軌跡とは
ここでは新しく出てくる概念である「軌跡」について学習していきます。
軌跡とは何かというと、その字の如く
ある条件に従って動く点の集まり
です。説明しましょう。
私たちは座標平面に点を書くことができますが、それらを隙間なく置いていけばそれは線となります。
こんなイメージです。
もしその点に何かしらの条件があれば、その線はある一定の法則で動くはずです。その法則にあたるのが今回考えたい軌跡であり、その軌跡は「関数」として書くことができます。
一番簡単な例はこれでしょう。
この一定の距離 \(r\) だけ離れた点をたくさん集めると
となることは明らかですね。そうです。これは円ですね。
つまり円は
円 = ある点 \((a,b)\) から一定の距離\(r\) だけ離れた点の軌跡
とも言えるわけです。では先ほど出てきた「法則」にあたるものはなんでしょう。
ある点を \((x,y)\) とすれば、それ自身が今考えるべき「動く点」ですよね。
ですからその点がどのように動くのかを式で表すことができればそれが法則、つまりその点が従う関数になります。
今の場合は動く点を \((x,y)\) とすれば 条件として
動く点は、ある点 \((a,b)\) から一定の距離\(r\) だけ離れている
が成り立つので、次の式が成り立つはずです。
\(\sqrt{(x-a)^2+(y-b)^2}=r\)
ある点 \((a,b)\) と動く点の距離は \(\sqrt{(x-a)^2+(y-b)^2}\) で、これが距離 \(r\) に必ずなっているのでこの式が作れます。
この「 \((x,y)\) の関係」が今考える「法則」であり「関数」であることをもう一度確認しておきます。そうするとこの式は両辺を二乗すれば
\((x-a)^2+(y-b)^2=r^2\)
となります。これが今考えている「条件」の中で動く点の「軌跡」になるわけです。これはまさに
中心が \((a,b)\) で半径が \(r\) の円
ではないですか。最初にイメージした「円」を式としてちゃんと出すことができました。
これが軌跡を考えるということの本質です。
軌跡とはつまるところ
ある条件のもとで動く点が従う関数
ということができます。うーん難しいですね。
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軌跡をイメージするのは難しい
そうなんです。先ほども述べましたが軌跡はなんか難しいんです。
その難しさの要因として、今何を考えているのかが分かりづらいということがあります。
例えば軌跡の問題でどんな問題があるかというと
こんなのが最初の一歩として一般的でしょうか。まずはこの問題が何を求めて欲しいのかを理解する必要があります。
図で考えてみると例えばこんな点が考えられます。
2点からの距離を考え、それが \(3:1\) であればいいのですよね。実際に数点打ってみましたが、どんな図形になるか想像できますでしょうか。
一度解いたことがある人ならわかるかと思いますが、予想と違う図形になってしまうこともあるので、やはり計算が必要になってきます。
答えから言うとこの条件で軌跡を考えると「円」になります。なんだか不思議ですよね。こんな感じです。
ですので軌跡を実際に書いてイメージすることは大変重要なのですが、計算上有利になるかと言うとそうでもありません。結局のところ条件を数式に落とし込めないと軌跡の問題を解くことができないので、イメージができても解けない・・・となりがちです。
ここまで読んでくださった方はある程度、軌跡ってこんな感じなんだなと理解していただいたと思うので、次のセクションで実際に「どう解いていくか」を理解してもらい、軌跡の問題に対する苦手意識を払拭してもらえればと思います。
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軌跡の問題をある程度機械的に解こう
同じ問題
を今回はしっかりと解いていきます。まず手順を教えますね。
① 軌跡を求めたい点を \((x,y)\) と置く
② 条件を考える
③ 条件を式に変え、式を立てる
④ \(x\) と \(y\) の関係式にする => それが今欲しい軌跡の式となる
こんな流れです。すべての軌跡の問題はこんなことをしています。例題を通してやり方を見ていきましょう。
① 軌跡を求めたい点を \((x,y)\) と置く
まず① の軌跡を求める点を \((x,y)\) と置くところです。今回は点P を P\((x,y)\) と置きます。これで①は終了です。
