆関数が必ずあるのでしょうか。
実はそうではありません。私たちにとっては身近な関数である二次関数はその代表的な関数です。
なぜかというと実際に逆関数を求めようとすると、\(y=x^{2}\) より
\(\displaystyle x^{2}=y\) で \(\displaystyle x=\pm \sqrt{y}\)
であり逆関数は
\(\displaystyle y=\pm\sqrt{x}\)
となってしまいます。これでいいんじゃないの?と思うかもしれませんが、逆関数の定義を思い出してみてください。
\(x\) が決まれば \(y\) の値が一つに決まる
これが関数の定義であり、逆関数ももちろんそうでなくてはなりません。ですから今回の場合
\(x\) を決めても \(y\) が2つになる
のでこれは逆関数ではないのです。ですので
全ての関数が逆関数を持つわけではない
ということをしっかりと押さえた上で逆関数を求めてみてください。
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逆関数の記号と性質
さて、長々と説明をしてきましたが、ここで逆関数の表記法を覚えることにしましょう。
なんてことはありません。
元の関数が \(\displaystyle y=f(x)\) だった時、その逆関数を \(\displaystyle y=f^{-1}(x)\) と書くことにしよう
これだけです。つまり先程の例を使えば
\(\displaystyle y=f(x)=3^{x}\) の逆関数を考えると \(\displaystyle y=f^{-1}(x)=\log_{3}{x}\) である
とか
\(\displaystyle y=f(x)=\frac{7}{x-4}+1\) の逆関数を考えると \(\displaystyle y=f^{-1}(x)=\frac{7}{x-1}+4\)である
とかいうように記号で書けるようになっただけです。そうするとどっちが元の関数だったかはっきりしますよね。
また逆関数には次のような性質がありました。
逆関数の関係にある式同士は片方の関数の \(x\) と \(y\) の関係性がもう片方の \(x\) と \(y\) の関係性と逆になっている
のでこれをこの逆関数の表記で書くと
関数 \(f(x)\) が 逆関数 \(f^{-1}(x)\) を持ち、\(f(a)=b\) が成り立つ時、もちろん \(f^{-1}(b)=a\) が成り立つ
と言えます。\(f(x)=2x\) の逆関数は \(f^{-1}(x)=\frac{1}{2}x\) ですが、
\(\displaystyle f(2)=2\cdot 2=4\) で、\(\displaystyle f^{-1}(4)=\frac{1}{2}\cdot 4=2\)
となり確かにその通りになっています。記号を使ったとしても本質は変わりませんのでしっかりとイメージしてくださいね。
またグラフを見た時に勘付いた人もいるかもしれませんが実は関数と逆関数には次の性質があります。
関数 \(y=f(x)\) のグラフとその関数の逆関数 \(y=f^{-1}(x)\) のグラフは直線 \(y=x\) のグラフに関して対称となる
つまり、関数とその逆関数は \(y=x\) で折り返した関数になっているということです。
確かに \(y=x\) を折り目にして重ねると、グラフが重なりそうですね。これはグラフを書く時に役立ちますね。あからさまに折り返しても重ならない変なグラフになったときは、どこかで計算を間違えたはずですのでチェックもできます。
というわけで長くなりましたが押さえて欲しいのはこの2点です。
関数 \(f(x)\) が 逆関数 \(f^{-1}(x)\) を持ち、\(f(a)=b\) が成り立つ時、もちろん
\(f^{-1}(b)=a\) が成り立つ
関数 \(y=f(x)\) のグラフとその関数の逆関数 \(y=f^{-1}(x)\) のグラフは直線 \(y=x\) のグラフに関して対称となる
まとめ
逆関数についてこんなに長く書く予定はなかったのですが、わかりづらいところをしっかりと補うとこうなってしまいました。「逆」という言葉に惑わされると何が何やらわからなくなってしまうので、ここでしっかりと「逆」の意味をおさえられると良いかと思います。
ではまた。
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