三角比から辺の長さを出す
私たちは最初に辺の比から三角比を求めました。ですがそれとは逆に、三角比から辺を求めることもできることを説明します。これは三角比を扱う最初のメリットであり、三角比を扱うすべての分野で基本として押さえておくべきものです。
まずは定義を確認します。三角比の定義は次のように決められているのでした。
$$\sin\theta =\frac{BC}{AC}=\frac{a}{b}$$
$$\cos\theta =\frac{AB}{AC}=\frac{c}{b}$$
$$\tan\theta =\frac{BC}{AB}=\frac{a}{c}$$
辺の長さは\(a,b,c\)で表しています。さてここで、この式の分母を払ってあげるとこのようになります。
$$b\sin\theta =a$$
$$b\cos\theta =c$$
$$c\tan\theta =a$$
右辺は辺の長さで、左辺はある辺に三角比をかける操作になっています。もし三角比がわかっていて、辺が「1つ」わかっていれば、ほかのすべての辺がわかるのです。これが三角比の威力です。
今までは三平方の定理でも「2つ」の辺がわかっていないともう一方は求められませんでした。ですが三角比を扱える場合は辺が1つわかればいいのです。そして三角比には相互関係というもう一つの素晴らしい関係があるので、三角比も「1つ」わかっていればいいのです。
言葉で聞いても実感がわかないので実際にやってみましょう。
例えば次のような問題を解いてみます。
次の直角三角形で、\(AC=7\)、\(\sin\theta =\frac{3}{4}\) の時、\(AB,BC\)を求めよ。
三角比を知らないとここでお手上げなのですが、三角比を知っている私たちには怖いものはありません。三角比の定義に戻ってやってみます。
まず
$$\sin\theta=\frac{BC}{AC}=\frac{BC}{7}$$
と定義に戻ると書けます。これでもうBCはわかって、
$$BC=7\times\sin\theta=7\times \frac{3}{4}=\frac{21}{4}$$
となります。一瞬ですね。次は\(\sin\)から\(\cos\)を出します。相互関係を使えば
$$\left(\frac{3}{4}\right)^2+\cos^2\theta =1$$
より
$$\cos^2\theta =1-\frac{9}{16}=\frac{7}{16}$$
\(\cos\)はプラスなので
$$\cos\theta =\frac{\sqrt{7}}{4}$$
であります。そうして定義に戻れば
$$\cos\theta=\frac{AB}{AC}=\frac{AB}{7}$$
より\(\cos\theta\)を入れて
$$AB=7\times \cos\theta=7\times \frac{\sqrt{7}}{4}=\frac{7\sqrt{7}}{4}$$
と計算できるわけです。どうでしょうか。今までと感覚が大きく変わると思います。辺の情報が1つしかなくても問題が大きく進展する可能性が出てくるわけですね。
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終わりに
ここで出てきたことは正直に言うと三角比の中でも特に重要です。この直角三角形に対する考え方をしっかりとマスターすることをお勧めします。多くの人はこの事実をあまり意識して使っていません。いろいろな公式もこの関係を使って出てくるものです。慣れていきましょう。
ではまた。
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