ですがこれが最も重要です。今欲しい軌跡の点を \((x,y)\) と置くことで最終的にこの \(x\) と \(y\) の関係を求めることを目標に定めやすくしているのです。
② 条件を考える
次は条件を考えていきましょう。これは今回はすでに書いてあって
2点 \((0,0)\)、\((3,0)\) からの距離の比が \(3:1\) である
というまさにこれですね。確認はこれで終わりでOKでしょう。
③ 条件を式に変え、式を立てる
次は条件を式に変えます。ここが最も難しいでしょうが、今までの知識を使えば必ずできるはずです。
まず必要なのは2点 \((0,0)\)、\((3,0)\) それぞれと 点P の距離ですね。これがないと比の式が立てられませんからね。
もちろん点と点の距離は学びました。 \((0,0)\) と点P \((x,y)\) の距離は
\(\sqrt{(x-0)^2+(y-0)^2}=\sqrt{x^2+y^2}\)
ですね。2点間の距離の公式です。もちろん\((3,0)\) と点P \((x,y)\) の距離は
\(\sqrt{(x-3)^2+(y-0)^2}=\sqrt{(x-3)^2+y^2}\)
ですね。これらが今は \(3:1\) の比になっているわけですから
\(\sqrt{x^2+y^2}: \sqrt{(x-3)^2+y^2}=3:1\)
が成り立つはずです。これが式を立てるということです。条件をなんとかして式にする。これができれば後は計算するだけです。
④ \(x\) と \(y\) の関係式にする => それが今欲しい軌跡の式となる
後は計算を進めて、 \(x\) と \(y\) の関係式としてわかりやすいものにしてみましょう。ゴールは関係式を見てどんな図形か(円なのか二次関数なのかはたまた直線なのかなど)がわかるところでいいでしょう。
計算をすると、
\(\sqrt{x^2+y^2}: \sqrt{(x-3)^2+y^2}=3:1\)
より、
\(\sqrt{x^2+y^2}= 3\sqrt{(x-3)^2+y^2}\)
なので、両辺を二乗して整理します。
\begin{eqnarray} x^2+y^2&=&9\{(x-3)^2+y^2\}\\[5pt]x^2+y^2&=&9(x^2-6x+9+y^2)\\[5pt] x^2+y^2&=&9x^2-54x+81+9y^2\\[5pt]8x^2-54x+8y^2+81&=&0\end{eqnarray}
この形を見ればこれは「円」であることがわかるでしょう。見やすいように標準形に直してあげると少し面倒ですが、
\begin{eqnarray} 8x^2-54x+8y^2+81&=&0\\[5pt]x^2-\frac{27}{4}+y^2+\frac{81}{8}&=&0\\[5pt]\left(x-\frac{27}{8}\right)^2-\frac{729}{64}+y^2+\frac{81}{8}&=&0\\[5pt] \left(x-\frac{27}{8}\right)^2+y^2&=&\frac{729}{64}-\frac{81}{8}\\[5pt] \left(x-\frac{27}{8}\right)^2+y^2&=&\frac{81}{64}\end{eqnarray}
となります。つまり今回考えたかった点Pの軌跡は
中心が \(\displaystyle\left(\frac{27}{8},0\right)\) で半径が \(\displaystyle \frac{9}{8}\) の円である
ことがわかるわけです。実際に図を書くと先ほどもありましたが
となります。
それぞれやっていたことは難しくありませんがこの流れを理解するのが難しいので、いろんな問題で慣れていくと良いでしょう。軌跡はこうやって解くんだとわかれば新しい問題も怖くないはずです。
まとめ
今回は軌跡について一つの記事でまとめました。イメージはつくけど計算ができない・・・という人のために順序立てて説明しましたのでまずはこの流れでいろんな問題を見て、解答を確認してみてください。一番大事なことは考える軌跡の点を \((x,y)\) で置くことです。ここから全てがスタートするので意識してみてください。
ではまた。
コメント
[…] 軌跡は難しくない! 軌跡の意味と考え方 問題の解き方も解説 こんにちは。 da Vinch (@mathsouko_vinch)です。 この記事のトピックは「軌跡の意味と考え方・機械的な解き方」です。 軌跡 […]
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